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セミコン台湾、3つの先端パッケージング技術が注目される

先週、セミコン台湾が台北で開催され、生成AIがけん引する半導体の先端パッケージング技術に注目が集まっている。日本からも九州が会場でのセミナーを通じて、台湾との半導体協力でアピールした。台湾が日本に進出する台湾企業を支援する。日本のAIプラットフォームを自動生成するスタートアップのサカナAIにNvidiaが出資したと発表された。

Semicon Taiwan / SEMI

図1 セミコン台湾での人出は多い 出典:SEMI


セミコン台湾はもともと後工程が主体の展示会だったが、生成AIチップが先端パッケージを用いており、これからも先端パッケージを進化させていくため、先端パッケージング技術が注目された。先端パッケージング技術は前工程と後工程の中間に位置する「中工程」であり、台湾が得意な分野でもある。微細化技術がほぼ限界に来ているため、微細化に代わる高集積化の技術として先端パッケージング技術がある。2nmプロセスと言っても実際の最小加工寸法が12~13nmで止まっていることは周知のとおりだ。

9月5日の日本経済新聞によると、3つの先端パッケージング技術が注目されたという。HBM(High Bandwidth Memory)に使われる3次元ICと、NTTが推進する光電融合技術、そしてパネル基板を用いてパッケージングするFOPLP(Fan-Out Panel Level Package)である。HBMを提供するのはSK HynixやSamsung、Micronなどのメモリメーカーだが、HBMを製造するうえで、複数枚のDRAMチップとコントローラチップ1枚を3次元状に重ね合わせてTSV(Through Silicon Via)でつなぎ合わせるという技術を使うため、その基板やTSV、コントローラなど周辺技術において他のメーカーが参加している。ここに日本や台湾メーカーも参入できる。

光電融合は、通信経路には光ファイバを使い、入口と出口をそれぞれ電気から光へ、光から電気へ変換する。かつては基地局間の通信に使われた技術だが、最近では基地局内、データセンター内でコンピュータ同士を接続している。今後はコンピュータ内の基板同士を接続、さらに先には基板内でIC同士を接続するなどの将来のロードマップをNTTなどが描いている。最終的には先端パッケージICの内部でチップ(ダイ)同士を接続するというイメージがある。SEMIなどが主導する形で今回、光電融合向けの半導体を扱う業界団体を立ち上げた。

FOPLPではウェーハよりも広く四角いガラスや樹脂の大型基板を使って、複数のチップなどをパッケージする。ガラス基板や樹脂基板は液晶工場での作業と似ているため、台湾の液晶大手の群創光電が2024年中に量産開始する予定で、オランダのNXP Semiconductorsに供給する見込みだという。TSMCも7月の記者会見で、3年後をめどにパネル技術の導入を検討すると明らかにした、と日経が報じている。

セミコン台湾では、「日本・台湾半導体技術国際シンポジウム」が開催され、九州から大学と企業が発表した。セミナーの主催者は、九州半導体・デジタルイノベーション協議会(SIIQ)と九州半導体人材育成等コンソーシアム、それに台湾の工業技術研究院(ITRI)である。また、台湾の郭智輝経済部長(経済相)(参考資料1)が日本に進出する台湾企業の支援を手掛ける会社を九州に設立する意向を表明した。

台湾の半導体設計を専門に請け負うデザインハウスのCMSCは、年内にも福岡市に子会社を設立する、と6日の日経地方経済版が報じた。九州の人材を中心に最低10人ほどを雇用し、SoC(System on Chip)の設計業務を手掛ける。九州大学には今後、台湾の本社から九大へ年200万円の寄付を5年実施することで最終調整しているという。TSMCの横浜のデザインセンターや、デザインハウスのソシオネクストでの実績などから、日本人の半導体設計技術への取り組みを評価したものであろう。


大きな単発ニュースとして、日本のスタートアップであるサカナAIにNvidiaが出資した。サカナAIの資金調達シリーズAに米国のVC(ベンチャーキャピタル)3社と共にNvidiaも参加した。サカナAIは、米Google出身者が設立、新しい基盤モデルを自動生成するためのAIを開発することを目的として設立された。これが実用化されれば、生成AIは次のフェーズに飛躍する。2023年7月の設立のサカナAIは24年1月にもNTTやソニーグループ、個人投資家コースラなどから約45億円を調達している。

もう一つ気になるニュースは、組み込みソフトと業務用ソフトの開発を行っている富士ソフトへの買収提案だ。米ファンドのKKRが8月に買収を提案している中で、Bain Capitalも買収提案を行った。富士ソフトはSoC半導体向けのソフト開発や組み込みシステム用半導体向けのソフト開発に力を入れている大手企業であり、今後のSoCの発展には欠かせない存在として注目されているのであろう。

参考資料
1. 山田周平、「日台の半導体連携のカギを握る台湾の知日派経済相」、セミコンポータル、(2024/09/03)

(2024/09/09)
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