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この景気の谷において初めて上昇機運を感じさせた、トヨタの5月増産計画

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先週最大のニュースは、「トヨタ、5月に増産へ」だろう。太陽電池やリチウムイオン電池など成長がはっきりしている分野の明るい話題は欠けることがなかったが、半導体応用分野でプラスへの方向の見えるニュースは久しぶりに出てきた。先週、九州福岡市にいた時に読んだ20日の朝の西日本新聞でも、トヨタの増産計画を受けて東芝の子会社である豊前東芝エレクトロニクスも自動車テールランプ用の赤色LEDを増産することになったと伝えている。

実は、2月23日のマーケット「在庫調整はもう終わり、3~4月からは絞りすぎた生産を増やす方向へ」でも紹介したように、2008年第4四半期から2009年第1四半期にかけては異常なまでに半導体ICのユーザーは在庫を減らすため生産調整を絞りすぎるほど絞った。ユーザーが在庫調整を進めたのは自らの倒産を心配したためであった、とUBS証券 株式調査部 アナリストの山本 義継氏は分析する。このためこの3~4月から在庫調整を緩めること、すなわちこれまでよりも増産することになろうと予測する。

トヨタの増産計画と山本氏の指摘はピタリと一致する。二つのニュースの時期がずれていたのにもかかわらず、である。これまでの四半期ほどには絞らず、電子機器メーカーの半導体は増えることは間違いないだろう。在庫期間があり得ないほど短くなってしまうからだ。在庫ゼロでモノづくりはできない。

テレビ報道や新聞を見ていてつくづく感じることは、必要以上に世の中の動きを暗く伝えている、ということだ。マスコミやメディアにはその責任があると思うのだが、それ以上に政府がさらに追い打ちをかけて暗くしている。先日発表した2008年第4四半期におけるGDP が-3.4%だったという数字を年に換算して-12.7%になると政府は意味のない発表をした。これに輪をかけたのが、この意味のない数字を取り上げて議論したテレビメディアである。これほど、馬鹿げたことはない。四半期で-3.4%という数字は瞬間最大の悪さである。それを年に換算する意味がどれほどあるだろうか。瞬間最大風速の台風がやってきて、それが1年中続くと仮定することとなんら変わりはない。最悪の期間の数字はあくまでも瞬間最悪、という意味なのだから。

ただし、これからの増産計画で注意しなければならないことは、大きな需要が出てきたために出荷がこれまでの2四半期よりも増えるのではないということだ。出荷が増えるのは、ユーザーが在庫を絞りすぎたためである。ICユーザーは金融が今やお金を貸さないという貸し渋りにあっているといわれている。自ら生き残るために、できるだけ在庫を持たずに生産しようという姿勢でやってきただけである。しかし、適正在庫と言われる0.8ヵ月からさらに減らし0.3ヵ月にまで絞り込めばモノづくり業者としてはさすがに反発してくる。このために生産を上げようという訳だ。

前回、エルピーダメモリの台湾との再編計画に関してはやはり追加の情報が先週はいっている。台湾のProMOSが社債の返還を迫られながらも政府の注入金額では不足、かといってエルピーダが資金を提供できるほど余裕はない。このため政府の再編計画が遅れており、エルピーダの計画が遅れていると日経新聞は解説している。執筆した記者は、「台湾発」として署名入りの記事になっている。

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