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インテルは売上を23%も低下、再構築のニュース相次ぐ中にもキラーアプリ見える

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年明け早々、不景気な話が相次いでいる。大きなニュースとしてはインテルが2008年10-12月期の見通しを23%売上減少、というショッキングな発表を行い、電子部品大手5社が設備投資を半減するというニュースが流れた。パナソニックは事業の再構築を発表し赤字事業の撤退を早め、経営体質を強化するとした。そんな中にもキラーアプリのネタは出てきている。

東京秋葉原駅前のヨドバシカメラビルに設置されているデジタルサイネージ
東京秋葉原駅前のヨドバシカメラビルに設置されているデジタルサイネージ


インテルが前年同期比で23%減という大きな修正を発表した。パソコンメーカーが部品在庫を削減する動きが続いていることが響いていると日経新聞は報じている。2008年中ごろには新型マイクロプロセッサAtomの予想外のヒットに喜んだのも束の間、実はAtomという5万円パソコン向けのプロセッサはこれまでのパソコン向けプロセッサよりも単価が安いという盲点を再認識した格好だ。インテルのこれまで好調な業績、強気な設備投資、450mmウェーハへの猪突猛進は、平均部品単価が40ドルと極めて高いビジネスを展開してきたことによる。この平均単価が下がることはインテルにとってこれまでのビジネスモデルを根本的に見直す必要に迫られているといえる。

三洋電機が半導体部門を中心に500名の正社員を削減すると発表した。パナソニックに買収されることが決まり、不採算事業のリストラを進めると日経新聞は報じた。三洋電機の半導体部門は2008年度上期の赤字から下期は黒字を見込んでいたがその目途が立たなくなったらしい。三洋電機はかつて優れたアナログ技術を持っていた。アナログ技術はデジタルではできないようなアプリケーションやデジタルだとチップが大きすぎてしまうような回路を小型安価に実現する知恵の塊である。かつては優秀なエンジニアが大勢いた。しかし、同族経営、不透明な経営などに嫌気をさして、すでに退社したエンジニアは多いと聞く。会社を立て直した時期はすでに遅し。残念ながら現在の三洋電機の半導体には魅力がないと言いきるエンジニアもいる。

電子部品メーカーの京セラは太陽電池以外の設備投資は抑え、TDKは電子部品の増産投資を凍結し、リチウムイオン電池関係に投資を振り向けるという。その他、村田製作所、アルプス電気、太陽誘電も設備投資を半減するとしている。

パナソニックは悪い経済環境の中、薄型テレビ用パネルの投資額を圧縮、海外拠点の撤退基準を厳格に運用するなど、経営体質を強化する。現在は円高状況にあるが、長期的にはやはりグローバル成長を目指す姿勢を明確にしている。ロボットと環境・エネルギーが新規事業になる。

日本は米国に比べるとまだましだと、常々述べてきたが、ラスベガスで開かれたCES(国際家電見本市)やデトロイトでのモーターショーでは成長をけん引する大型商品は不在だとメディアは伝えている。

今年のはじめに、成長分野は環境関係だと述べたが、日経新聞でも各国のグリーンニューディール政策を先週伝えている。特に、米国ではオバマ次期大統領が今後10年で再生可能エネルギーに1500億ドル(15兆円)を投入することをすでに表明している。これは、ブッシュ大統領が京都議定書から離脱したことで、環境分野において日欧に大きく出遅れてしまったことに対する反省も含まれている。米国はかつてのスプートニク号により有人衛星の分野においてロシアに先を越された思いと全く同じ思いで、環境の分野において日欧に追い付き追い越すという気持ちが強い。

半導体のキラーアプリとして、1月9日の日経新聞に掲載されたデジタルサイネージの動きは決して無視できないので触れておく。これは、もしかすると10年後に大化けする可能性がある。デジタルサイネージとは、LEDディスプレイなどを利用する屋外広告のこと。このディスプレイに広告だけではなくニュースや案内も流すわけだが、広告やメッセージを伝える手段として半導体技術をもっとたくさん使えばもっと身近な存在になる。半導体技術は単なるディスプレイドライバだけではなく、無線技術、モデム、画像認識処理、カメラ映像処理、グラフィックス処理などさまざまな回路をデジタルサイネージに搭載する。こういった機能を半導体チップによってデジタルサイネージに取り付ければ、屋外広告以外のさまざまな応用が考えられている。

例えば、東京渋谷のサインボードに載せる広告を九州のオフィスからWiMAXや通信キャリヤの無線ネットワークを通じて替えることができる。デジタルサイネージは、いつでもどこでも誰のために何の広告を載せられるという面白い応用の可能性もある。通行人の年齢層、男女の区別などを自動的に認識し、それにターゲットするような広告を打つこともできる。通行人は携帯電話を使ってサインボードからの呼びかけに応答することもできる。LEDディスプレイをELやLCDなどに変えてもっと小型にすれば空港やビルの屋外広告だけではなく、駅やバス停、病院、学校、役所、銀行や証券、コンビニなど、人の集まる所に設置できる。すでにインフラの一部にもなっている自動販売機の中に埋め込んでもよい。広告媒体としてリアルタイムで、しかも双方向で応用し、広告効果を上げることもできる。無線を使ってパソコンのデータや動画を送り込むこともできる。シャイな若い男女にはプロポーズのボードとしても気楽に使える。ありとあらゆるビジネス用途の応用が考えられ、新しいメディアとなる可能性を秘めている。


(2009/01/13 セミコンポータル編集室)

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