半導体先端パッケージング技術の取り組みニュース相次ぐ
ICの組立パッケージング技術と生成AI向け半導体チップのニュースが相次いだ。組立パッケージング技術では、レゾナックが日米10社とコンソーシアムを形成、アオイ電子はシャープ三重県多気郡の第1工場を活用、先端パッケージラインを構築する。リンテックは米オレゴン州にパッケージングのアプリケーションセンターを新設する。生成AIでは、SBグループがGraphcoreを買収、プリファードはSamsungをファウンドリに選んだ。

図1 US-JOINTのロゴ 出典:レゾナック
レゾナックは半導体パッケージング技術に必要な材料開発やその評価を行うコンソーシアムを日米10社で設立する。日本国内にはすでにJOINTおよびJOINT2と呼ぶコンソーシアムを形成しているが(参考資料1)、顧客のあるシリコンバレーに新たにUS-JOINTコンソーシアムを設立することで素早い開発につなげる狙いがある。参加する10社は日本企業6社に米国企業4社。参加する日本企業はレゾナックに加え、メック、ナミックス、東京応化工業、TOWA、アルバックの6社、米国企業はAzimuth Industrial、KLA、Kulicke &Soffa Industries、Moses Lake Industriesの4社。材料メーカーだけではなく評価・検査装置、モールド装置などのメーカーも加わっている。
レゾナックのJONITプロジェクトでは、パッケージング工程の工程間の情報共有が課題解決を早めることから、プロセスの前工程を参考にしながら設立した。先端パッケージ工程の例えば微細なバンプ形成では、シードメタル形成からレジスト塗布、露光、現像、洗浄などのリソグラフィ工程を経て、メッキによる厚いメタル形成、レジスト剥離など一連の工程を使うようになる。ここに問題が発生しても、工程間での情報が共有され解決を早めることができる。米国にもコンソーシアムを設立することで、顧客と共にコンセプト検証が可能になる。
日本で唯一のOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)というべきアオイ電子が、シャープの液晶工場の建物や設備を活用し、半導体の先端パッケージのパネル生産ラインを構築する。2024年中に着手し、2026年中の本格的な稼働を目指す。パネルの生産能力は月産2万枚。チップレットや2.5D/3D-ICのヘテロ集積化パッケージをはじめ、チップ埋め込み型のパワー半導体パッケージや、5G/6Gなど通信およびADAS向けの高周波パッケージも提供するとしている。液晶の生産ラインと半導体のパッケージ工程におけるパネル生産ラインとは基板が大きく共通点が多いため、最新の半導体パッケージング工程として活用するには都合がよい。
ウェーハの表面保護テープやフィルム、ダイシングテープなどを扱うリンテックは、米国の拠点の一つ、オレゴンアプリケーションセンターにおいて、パッケージング工程の技術開発と検証を行う。7月9日の日刊工業新聞によれば、オレゴン州の施設内に、半導体製造の後工程で使うテープ貼り付け・剥離・加工装置などを順次搬入しているという。米国のチップメーカーとの協業を深めていく。
生成AIでも動きがあった投資会社のソフトバンクグループ(SBG)は、英国の生成AI用チップとコンピュータを開発しているGraphcoreを完全子会社にした。Graphcoreはデータセンター向けに生成AIチップを開発しているスタートアップで、並列コンピュータアーキテクチャの一つであるMIMD(Multiple Instruction Multiple Data)を推進し、拡張可能な超並列AIコンピュータを開発している(参考資料2)。電源供給のウェーハとAI処理回路のウェーハをWoW(wafer on wafer)で張り合わせて形成している。電源供給ウェーハにはディープトレンチで容量の大きなキャパシタを形成できるというメリットがある。
Samsungは、日本のAIスタートアップであるプリファードネットワークスに、2nm GAA(ゲートオールアラウンド)プロセスと、チップレットや先端2.5Dパッケージング技術の「Interposer-Cube S」を使ったターンキーソリューションを提供すると発表した。再配線層(RDL)のインターポーザをはじめとする設計は、SamsungのデザインパートナーであるGaonchips社が請け負う。
参考資料
1. 「レゾナックが自らコンソーシアムを組織化する理由とは」、セミコンポータル、(2023/05/25)
2. 「最強のAIプロセッサをウェーハオンウェーハで実現したGraphcore」、セミコンポータル、(2022/03/08)