ブロードコム、ハイエンドながらフレキシビリティを持たせたネットワーク専用IC
通信用ハイエンドの10Gb/40Gbイーサネットスイッチ用のIC(図1)にもいろいろな数のI/Oを構成できるフレキシブルな考えが入り込んでいる。このほどブロードコム(Broadcom)社がリリースしたStrataXGS Trident IIシリーズは、超ハイエンド製品ながらフレキシビリティのある半導体チップだ。ASICのように特定用途しか使えないチップではない。
図1 I/O構成を変えられるBroadcomの10Gbps/40Gbps Ethernet対応チップ 出典:Broadcom
最先端のネットワークスイッチは40Gbps Ethernetにも対応できるようになった。1990年代前半のFast Ethernetから2000年代からのGigabit Ethernet、そして2010年代の10/40Gbps Ethernetスイッチへと高速化の一途をたどっている。スマートフォンやタブレット、パソコンなどで利用するデータが、テキストから画像、音声、さらには映像、高精細映像へと豊富になってきており、インターネット上に集まるデータ量は急速に増加している。これに対応するため、データセンターにおける10Gbps Ethernetのポートの数は2012年から2016年にかけて年平均40%で伸びていくと予想されている。また、40Gbps Ethernetのポート数も同130%で増加すると予測されているという。パブリッククラウドの負荷も今後3年間に渡り年平均50%で増えていくとしている。
高速化の傾向だけではない。サーバーをできるだけ増やさずに使う仮想化技術も普及する。仮想化技術とは、1台のサーバーでOSとそれに対応するハードウエアが、まるで異なるコンピュータが載っているかのように見せる技術だ。サーバーの40%が現在、仮想化されており、予測によると2015年までにはこの割合は75%にも増えるとしている。仮想化はコンピュータだけではない。ネットワーク自身も仮想化される。そのためにネットワーク機器が高速化とフレキシビリティを両立できるようになった。ネットワーク自体を仮想化して、さまざまなユーザーごとのプライベートクラウドに切り分けることができる。
こういったネットワークスイッチに使われる半導体(図1)には、これまでパケットプロセッサやパケットバッファ、ファブリックプロセッサなどがあった。これら複数のチップを使ったモジュラースイッチが主流であり、階層設計と過剰サブスクライブ型ネットワーク向けのスイッチだった。それを1チップに集積し、まるでブレードサーバーのような薄型のスイッチに搭載する。この構成を、複数のサーバーの最上位にスイッチを配置するトップオブラック(Top of Rack)構成のスイッチ(図2)と呼び、それらを集めた(aggregation)アーキテクチャを採る。
図2 X86アーキテクチャでサーバー群に1台の10/40GbpsEthernetスイッチ構成 ネットワークの仮想化にも対応 出典:Broadcom
このアーキテクチャに向けた1チップソリューションとしてのStrataXGS Trident IIシリーズは、10Gbpsと40GbpsのEthernet I/Oを多数持っており、その構成を変えることができる。例えば、10GbpsのI/Oポートが104本にも、10GbpsのI/Oポート96本と40Gbpsのポートを8本構成にも、あるいは10Gbpsのポートが64本で40Gbpsのポートが16本という構成にも、40Gbpsのポートが32本という構成にも対応できる。
主なサーバーがX86系マイクロプロセッサのアーキテクチャで構成されているため、トップオブラックのスイッチも、StrataXGS Trident IIシリーズもX86アーキテクチャを採る。
このチップを使えば、ネットワークインフラの仮想化も実現できる。クラウド環境ではパブリッククラウドや、複数の企業や団体などによるプライベートクラウドなどの構成を仮想化技術で最適に振り分けることができ、ネットワーク使用率が上がられる。加えて、ネットワークの負荷に応じて共有パケットバッファメモリをダイナミックに振り分けるという輻輳(ふくそう)管理ができるので必要なメモリ量は、従来の1/5で済むという。アドレステーブルも大きければ、それだけメモリを増やさなければならないが、これもネットワークのトポロジーに応じて変えられるようになっているため、メモリは従来の1/2で済むとしている。さらに、インテリジェントなさまざまなトラフィックパターンを備えているためトラフィックの偏りを解消できる。