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通常の2次元映像から3次元映像を創り出す立体テレビ

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前評判で、松下電器産業の150インチのプラズマディスプレイ(写真1)や、厚さ0.3mmと薄いソニー11インチ(写真2)、および27インチの有機ELテレビなどが注目されていた、Display2008では、それらのブースに人だかりはあった。しかし、従来のビデオ映像や通常のテレビ映像から、立体映像を創り出すという、2次元-3次元変換技術にも多くの人だかりが見られた。昨年10月26日にこのコラムで紹介したSeeReal社の立体映像ディスプレイでは3列にも渡る長蛇の列が出来ていた。

松下電器産業の150インチのプラズマディスプレイ

厚さ0.3mmのソニー11インチ


国内でのテレビ事業を中止することになった日本ビクターのリアルタイム2次元/3次元変換技術は、偏光メガネを必要とするものの、どのような映像でも立体映像にリアルタイムに変換し見ることができる。米Newsight社は、リアルタイム変換ではないが、2次元映像から3次元映像に変換する、コンテンツ制作ソフトウエアやその管理ツールなどを展示した。Newsight社と同様、メガネをかけずに自然の立体画像を見ることができるドイツSeeReal社の立体映像ディスプレイでは、デモをひとめ見ようと、長蛇の列が出来ていた。

これらの技術のうち、SeeRealの技術は、すでにセミコンポータルで紹介した内容と変わりはないが、ここに3列に渡る順番待ちの人が群がっていた。同社はさらに液晶モニター上でも立体映像を映し出す技術に挑戦していたが、フレームレートが遅いせいか、まだ目がチラついて見えた。ただし取り扱う画素数は前回の300万画素から500万画素へと増えた。特に今回、ビクターは変換アルゴリズムと実際の画面を公開した(編集部注:3次元写真は撮影不能なため掲載しない)。

ビクターの2次元-3次元映像変換技術は、これまでのような変換技術とは違い、大きな変換ミスがないように2つの技術を開発することで自然な立体映像を見せることに成功している。一つは、画像の奥行を推定するための3種類の基本モデルを作成したこと、もう一つはこれまでの画像の経験則から赤い色(R)は手前に、青い色(B)は奥に持っていくというエンボス状の奥行構造モデルを作成したこと、である。青い色が強い部分を奥にする理由の一つは、光線の散乱により遠くにあるものほど青よりに見えるという空気遠近法によるものである。もう一つの理由は、色彩学では暖色系は前進色であり、寒色系は後退色だという特徴がある。

最初の技術の3つの基本奥行モデルとは、まず画像全体が球面構造になっているモデル(タイプ1)を設定した。これは典型的な遠近法的なシーンで使われる。次に画面の下半分が球面構造で上半分が円筒構造というモデル(タイプ2)を設定した。これは青空が広がっているようなシーンに使われる。3番目は画面の上半分が平面で下半分が曲線スロープ(高さの中央から緩やかに手前側に伸びる)になっているモデル(タイプ3)である。遠景と水面のようなシーンに使われる。

これらの三つのモデルを画面の上と下にマッピングし、それをもとにタイプ1〜3のブレンド比を決定する。ブレンドされた3タイプのマッピングに、赤と青の奥行きを表す色信号のブレンド、nR-mB信号を重畳する。ただし、nとmは係数。

このアルゴリズムをFPGAでハードウエアにインプリメントし、そのFPGAをボードに実装した。対応できるテレビの走査線方式は、D1からD4まで、それぞれ480i、480p、1080i、720pの4種類である。ハードウエアボードでは、入力信号をA-D変換し、XilinxのSpartan III FPGAで画像処理を行う。その後D-A変換し出力する。入力信号は左右2チャンネルあり、フレーム(480p、720p)あるいはフィールド(480i、1080i)ごとにスイッチで切り替えられるようになっている。

また、基本奥行モデルのブレンドは1フィールドあるいは1フレーム前の画面内容をもとに行う。

一方、Newsight社の立体画像もやはり、深度マップを作るのではあるが、コントラスト、輝度の情報に奥行をつけるという。その奥行き情報を左右4枚のフレームごとに作り出す。ただし、その詳細は明らかにしない。同社の方式はメガネなしで見るが、画面表面にスリットを設け、左右別々のフレームを作り出す。しかし、目は疲れる。

以上の3つのメーカーの立体画面はいずれも2次元から3次元を作り出すため、2台のカメラを使って立体映像を制作する必要はない。映像制作者やビデオマニアにとっては福音となる。

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