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Ethernetが企業内LANを超えて、携帯基地局、通信バックボーンにも拡大

Ethernetが高速のデータ通信プロトコルとして優れていることがCuワイヤ、光ファイバを問わず実証されて以来、1Gbit/秒(1Gbps)以上のいわゆるギガビットイーサが伸びている。通信基地局やデータセンターだけではなく、都市内のメトロネットワークにまで使われ始めている。Gbpsイーサコントローラ(Vitesse)と100GbpsのOTN(PMC)を紹介する。

Ethernetは従来の企業や家庭内のLANから、さらに高速性能が要求されるハイエンドのインフラシステムにも拡大している。ギガビットイーサは1Gbpsから10Gbps、さらには100Gbpsへとより高速なシステムで威力を発揮する。

高速化の背景にあるのは、最近のモバイル通信のデータトラフィックの増加による。IBMによれば、世界の累積デジタルデータの90%はここ2年以内に生まれたものだという。通信ネットワークのトラフィック増加に対しては、3GからHSPA、さらにLTE、LTE-Aへと高速化によって対応してきた。しかし、これでも足りない。


図1 基地局間でつながりにくい個所をスモールセルでつなぐ 出典:Vitesse

図1 基地局間でつながりにくい個所をスモールセルでつなぐ 出典:Vitesse


そこで、例えば家庭内やオフィス内、店内などの小規模施設では光ファイバやADSLからWi-Fi無線を通してスマホやタブレットをインターネットに接続するように、通信オペレータは推奨している。こういった小さな基地局はピコセルやフェムトセルと呼ばれた(図1)が、最近ではこれらを区別せずスモールセルとしている。スモールセルは、基地局間をカバーする能力もあり、安定した通信を確保するという目的もある。このスモールセルにギガビットイーサが使われ始めている。

いわゆる携帯基地局間のセルは全て同期を採り、スモールセル間、スモールセル-基地局間などのハンドオーバに対応しなければならない。従来は、ソフトウエアベースで処理するネットワークプロセッサやハードウエアのFPGAがあったが、いずれも高価だった。

そこで、ロサンゼルス郊外を拠点とする半導体メーカーのビテッセ(Vitesse)社は、同期を採るためIEEE1588タイミング規格に準拠したチップを開発、通信オペレータグレードの通信タイミングを確保しながら安価なチップに仕上げた(図2)。同期を採るためのタイミング調整を独自の規格ではなくIEEE1588に準拠させることで基地局とスモールセル、さらにはセル間でもつなげられるようになった。しかもEthernetのプロトコルで接続させるIEEE1588準拠のタイミング誤差として、100ns以下を実現した。


図2 IEEE1588に準拠し基地局-セル間とセル同士の同期を採るチップ 出典:Vitesse

図2 IEEE1588に準拠し基地局-セル間とセル同士の同期を採るチップ 出典:Vitesse


消費電力は従来のネットワークプロセッサが10W以上だったのに対して、2W以下だとしている。このチップはスイッチングのエンジンと1588、その物理層PHY、OAM(運用、管理、保守)回路を集積したもの(図2の左上)。スイッチングエンジン以外の回路は、タイミングの同期を採るための専用回路でVeriTimeと呼んでいる。同社はさらに、スイッチングエンジンを除いたチップSynchroPHYも開発している(図2の右下)。

ギガビットイーサは、最先端の光ファイバシステムOTN(Optical Transport Network)においても使われている。OTNは従来のSONET/SDHとも互換性を保ちながらFEC(Forward Error Correction)機能を加え、誤り率を下げた規格である。SDH(synchronous Digital Hierarchy)とDWDM(Dense Wavelength-Division Multiplexing:高密度波長多重)の上にEthernetと共に組み込まれている。


図3 OTNは従来のSONET/SDHにFECを設けて100Gbpsを可能にした 出典:PMC-Sierra<br />

図3 OTNは従来のSONET/SDHにFECを設けて100Gbpsを可能にした
第2世代のOTNはEthernet、SAN、ビデオ、SONET/SDHといった複数のサービスを可能にする 出典:PMC-Sierra


基幹システムでは、光ファイバで従来の最大40GbpsのSONET/SDHから100Gbps通信できるOTNへと変わってきている。幹線の基地局のルータ同士を接続する場合、従来はT1/E1やATM、10Gbps Ethernetなど複数のプロトコルを扱わなければならず、Ethernetのデータレートを効率よく上げることができなかった。

ファブレス半導体のPMCシェラ(PMC-Sierra)は、メトロネットワーク向けの第2世代のOTNプロセッサMETA 120Gを開発、アクセス系用のHyPHY 20GflexおよびHyPHY 10Glexもリリースした。第2世代のOTNプロセッサは、Ethernetのシステムインターフェースと光ファイバのOTNインターフェースを集積したもの(図4)。基地局のルータ間が長ければOTNを優先し、短い距離だとEthernet、とそれぞれ使い分けることができる。OTNはEthernetのデータレートを10Gbps / 40Gbps / 100Gbpsと3種類に変えることができる。


図4 META 120G 第2世代OTNプロセッサ 出典:PMC-Sierra

図4 META 120G 第2世代OTNプロセッサ 出典:PMC-Sierra


幹線基地局とメトロネットワークで光ファイバOTNを使う場合には、10GbpsのXFP(10Gbps SFP相当)2本とSFP(Small Form factor Pluggable)クライアント線を16本集積したHyPHY 20Gflex(製品名PM5450)を提供する。クライアント線SFPは8本構成、あるいは10GbpsのLANやWAN1本構成の場合にはHyPHY 10Gflexチップを使うが、これらは一つの共通プラットフォームの同じテクノロジーで実現しているとする。

(2013/01/08)
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