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半導体市況の回復遅れはこれからどうなるか、考察する

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国内はもとより、海外出張でタクシーを利用するときは運転手に必ず「最近、景気はどう?」と聞くようにしている。景気の現場の実感を知るためである。2年前にシリコンバレーを訪れた時タクシードライバによると一般住宅の価格が1億2000~3000万円だと聞いた。こりゃバブルだな、と直感した。案の定、その1年後にサブプライムローン問題が浮上した。先週、製造装置メーカーの決算がずらりと発表されたが、いずれも減収減益、赤字も多い。昨今の世界同時不況と装置メーカーの停滞とを考察してみたい。

日本経済新聞の見出しは、「日立ハイテク、純利益49%減」、「TOWA、一転最終赤字」、「SUMCO、純利益57%減」、「東エレク、営業利益82%減」と、製造装置メーカー半期決算及び2009年3月期見通しはいずれも暗い。半導体製造装置の売り上げが毎月の定点観測で報じてきたように、販売額、受注額とも前年割れが続いている。最近は、前年同月比でマイナス40%と激しい落ち込みが日本市場において2ヵ月連続して見られた

製造装置への発注が減ってきているのは、これまでけん引してきたメモリーの価格が急落しており、半導体メーカーが投資を控えているためだ。日本市場では、東芝とエルピーダメモリが装置を引っ張ってきた。この先はどうなのか。半導体の回復遅れと最近の世界金融不況がどうなっているのか、冷静に振り返ってみる。

今から1年前に米国のサブプライムローン問題が発覚し、その余波について消費者の買い控えがおきるだろうが、北京オリンピックと大統領選挙があるため不況に陥ることはないだろうという楽観的な見方が米国のアナリストにはあった。住宅バブルが銀行から借りた消費者の返済滞りにつながり、消費行動が制限されるという見方が主だった。このため、今年の後半には半導体市況は回復すると予測された。

それが、実は銀行の債権を証券会社に売り証券化し、さらに別の証券会社へと米国から英国、日本、EUの金融機関へと広がっていった。リーマンブラザース証券の破たんにみられるように、金融機関の持つバランスシートがどこまで健全なのか全く見えなくなった。金融機関やファンドは資金不足になり、これまで保有していた株を売り、最近の株安を招いた。株安=企業価値安という図式から、これからの景気の先行きを不安視する向きが増えている。

日本の銀行はまだましだというテレビの評論家はいるが、これは竹中平蔵氏が自民党からさんざんたたかれながらも不良債権処理を強行したおかげで銀行がまともになったためだ。かつて公的資金の注入だけではだめだった。公的資金を何度も注入しても銀行の自助努力での不良債権処理は遅々として進まなかった。

しかし、まともになったはずのその銀行がバブル崩壊後に散見した貸し渋りを始めるのではないかという懸念の声も出ている。日本のモノづくり産業とて、安穏としていられない。

エレクトロニクス産業を支える中小企業主体のサポートインダストリへの貸し渋りが見られると、エレクトロニクス産業への影響も大きくなる。心配の種は、金融だけではないところにある。一方で、半導体を使うエレクトロニクス機器を買うのは消費者であり、企業である。日本経済は、消費者の給与所得が抑えられ、企業が黒字を出すことで経済はここ2~3年好調と言われてきた。ということは、消費者がエレクトロニクス製品を買う財布のひもは固く、しかもここにきて企業の投資意欲も落ちてくることはこれから先の経済状況にとってはあまりよい傾向ではないといえる。

ではどうすべきか。中国は米国や日本に輸出することで伸ばしてきたと言われるが、輸入額も実は少なくない。米国経済の混乱により、中国経済はこれまでのような2ケタ成長はいかないまでも1ケタ成長することは間違いない。マイナス成長では決してない。5~8%程度は成長するわけだから中国やインドなどの成長市場を狙うことで当面は企業の収益を確保する方向へ行くのではないだろうか。

また応用分野の市場として、新しい環境、医療、老齢化、などの分野を切り拓くことが未来につながるだろう。娯楽でお金を使うのではなく、要求の強い分野でお金を使う方が景気浮揚になりやすい。

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