キオクシア、東証へ上場を申請、日経報じる
キオクシアが東京証券取引所に株式上場を申請した、と8月24日の日本経済新聞が報じた。同社の大株主はファンドの米ベインキャピタルと東芝で、キオクシアの上場後、保有株を段階的に売却する。また23日の日経は半導体製造装置大手が次四半期の見通しを整理した。TSMCのドレスデン工場の起工式が行われ、AMDは台湾南部に2拠点を新規に設ける。
キオクシアはようやく上場に向け動き出した。10月の上場を想定しているが、キオクシアは「適切な時期の上場を目指して準備を進めている」と回答している。今回の手続きは上場申請であり、上場が認められるかどうかはこれからの審査による。キオクシアはそのための準備を進めているということである。時価総額を好調時の売上額と同程度の1兆5000億円と見込んでいる。現在は好タイミングの上場時期に来ていると言ってよい(図1)。
図1 キオクシアは力強く回復から成長へ向かっている 出典:同社の決算報告をセミコンポータルがまとめた
同社の上場は2018年に東芝から独立した翌年19年度内を目指していたようだが、19年は17〜18年のメモリバブルの反動で、半導体市況が落ちたため、上場を延期した。20年に市況は回復したが米中貿易摩擦が深刻化してきたことから上場を取りやめた。ただし、20年〜22年はコロナによるパンデミックの影響から始まった半導体不足で市況としては好調だったが、22年後半から失速し、23年中半導体ユーザーの在庫調整に追われた。24年になりようやく在庫調整のメドが付き、AI需要によるデータセンターへの投資が活発になり始めた。25年にはもっと力強い成長が見られること時期になってきたため、上場を申請したのであろう。
AI向けのメモリでは、DRAMやDRAMをスタックしたHBMがGPUなどのAIチップと一緒に使われるため、DRAMは直接AI需要を満たせる。一方、NANDフラッシュはAIシステムに直接使われるわけではないため、AIからの影響は間接的にデータセンターの高速化に合わせてHDDからSDDへの動きと共に出てくる。
製造装置大手10社の決算報告が出揃い、次四半期(6〜9月)の見通しが明るくなっている、と23日の日経が報じている。10社とも7〜9月は増収の見込みだという。8月15日にはApplied Materialsの2024年度第3四半期(5〜7月期)の発表が行われ、その際に次の8〜10月期の売上額は65.3億ドル〜73.3億ドルという見通しを発表した。半導体テスターのアドバンテストは「AI向け半導体が複雑化し、テスト時間が想定以上に長くなっている」と述べていることから、テスターの高速化への需要が高まっているようだ。
8月に発表された4〜6月期の決算では、中国向けの200mmウェーハプロセス用製造装置などの売り上げが多く、東京エレクトロンは全社売上の50%、SCREENも51%と中国向けで大いに稼いだ(参考資料1)。ただ一つ気になる動きがAppliedだ。Appliedの中国向け売り上げが従来の43〜45%から32%へと急に落ちたことだ。米国政府が中国市場への全面禁輸を発表する時期が来た可能性は否定できない。
中国向け以外での半導体投資もこれから促進される。TSMCがドイツのドレスデンに車載半導体向けの拠点を築くがその新工場起工式が20日に行われた。ドイツの工場には、Infineon TechnologiesやNXP Semiconductor、Robert Boschも各々10%出資しており、熊本のJASM同様、ESMC(European Semiconductor Manufacturing Company)という名の合弁企業となる。ドイツの大臣だけではなく、ECのフォンデアライエン委員長も参加した。
AMDは台湾南部の高雄市と台南市にそれぞれ研究開発センターを設ける、と23日の日経が報じた。総投資額は86億台湾元(約390億円)で台湾当局が33億台湾元を支援する。AIチップや光電融合技術を開発するとしている。台湾南部は後工程のインフラが整っており、おそらく先端パッケージ技術の開発であろう。AIチップと光電融合とも先端パッケージを利用するからだ。
参考資料
1. 「中国、『今のうちに半導体製造装置をせっせと購入しておこう』」、セミコンポータル、(2024/06/21)