Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 市場分析

在庫調整はもう終わり、3~4月からは絞りすぎた生産を増やす方向へ

半導体や電子部品の在庫状況を注意して見ると、この2月〜3月から在庫調整が終わり、生産をこれまでよりは増やしていかなければならない状況に来ている。UBS証券 株式調査部 アナリストの山本 義継氏は、2月17日に東京市ヶ谷で開かれたTPSS (Total Process Solution Study-Group) Winterセミナーにおいて、景気の先行きがまだ上向きではないが、もはや在庫調整は終わりそろそろ生産を増強すべき時期に来ていることを示唆した。

アナリストの山本氏は、需要と供給との間にはまだ大きなギャップがあり、需要に応じて供給が果たされている状況ではないと断った上で、今回見方を示した。この在庫調整が急速に進んだことなどを踏まえ、電子産業における2009年の景気後退は2001年の時のITバブルの時ほどひどくはならないだろうとした。メモリーとMPUを除く半導体の伸び率の推移は電子部品のそれと同じような傾向を示しており、そこを打ったからだ。

この3月には半導体ICや部品ユーザー、すなわち電子機器メーカーの在庫は空になるため、4~6月にはICの出荷は増えていくだろうとみている。それは「セットメーカーにとっての現在の最大の関心事が倒産を避けることであり、そのために部品の購入量を極力減らし続けてきた。ICの在庫は2008年11~12月に比べると減っていく方向にある」と同氏は指摘する。日本のパナソニックやソニーの生産対応はいつも遅れ気味なので、まだその意識はないかもしれないとしながらも、海外では携帯電話やパソコン向けの部品の出荷は増えてきていると山本氏は言う。

これを受けるかのように、日本経済新聞の2月18日付けにおいてもトヨタ自動車が国内の生産台数を5月から2~4月よりも3割多く生産する計画を発表した。在庫が掃けることへの素早い対応だ。電子部品や半導体は、ここのところユーザーが在庫を減らすため生産を絞り続けてきた。山本氏は2000年のITバブルとその後の深い谷の傾向の場合でさえ、在庫調整と実需との関係が別物として考えると、先行きが見えてくるとしている。トヨタの増産計画を受けて、東芝の子会社で、トヨタに自動車用の赤色LEDテールタンプを納品してきた豊前東芝エレクトロニクスは、2008年11月~2009年2月の生産量よりも3月は増産することを決めた、と2月20日の西日本新聞は伝えている。

ただし、注意しなければならないことは、需要が増えるから出荷を増やすわけではないということだ。これまで在庫を減らしすぎたため、行き過ぎた在庫調整を健全な在庫へと持っていこうとしているだけにすぎない。逆のケースで2008年の北京オリンピックではセットメーカーは部品の購入を増やしたわけではなかった。オリンピックの3~6ヵ月前の部品の出荷と在庫状況からそのようなことがいえるとしている。だから、北京オリンピックにシリコンサイクルのピークは来なかった。


数量伸び率を需要と在庫要因に分解


2000年のITバブルを1999年から3年分のデータを取りながら、数量の伸びを実需と在庫要因に分けて分析した。2000年のIC出荷数量は25%伸びた。しかし、このうちの半分が需要であるが残りの半分は在庫だった。2001年は在庫分をほとんど生産しなかったため-20%となった。実は実需はそれほど落ちていなかったのだという。

今年の1~3月が5~6割の売り上げ減だとしても2000年ITバブルの状況を考えると当たり前だとしている。これまでの0.8ヵ月分の在庫を0.3ヵ月に縮めようとしても不可能だと山本氏は指摘する。ノキアは2008年9月〜12月は在庫を十分減らした。EMSメーカーも12月に在庫を減らしたが、米国のエレクトロニクスは1月に底を打ったとみており、-10%まで来ているという。ただし、米国の自動車はまだ-20%なのでまだ底を打ったとは言えない。


米国の小売データで足元の状況をチェック


米国の消費活動についても必要以上に悲観的に伝えられているが、実際には前年同期比では確かにマイナスだが、景気が落ち込んだといわれる第4四半期はその前の第3四半期よりも伸びている。やはりクリスマス商戦で米国消費者は前年ほどではないが、2008年で最も多額のお金を使ったのである。最後に、山本氏は、在庫調整が終わる2009年の第2四半期は対前期比で2ケタ増加しなければならないはずだとみている。


(2009/02/18 セミコンポータル編集室)

ご意見・ご感想