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国際パートナーシップの締結・成果が出てきた年始め

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先週は、グローバルなパートナーシップに基づく開発体制に関するニュースが目立っていた。1月7日に、台湾の不揮発性メモリーメーカーのマクロニクス社(旺宏電子)と、ドイツのDRAMメーカーのキマンダがNANDフラッシュメモリーを共同開発するというニュースから始まった。マクロニクスはマスクROMやNORフラッシュは手がけてきた。キマンダはDRAMだけを生産してきた。この両社が始めて挑戦するNANDフラッシュを共同で開発する。

先週は、米国ネバダ州ラスベガスでInternational CES(国際家電見本市)が開催されたせいか、民生用のデジタル家電に関する発表が相次いだ。松下電器産業(今年の10月からパナソニック社)は、フルハイビジョン画像をテレビ受信機あるいはDVDプレーヤーからミリ波でディスプレイ画面に送信する装置をデモンストレーションした。この技術は米国のベンチャー企業SiBEAM社が開発したもので、松下、ソニー、東芝などとWirelessHDコンソシアムを組織化し、普及を狙うもの。この技術を使えば、ディスプレイだけ軽く、薄くして壁にかけ、映像信号をミリ波で送ることで本来の壁掛けテレビを楽しむことができる。技術的な詳細は、「60GHzで圧縮せずにビデオ画像を送る技術を米ベンチャーが開発」を参照。

OKIはイスラエルのファブレス半導体メーカーであるランコムテクノロジーズ社、アルパインと共同で、WiMAXを組み込んだカーナビを開発する。WiMAXは最大50km以内の通信範囲で、最大70Mbpsまでのデータ伝送ができる次世代通信システム。クルマで走行しながら地図やカーナビのデータをダウンロード、メールのやり取りなどができるようになる。

IBMアライアンスが32nmノードの1.5MBのSRAMアレイを試作したと発表している。High-kゲート絶縁膜とメタルゲートを用いたプロセスで、プロセッサやロジックでよく使われるSRAMをテストチップに選んだ。アライアンスメンバーである、AMD、チャータード・セミコンダクター・マニファクチャリング、フリースケール・セミコンダクタ、インフィニオン・テクノロジーズ、サムスン電子、STマイクロエレクトロニクスがバルク32nm CMOSプロセス技術を共同開発した。これだけの世界企業が32nmプロセスを開発し共有しているということは、32nmのプロセス自体にもはや付加価値は少ないということを意味している。

シャープが米国シリコンバレーのフリーモントにあるLegend Silicon社と共同で、中国の地上はデジタルテレビ規格、TDS-OFDM(Time Domain Synchronous Orthogonal Frequency Division Modulation)変調方式を用いるチップを開発することで合意した。携帯テレビ向けを狙っている。Legend社は米国に本社を置くものの、実態は中国企業に近く北京の清華大学卒業生が設立したファブレスの地上波デジタルテレビ放送向け半導体設計企業。中国市場では独自規格の携帯テレビの標準規格が定まっているため、中国企業との共同は欠かせない。ちなみにLegendグループは以前、連想集団と名乗り、現在はレノボと改名したパソコンメーカー(IBMのパソコン事業を買収し、ThinkPadを販売している)を母体としている。

一方、日本企業でも積極的にインドに進出している企業がある。東芝の関連会社である、東芝エンベデッドソフトウエア・インド社は、バンガロールにある拠点にいる開発エンジニアを現在の350名から2008年に450名へ増強する。デジタル家電向けの半導体チップに搭載するソフトウエアを開発するための企業であり、優秀なインドのエンジニアを活用し、SoCの開発期間を短縮するのが狙い。

こういった国際協力と平行して国際競争も激化している。これまで東芝が得意としていた多値NANDフラッシュメモリーを使った128Gバイトのソリッドステートディスク(SSD)をサムスンも開発した。3GbpsのシリアルATA IIに準拠し、書き込み速度は70MB/sと速い。

韓国のソウルセミコンダクタが、名誉毀損で5億ウォン(約6000万円)の賠償金支払を求めて日亜化学を提訴した、というニュースもあった。


分析:津田建二

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