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セミコンがらみのニュースが相次ぎ、米国ではポストNvidiaで大騒ぎ

先週は、セミコン・ジャパン(SEMICON Japan)が東京ビッグサイトで開かれ(図1)、新聞各紙もセミコン関係のニュースが相次いだ。14日の日本経済新聞はTSMCの熊本工場は12月中に量産開始とし、キオクシアが新型メモリへの意欲を見せた。スタートアップEdgeCortixのAIチップ、13日にはラピダスの東会長の方針や中国の需要動向などもセミコンからのニュースであった。米国ではNvidiaの次に期待されるBroadcomが話題となった。

SEMICON Japan2024会場

図1 セミコン・ジャパン会場は初日から通路が混み合う


TSMCの熊本工場 (Fab23)であるJASMの堀田祐一社長が熊本第1工場は「本年中の量産を間近に控えている」と述べたと報じた。24年内の量産開始を目指すとしてきた当初(24年2月)の予定通りである。日経は、「堀田社長は熊本第1工場について『台湾にあるTSMCの工場と全く同じ品質で(製造ラインの)立ち上げに成功した』と説明した。27年の稼働を目指す熊本第2工場についても『いまは土地の造成を行っており、25年1〜3月期に工事を開始する』と述べた」と報じている。

キオクシアの早坂伸夫社長もセミコン・ジャパンの講演の中で「現行のNAND型フラッシュに加えて、新しいメモリを開発したい思いがある」と語っている。キオクシアは、OCTRAMという名称のDRAMを今年のIEDM(国際電子デバイス会議)で提案している(参考資料1)が、このDRAMやストレージクラスメモリ、CXLインターフェイスを使うメモリを次世代メモリの候補として挙げている。OCTRAMは、InGaZnOという酸化物半導体を円筒状のディープトレンチに埋め込み、薄いゲート酸化膜で円筒の周りを覆い、ゲート電極をその上に設けるという構造を使ったDRAM。高いオン電流と低いオフ電流を特長としている。

東京に本社を置くファブレスのAIチップメーカーであるEdgeCortix(参考資料23)もセミコンに出展してブースを持った。エッジAIへの応用を狙う同社は、最近経済産業省傘下のNEDOのプロジェクトに合格し、最大40億円の資金補助を受けることが決まった。これまでの最新チップであるSakura-IIよりも20倍の性能向上を目指し、エッジと言っても携帯電話機に最も近い基地局にもAIを載せるAI RAN(Radio Access Network)に使えるレベルのチップに仕上げる。Sakura-IIではTSMCの12nmプロセスを使っていたが、実際には一桁nmプロセスで製造をファウンドリに委託する。

13日の日経は、ラピダスの東哲郎会長とのインタビュー記事を掲載した。この記事で、「政府丸抱えと批判の出ている資金調達について、民間からの投融資を拡大することで官依存からの早期の脱却をめざす考えを示した」としている。東氏は、「工場建設の資金調達は民の比重を増やしたい。銀行融資や民間株主から増資で、設備投資負担の半分程度を賄う必要がある」との認識を示し、現在はまだインキュベーションの段階にあり、政府の役割が大きいが、自立を目指すとしている。

2025年に向けた製造装置産業では、セミコン・ジャパンの講演において、25年の中国市場が最大のリスクになりうるとアナリスト4人全員が見ていることを13日の日経が紹介している。米国による中国制裁により中国向けの製造装置は減少する見通しで、どの程度減少するかはアナリストによって微妙に異なるようだが、中国市場が製造装置にとってはこれまで3〜4割占めているため、その影響は大きい。

セミコン・ジャパンとは別だが、14日の日経が報じた記事で、米国の株式市場でポストNvidia企業として米Broadcomががぜん注目を集めている。データセンター向けのAIチップではNvidiaが群を抜いているものの、GoogleやMeta、中国ByteDance(TikTok)向けのAIチップ設計を受け持つBroadcomが2024年度第3四半期(2024年8~10月期)の決算を発表し、前年同期比51%増の140.54億ドルの増収を示した。10月期のAIチップ設計の分は150〜200億ドルだったが、27年10月期には600億〜900億ドルになるという見通しを発表し株価が高騰した。強気の見通しはAppleのデータセンター向けAIチップの設計を受注したからだ。その結果、時価総額が上昇、1兆ドルを超えた。


参考資料
1. 「酸化物半導体を用いた新しいDRAM(OCTRAM)技術の開発を発表」、キオクシア、(2024/12/10)
2. 「日本生まれのファブレスEdgeCortix、本格的な生成AIチップを製品化」、セミコンポータル、(2024/05/29)
3. 「宇宙利用とAIチップが結びつく、EdgeCortix SAKURA-Iが耐放射線強さを実証」、セミコンポータル、(2024/10/22)

(2024/12/16)
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