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英国特集2011・写真並みのグラフィックス、Bluetooth LE応用を携帯で実現

スマートフォンやタブレットなどビジュアルな携帯機器では低消費電力化が不可欠であるが、携帯機器向けの半導体回路を設計してきた英国のイマジネーションテクノロジーズ社やCSR社は、消費電力をできるだけ抑えながら、よりリアルなグラフィックス開発や、Bluetooth LEの新分野を切り拓こうとしている。

図1 図は写真ではない グラフィックスだ

図1 図は写真ではない グラフィックスだ
出典:http://www.caustic.com/gallery_images.php


これまで携帯向けの技術を主に開発してきたイマジネーションが、超ハイエンドの技術の獲得にも挑戦している。現在ハイエンドなグラフィックス技術であっても、低消費電力化と低コスト化を図ればいずれ携帯機器に降りてくる、と見ているからだ。今回は、現在のハイエンドのグラフィックス技術では数百Wもの電力を消費するが、それを1/10に削減し、携帯に使うための例を紹介しよう。

グラフィックス分野では、光の陰影効果を利用して画像をよりリアルに見せる技術が映画や特殊な映像の世界では現実となっているが、こういった映像がパソコンや携帯機器のレベルにも降りてくる可能性が極めて高くなってきた。イマジネーションテクノロジーズは、得意とするグラフィックスコアの表現力をさらに豊かにするため、米コースティックグラフィックス(Caustic Graphics)社を昨年12月に買収したが、MWC2011のイマジネーションのブースで、コースティックがそのリアルなグラフィック技術をデモンストレーションした。

コースティックの技術はグラフィックス画像に光を当てた効果を表現するレイトレーシング(Ray tracing)を利用する。レイトレーシングは、光の光源や角度、陰などを考慮に入れた物理モデルを画像に取り込んだものであり、従来のグラフィックス画像よりもさらにリアルな画像を作り出す(図2)。イマジネーションがコースティックを買収した理由を、CEOであるHossein Yassaie氏は次のように語る。「民生で最もワクワクする技術は、業務用の技術が低コスト・低消費電力化になったときにやってくる。従来、レイトレーシング技術は映画業界など、高度なグラフィックスを利用する、限られた分野に使われてきたが、これを変えたい。だからコースティックを買収した。最先端のレイトレーシング技術を大きな市場に持ってくる計画だ」。

コースティック社の技術では、陰影や反射光も考慮に入れ、画素ごとに色付けする。このため全ての光線(レイ)を計算し、その結果を外部RAMではなくキャッシュメモリに取り込むことでリアルタイムに画像を得ることができる。


図2 従来のグラフィックス画像(上)にレイトレーシングを加える(下)と、よりリアルに見える 出典:Caustic Graphics社

図2 従来のグラフィックス画像(上)にレイトレーシングを加える(下)と、よりリアルに見える
出典:Caustic Graphics社


全ての光路を計算するアルゴリズムを独自に開発、FPGAでハードウエアを開発したが、2011年の9〜10月にはこれをASIC化し、現在よりも20倍高速のプリント基板ボードを開発する予定である。PCIカードで実現すると消費電力は35W程度になり、競合他社より一桁低いとしている。3〜5年後にはPOWERVRグラフィックスコアに集積し、リアルタイムなビデオ(60fps)にも対応していくという計画だ。


Bluetooth Low Energyが切り拓く超低消費電力応用

Bluetoothチップで世界をリードする中堅企業のCSR(かつてはケンブリッジシリコンラジオと呼んだ)社は、Bluetoothの新しい応用として時計と携帯電話との連携、AndroidデバイスへのBluetooth LE(low energy)規格の適用、などを切り開こうとしている。Bluetooth LEは、消費電力が従来のBluetoothの1/10と小さな規格。

時計と携帯電話との連携はNECカシオモバイルコミュニケーションズが進めており、これにはデュアルモードのCSR8000通信プラットフォームにCSR Synergy for Androidを搭載したコンセプトモデルを試作した。MWC2011において、同社はCSRのブースにおいて、3つの機能をデモした。一つは、携帯電話やメール、テキストメッセージなどが到着したら時計のディスプレイにその知らせが来る、というもの。ユーザーは誰からの電話なのか時計の表示板で確認できる。電話はかばんやポケットに入れたままでよい。二つ目の応用では、電話をどこかへ置き忘れた時。時計のボタンを押すと電話のベルが鳴りどこにあるかがわかる。三つ目の応用シーンは、海外旅行などで時間の異なる国や地域へ行ったときなどに携帯電話と時計の日時を一致させる機能である。CSR8000のデュアルモードとは従来のBluetoothモードとBluetoothLEモードの二つを持つものを指している。

CSR社は、アンドロイドを利用するスマートフォンなどに組み込む通信ソフト「CSR Synergy for Android」にBluetooth LE (v4.0)を組み込んで、その応用を広げてきている。CSR Synergy for Androidの特長はプラグ&プレイであるため、これを使う電子機器メーカーは素早く差別化商品を世に送ることができるという。CSRによると、この機能をアンドロイド携帯に搭載することで、電話がリモコンになったり、セキュリティのアラームになったり、ヘルスケアモニターになったりする。

Bluetooth LEを使ったリモコンとしては、EPG(電子番組ガイド)によってテレビの番組のチャンネルを表示したり、あるいはスマートフォンをある方向に傾けると音量が大きくなり別の方向へ傾けると小さくできるようになる。Bluetooth LEは従来の赤外線方式に比べ、指向性はなく、データレートは速い。また干渉に弱いZigBeeとも違って家庭内のWi-Fiを利用することも可能である。

ヘルスケアモニターへの応用では、例えばアスリートがランニングしながら心拍数をモニターしておき、その測定データを携帯端末に送る。ランニング中の心拍数のデータを小まめにとることができ、ランニングの基本戦略を立てることができる。

カバーするアンドロイドはv2.3(コード名Gingerbread)やv3.0(Honeycomb)など。この通信パッケージにはBluetooth に加え、FMやWi-Fi、GPSなどの機能も搭載されている。

(2011/04/14)

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