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複数の周波数帯・プロトコルが共存する応用がトレンドとなるワイヤレス技術

LTE時代には、3GやHSPA(high speed packet access)、などさまざまな通信方式が共存することがはっきりしてきた。7月5日〜6日、パシフィコ横浜で開かれたWTP(Wireless Technology Park)では、KDDI研究所が方式の異なる無線通信の中から最適な方式を選ぶコグニティブ無線をさらに発展させ、データレートを改善する試みをはじめ、さまざまな通信方式や周波数帯が共存する環境での無線技術が新しいトレンドとなってきた。

図1 KDDIが総務省の支援を受けて開発中の、規格共存での高速通信

図1 KDDIが総務省の支援を受けて開発中の、規格共存での高速通信


KDDI研究所は、LTEやWiMAX、Wi-Fiなどの無線方式が飛び交う中で、データレートが最も速い方式を選べるだけではなく、他の方式にもパケットを振り分け、さらに高速にする技術を開発中だ(図1)。この図では三つの方式の電波をリソースマネージャーに送り、各パケットの配分比率を調べ、速度順に並べ替える。最も速い方式を第1優先で通信するだけではなく、遅い方式もリンクさせリンク多重として利用する。各方式で遅延があれば、遅延を補正し、パケットを揃えたうえで通信する。KDDI研究所によれば、この方法でTCPスループットが4倍に改善されたという。

YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、NFC(near field communication:ISO/IEC 14443 Type A:別名Mifare)やFelica規格、RFID用のISO/IEC 15693やISO18000-6B/6C、ISO18000-4、ミューチップなど7つの規格のプロトコルに対応するRFIDマルチリーダーを開発している。タグに埋め込まれたチップを非接触で読みとるリーダーは、IDカードの読み取りだけではなく、商品タグやFelicaカードなども読みとることができる。展示会では試作した専用のリーダーを見せたが、将来スマートフォンなどにもリーダー機能を搭載できると新しい市場になりうる。


図2 7種類のRFIDを読めるマルチリーダー 出典:YRPユビキタス・ネットワーキング研究所

図2 7種類のRFIDを読めるマルチリーダー 出典:YRPユビキタス・ネットワーキング研究所


これらの規格は、周波数も違う。NFC(Mifare)やFelicaは13.56MHzに応答し、ISO/IEC 18000-6B/6CはUHF(860~960MHz)帯、ミューチップは2.45GHzで動作する。こういったさまざまな周波数やプロトコルが異なる仕様に対して、専用のLSIを開発した。このLSIは、SOI(silicon on insulator)の低消費電力プロセスで作られ、RFとモデム、デジタル処理部を1チップに集積している。同時にこのLSIを開発するための評価キットをユーシーテクノロジーが提供した。


図3 マルチリーダー用LSIと開発キット(右) 出典:ユーシーテクノロジー

図3 マルチリーダー用LSIと開発キット(右) 出典:ユーシーテクノロジー


トヨタIT開発センターは、クルマ同士での通信を行うための通信モジュールボードを開発、450MHz近くの周波数帯で空いている周波数を選び、通信するためのデモをビデオで見せた。ここでは、周波数をスキャンしながら空いている周波数を選ぶ訳だが、最も安い周波数、あるいは最も強い電波の周波数、つながりやすい周波数などの基準を設けている。実験では3つの通信モジュールボードを試作し、それぞれ、1)センシングする、2)共通プロトコルを使って相手のクルマを確認する、3)相手にデータを送る、という三つの役割を持たせている。

実験では外見はほとんどそっくりの3台のモジュールボードを試作したが、実用化する時は1台のボードだけにして、ソフトウエア無線のようにソフトウエアの切り替えだけでこの3つの機能を分けられるようにする、と同センターは考えている。クルマに3台も載せるには大きすぎるからである。この技術は、クルマ同士のデータ通信をすることが目的であるから、高級車から大衆車まで網羅するだけではなく、トヨタ以外のクルマとも通信できるように相互運用性(Interoperability)やプロトコルの標準化などが欠かせなくなる。周波数帯域として今回はVHF帯を使ったが、アナログテレビ放送が間もなく打ち切られることからVHFの周波数帯は車車間通信にとって狙い目になるに違いない。

車車間通信システムとして、沖電気工業もIVC(Inter-Vehicle Communication)小型ユニットを展示した。これは、見えにくい交差点などの周辺にクルマがいることを運転者に知らせるという機能を持つ。ディスプレイを持たない小型の箱ユニットとなっており、インパネの上に置き、表示機能はスマートフォンのディスプレイを利用する。スマートフォンとはBluetoothで接続する。ここでは5.8GHz帯を使いGPSも受信し、交差点の影や死角になり見えないクルマを検出する。スマートフォンのスクリーンにGPSの地図とクルマや歩行者を表示する。今後は700MHz帯など他の周波数帯も検討する。

(2011/07/08)

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