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半導体不況からの脱出が最後のメモリでも開始

ようやく半導体不況からの脱出がメモリでも見られた。DRAM、NANDフラッシュとも値上げに向かい始めた。ロジックでもIntelの株価が1年7カ月ぶりに高値にシフトした。ルネサス、ロームも開発・量産拠点を充実、Samsungは横浜に先端パッケージングの研究拠点を開設する。三井化学、旭化成など半導体材料メーカーが活発に投資する。研究開発を利益につなげる企業の上位に半導体材料・装置が目立つ。

Core Ultra / Intel

図1 先端パッケージング技術を使うIntelのCore Ultra


12月25日の日本経済新聞は、DRAMとNANDフラッシュメモリの価格が上がり始めたと伝えた。DRAMの11月における大口取引価格は、指標品のDDR4型8Gビット品が1個1.65ドル前後、と前月比よりも11%高い、と報じた。実に2年5カ月ぶりの値上がりとなった。NANDフラッシュも10〜12月期の価格がTLCの256Gビット品で単価が1.85ドル前後となり、前四半期比12%上がったという。

メモリはパソコンとスマートフォンが最大の需要であり、これらの市場が回復してきていることと絡み、メモリ需要が上がってきた。これまで在庫が積み上がりすぎたことで、減らすための調整が進み、メモリ価格は下がり続けてきた。値上がりしたことは、流通業者やEMS(電子機器の製造サービス)などのユーザーの在庫調整が終わりつつあることを示している。特に生成AIに欠かせないHBM(DRAMチップを3次元に4ないし8枚積み重ねた構造の高帯域メモリ:High Bandwidth Memory)で先頭を走るSK Hynixに刺激され、Samsung、さらにMicronもHBMの新製品を出してきている。生成AIに続き新PCやスマホ需要も回復してきたため、メモリの値上げになった。

Intelはオフラインでも生成AIを体験できるというデモを交えた新プロセッサ「Core Ultra(開発コード名Meteor Lake)」(図1)の本格的な発売を発表したことで(参考資料1)、Intelへの期待が評価され株価が上がった。22日の日経は、「20日の終値は2022年末比73%高の45.76ドルと、約1年7カ月ぶりの高値圏だった」と報じた。14日に新プロセッサの発表と同時にPCメーカーからも生成AIを体験するというデモを示したことで、Intelに対する期待が高まっている。

IntelのCore Ultra製品は、チップレットや2.5D/3D-ICなどを活用した先端パッケージング技術で製造されているが、先端パッケージング技術はこれまで生成AIやハイエンド製品にしか使われてこなかったが、これからは一般的な半導体製品の中に入り込み大きな市場を形成すると見られている。


ルネサスエレクトロニクスが半導体のパッケージング開発拠点の一部を大分工場(大分県中津市)に移転する、と21日の日刊工業新聞が報じた。今後のデータセンターや通信基地局など産業インフラやPCなどの民生需要が見込まれることから、開発機能の一部を移転することで開発から量産までの期間を短縮し効率化を図る、としている。移転する機能は新規パッケージ開発と、製造ラインの自動化開発で、武蔵事業所(東京都小平市)と高崎事業所(群馬県高崎市)から移転するという。移転後の本格的な操業開始は、2025年1月から。

ロームはSiCパワー半導体工場を宮崎県国富町に建設する計画を打ち出していたが、このほど宮崎県および同県国府町と立地契約を結んだ、と22日の日経地方版が伝えた。3000億円規模を投じて新工場を整備し、子会社のラピスセミコンダクタの宮崎第2工場として2024年末までの稼働を予定する。11月に出光興産子会社のソーラーフロンティア(東京・千代田)から取得した約40万平方メートルの土地と建物を活用する。

Samsungが横浜のみなとみらい地区に研究拠点を設けることが伝えられていたが、「アドバンスド・パッケージ・ラボ」を2024年に開設する、と22日の日経が報じた。今後5年間で400億円超を投じる計画で、経済産業省が最大200億円まで補助する。

三井化学は、半導体材料の需要に応えるため、別事業で使っていた施設を転用し、増改築を行うと22日の日経が報じた。投資額は約30億円で、2024年5月に竣工を予定する。旭化成は、半導体材料の新工場を静岡県富士市に建設すると21日の日経が報じた。総投資額は150億円強で、チップ表面を保護する感光性樹脂などの材料の生産能力を2倍に高める。

25日の日経は、研究開発を利益につなげる企業のランキング調査を発表した。これは、2023年3月期まで直近5年間の純利益を合算し6〜10期前の研究開発投資の合計で除した。研究開発の成果が5年後に表れるという目安を基にした。これによると、1位はシリコンウェーハに強い信越化学で、その効率が8.7倍だったという。18年3月までの5年間の研究開発投資が2446億円だったのに対して23年3月期まで5年間の総利益は合計2兆1252億円だった。2位はフォトマスクブランクスのHOYA、東京エレクトロンは4位など半導体材料・装置メーカーが上位に来ている。

参考資料
1. 「Intel AI Everywhere戦略の第1弾、オフラインPC上で生成AIが可能に」、セミコンポータル (2023/12/21)

(2023/12/25)
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