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富士通のスパコン「京」が2期連続でトップ性能を維持、10.5 PFLOPSを達成

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スーパーコンピュータの世界ランキングを調査している米独の共同チームが組織するTOP500リスト(参考資料1)によると、11月14日時点でのスパコンの世界一は、2011年6月での調査と同様、富士通の「京」がキープした。性能は10.51 Petaflop/s(ぺタフロップス:1秒間に10の15乗回の浮動小数点演算を実行)を示した。理化学研究所に設置されたスパコンで達成したもの。

図1 半年前のトップを維持した富士通のスパコン「京」

図1 半年前のトップを維持した富士通のスパコン「京」


「京」は前回、8.16 Petaflop/sであったから20%性能を伸ばしたことになる。第2位は中国の天河A1システムの2.57 Petaflop/sであるから、「京」はそれよりも4倍も速い。10 Petaflop/sを超えたスパコンは「京」が初めて。この性能は、LINPACKと呼ばれる行列演算のベンチマーク上で得られた。加えて、「京」は性能だけが世界一だという訳ではない。単位消費電力当りの性能という点でも上位に来ている。

最近のスパコンと比べて、グラフィックスプロセッサや浮動小数点などのアクセラレータを使わずに達成して点が極めてユニークである。富士通製SPARC64プロセッサコアを70万5024個使った。

第3位は米国のオークリッジ国立研究所に設置されている、米CrayのスパコンXT5(ジャガー)であり、その性能は1.75 Petaflop/sである。以下、第4位から10位までの順位は前回と変わらす、中国の「星雲」、日本の「つばめ2.0」、米国の「Cielo」、「Pleiades」、「Hopper」、フランスの「Tera-100」、米国「Roadrunner」の順になっている。第10位の性能が1.04 Petaflop/sだから、3位から10位までは性能に大きな差はない。

特徴的なことをいくつかまとめると次のようになる;
1. 第2位と4位の中国、5位の日本製スパコンには米Nvidiaのグラフィックスチップ(GPU)が演算のアクセラレータとして使われている。
2. GPUをアクセラレータとして使っているスパコンは、前回の17機種から39機種に増えた。このうち、nVidiaのチップが35機種に、Cellプロセッサが2機種、米AMDのATI Radeonが2機種であった。
3. トップ500機種の内、6個以上のマルチコアCPUを使ったシステムは62機種。
4. 500機種の中でCPUのシェアは米Intelチップが384機種に使われ、76.8%とトップであった。その次がAMDのOpteronファミリーで63機種に、IBMのPowerプロセッサは49機種に使われた。
5. 市場シェアはIBMがトップであるが、スパコンのトータル性能がクレイを超えたことで、富士通は2位になった。
6. 接続バスでは、Gigabit Ethernetを使ったスパコンが223機種、その次がInfiniBandで213機種となった。ただし、これらの機種を合計したトータル性能は、InfiniBandの方が良く、28.7 Petaflop/sとGigabit Ethernetの14.2 Petaflop/sよりも勝っている。
7. 単位消費電力当りの性能に関しては、「京」は830 Mflops/Wであり、平均値282 Mflops/Wよりも良い。ただし、「京」の消費電力は12.66 MWもある。最もエネルギー効率の良いコンピュータはIBMのBlueGene/Qであり、その性能は2029 Mflops/Wである。

500番目の機種の性能は50.9 Tflop/s(0.0509 Petaflop/s)であり、前回の500位機種の39.1 Tflop/sから底上げされた格好になる。今回の50.9 Tflop/sは前回でいえば305番目になる。また、500機種の合計の性能は74.2 Petaflop/sであり、前回の58.7 Petaflop/s、1年前の43.7 Petaflop/sからも底上げの様子がわかる。

参考資料
1. Japan's K Computer Tops 10 Petaflop/s to Stay Atop TOP500 List

(2011/11/15)

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