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インテリジェント化するLED照明、蛍光灯ではできなかった調光機能を無線で

東京ビッグサイトで開かれたLED Next Stage 2012では、LEDならではの応用として調光を無線で行うというデモが各社から示された。照明の明るさを連続的に変える調光は白熱灯ではできたが蛍光灯ではできなかった。白熱灯では調光器のダイヤルを壁に備え付け、明るさを調整することが一般的だった。LEDは無線で調光するようになる。

図1 スマート調光を提案した台湾の飛宏科技のブース 出典:飛宏科技

図1 スマート調光を提案した台湾の飛宏科技のブース 出典:飛宏科技


LED照明は、単なる照明ランプを展示するだけでは競合相手との差別化は難しい。照明器具としては光の到達範囲、角度なども考慮に入れることが求められる。調光機能、それも無線で調整すれば、LEDでしかできない照明器具となる。無線での調光といえども単なるリモコンの専用機ならそれほど大きな変革にならない。

台湾の飛宏科技(Phihong Technology)(http://www.phihong.com.tw/tw/index.php(台湾語)またはhttp://www.phihong.com.tw/reports/csr2010_eng.pdf(英語会社案内))は、Wi-Fiと音声入力(日本語)によって照明の明るさを変えるシステムを提案した(図1)。創立が40年で、日本のパナソニックやソニー、日立製作所などに納入した実績のある同社は、スマートフォンを使ってLEDを調光できるソフトウエアとハードウエアを開発、会場でデモした。引き合いがあればいつでも対応するとして、日本市場への参入に意欲を持っている。

飛宏科技は、スマート調光システムと呼ぶ、調光システムのバリエーションを展示した。一つはWi-Fi、もう一つは音声認識、3つ目は指先で円を描いて制御するタッチホイール方式である。スマホやタブレットを使ったWi-Fi調光は、ブラウザベースのGUIソフトウエアを使い家やオフィス内のLED照明のオン・オフと明るさを端末で調整する機能である。端末さえあれば外出先でもインターネットに接続すると調整できる。端末から調光などの信号をインターネットへ飛ばし、ワイヤレスルータで受ける。さらにルータを経て飛宏科技製のWi-Fi管理ボックスWiFi-Xから無線を飛ばし、照明器具に取り付けた受信機で信号を受ける。単一のアクセスポイントから最大254機のWiFi-Xを制御できる。調光は25%ごとの5段階ステップと、5〜100%の無段階で調整できる。1台のWiFi-Xで制御できるLED照明器具の数は6台まで、伝送距離は10mまで。


図2 音声認識による調光操作 出典:飛宏科技

図2 音声認識による調光操作 出典:飛宏科技


同社は音声入力による調光も提案した。これは音声を入力するマイク、アンプ、送信機などが入ったコントローラからLED照明器具まで操作データを無線で飛ばす。調光を設定できる単語は6種類だけだが、最初に「フェイフォンさん」と叫ぶと調光を受け入れる準備に入る。調光は、オフ、25%、50%、90%、オンという5段階。例えば50%調光にしたい場合は「節電いち」と話す。25%は「節電に」、90%は「全灯」、オンは「点灯」、オフは「消灯」と言う。同社はさらにiPodで使われているような円形のタッチホイールを使い、無線で飛ばす提案もしている。

NECは、スマートハウスやビルなどのエネルギー管理システムHEMSやBEMSと連動した無線調光システムを提案している。基本的には親機としてのコントローラと、子機としての端末からなるM2Mネットワークを利用する。端末には、電力量を測定するHEMSやBEMSなどの子機があり、LED照明には無線による調光機能を付けた子機がある。親機のコントローラ(図3)は最大60台の子機を制御でき、コントローラは遠隔からも操作できるようにWi-Fiを通してインターネットをつながっている。


図3 M2Mを利用した無線調光システムの端末(左)と親機(右)のボード NECが提案

図3 M2Mを利用した無線調光システムの端末(左)と親機(右)のボード NECが提案


調光の様子は、コントローラと無線、あるいはインターネットでつながるモニタを通して観察することができる(図3の左)。モニタはアンドロイド専用端末でもスマホでもかまわないとして、このシステムを利用するユーザーに合わせる。M2Mシステムの子機をすべて調光機能付きの照明器具にすることもできる。M2Mの通信は950MHz帯を利用しているが、電波の回折性が優れているからだとNECは説明している。

新電元は東北大学電気通信研究所の加藤研究室と共同で128台のLED照明器具を制御できる無線調光システムを展示した。このシステムは専用機にあたる。用いられる2.4GHz無線の到達距離は100mと長い。調光の可変レベルは128階調。

リコーはセンサを使い、部屋の明るさに応じて自動的に調光するシステムを提案している。センサとして照度センサを使えば、昼間や夜間の外光に応じて明るさを一定に保つことができる。人感センサ(赤外線センサ)を使うと、誰かが入室するとライトを点灯させることもできる。蛍光灯とは違い瞬時に点灯するという利点がある。また、手動で明るさを調整することもできる。リコーはネットワーク調光と呼び、950MHzの無線と、独自プロトコルを利用し、ブラウザベースで調光できるようにしている。今回の展示物は試作品であり、提案したもの。コントローラは50台のLED照明器具を制御できる。


図4 リコーの提案するネットワーク調光

図4 リコーの提案するネットワーク調光


無線調光以外ではLED Next Stage 2012おいて、パナソニックが人感センサにミリ波レーダーを使う試みを提案したり、韓国のソウルセミコンダクタからは低コストの交流照明の提案などがあった。ソウルセミコンのLEDは、交流のまま使える照明がうたい文句だが、整流ブリッジは内蔵しており、全波整流後の平滑回路を導入せず、LEDをドライブするICを開発した。ただし、全波整流のままだと、全波の正電圧分の正弦波は位相が180度ごとに0Vまで落ちてしまうため、初期のLEDランプではちらつきが見られた。今回、0Vまで落とさないようにするためセラミックコンデンサを取り付け、ピーク値の5%までの低下に抑えている。国内のアクレッド照明がこのLED照明モジュールを販売している。

(2012/03/21)
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