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Nvidiaの最新四半期、前年同期比2倍の売り上げを達成

米国時間8月23日、グラフィックスプロセッサのNvidiaの決算発表に期待が集まっていた。何せ3カ月前の決算報告の時に、今期(2023年5〜7月期)の売上額は、1年前より64%増の110億ドルという、半導体不況の中でとてつもない予想を見込んでいたからだ。結果はそれよりもさらに多い約2倍強の135億ドルという結果だった(表1)。また、Armの上場に関して、主要な顧客が株を買うという記事も目立ち始めた。

Nvidia Quarterly Revenue trend / Nvidia

表1 Nvidiaの2023年5〜7月期の売上額 出典:Nvidia


通常、半導体企業はこれまでの受注と仕掛品の見通しから、次の四半期見通しを大きく外すことはなかった。前期での今期見通しが64%増の見込みというだけで、株価は大きく動き、前四半期の決算発表後の時価総額が1兆ドルを突破した。前期は前年同期比19%減という実績だったのにもかかわらずだ。しかし、今期は前年同期比で101%増という大きな売り上げ増を報告した。早速、株価は動いた。それも発表される前の21日に8%も上昇した、と23日の日本経済新聞は伝えている。

業績を上げた原動力は、生成AI向けGPUやAIエンジンの売り上げであり、それを示すデータセンター向け製品の売り上げが、これまでけん引していたゲーム向けをはるかに抜き去り、ゲーム向けの4倍強の103億ドルの売り上げを計上した。もちろん、利益は言うまでもなく好調。GAAP形式での営業利益率は50.3%と絶好調となっている。Non-GAAPだとさらに大きい。

AIの学習はほとんどの場合、データセンター側で行われているため、データセンターでの売り上げの大きさがその影響を示している。それもGPUの数を数千個以上も必要とする生成AI応用からの要求だ。生成AIは、GAFAM(Google/Amazon/Facebook/Apple/Microsoft)などのデータセンターを持つ ISP(Internet Service Provider)が求めており、そのための高性能GPUが欲しいとされている。前四半期までは2021年に発表したA100というGPUが量産されており、今期でもその要求が強かった。しかし、今期後半に量産開始した、さらに高性能なH100に対しても要求が高まった。

さらに新製品としてGH200(コード名Grace Hopper)をComputex Taipei 2023で発表、メモリ容量をA100の約500倍に増強し処理性能を高めた(詳細は参考資料2)。

Nvidiaが高性能を目指すのには生成AIからの要求が強い。生成AIでは、GPUやAIエンジンを1個だけ使うのではない。チャットGPTで代表されるGPT-3では数千個のGPUが使われているという。このため1社が大量のGPUやAIエンジンを要求するのだ。それも、量産品で最新のH100は、発表当時7nmプロセスだったが、現在は最先端のプロセス(4nmか5nm)を使っているものと推定される。


23日の日経をはじめとするさまざまなハイテクメディアには、Armが上場した後に株式を購入するとうわさされている企業として、AmazonやIntel、Nvidia、Apple、Samsungなどの名前が挙がっている。ソフトバンクがArmを上場する場合に株式の10%を公開するとしており、100億ドルの上場益を見込んでいるが、これを高すぎるという声と共に、さらに600〜700億ドルに上がるという声もある。

Armの売り上げの20%前後を占める中国でのリスクも指摘されている。ソフトバンクは数年前、Arm Chinaの株式の51%を中国のファンドに売却してしまい、Arm Chinaの経営陣とArm本社との間に隙間風が吹いている。最近では中国側が52%といわれている。特に20年6月に起きた、Arm ChinaのCEO解任を本社側が決めたものの、何も問題はないとArm Chinaが答え、運営を続けている。Arm Chinaについて、27日の日経は「知的財産やデータ保護の適切さや、正しい記録へのアクセスなどについて『保証できない』」と述べている。

Arm本社は、Arm ChinaにIPコアをサブライセンスしており、中国での売上額が20%前後を占めている。このため、Arm Chinaに不満でも業績を上げている以上、Chinaを切れないというジレンマに悩まされている。欧州メディアのeeNewsがこの問題を取り上げている(参考資料3)。

参考資料
1. "NVIDIA Announces Financial Results for Second Quarter Fiscal 2024", Nvidia (2023/08/23)
2. 「Nvidiaの最新チップGH200になぜCPUとGPUを集積するのか」、セミコンポータル (2023/08/25)
3. Clarke, P., "Analysis: Arm IPO filing reveals depth of Chinese risk", Opinion, eeNews, (2023/08/22)

(2023/08/28)
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