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政府による追加の半導体支援策、対中輸出制限を強化する米国、政治色強まる

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2022年度第2次補正予算案に計上する半導体支援策の概要が明らかになったと日経が報じた。また、米国は半導体および半導体関連製品の中国輸出に対する規制をさらに強め、日本とオランダにも中国輸出の自制を求めている。旧三洋電機の新潟工場をonsemiが数年前に買い取ったが、それを日本のファンドが買収することが決まった。半導体ニュースの多い週末だった。

半導体支援策を報じたのは11月6日の日本経済新聞。それによると日米が連携する2nmプロセスノードの先端技術を研究開発する拠点の整備に約3500億円、先端製品の生産拠点の支援に約4500億円を充てる。さらに製造に欠かせない部素材の確保にも3700億円を用意し、合計1.3兆円を投じるという。2nmプロセスノードの先端半導体を研究・開発する研究拠点は年内設置を目指すとしており、20年代後半から開発・量産できる体制を構築することを目標とする。

参加企業などの詳細を月内にも公表する予定で、東京大学や産業技術総合研究所、理化学研究所などが名を連ねるとしている。欧米の企業や研究機関とも連携するとしており、1年半前に2nmプロセスノードのナノシート型GAA(Gate All Around)CMOS技術を発表したIBMとの提携は最も可能性が高い。また欧州の半導体研究所であるImecとの連携も十分にありうる。Imecは11月7日に東京港区でITF(Imec Technology Forum)Japanを開催するが、今年は、経済産業省の野原諭氏、ウェスタンデジタルジャパン前社長の小池享義氏、東京大学の黒田忠広教授の日本人が3名も講演する。これほど多くの日本人がITF Japanで講演することは前例がない。

先端半導体の生産拠点向けの4500億円は、これまでの国内誘致の支援額は21年度補正予算(6170億円)と合わせると1兆円を超える。さらに部素材や製造装置の確保策の3700億円ではシリコンウェーハやSiCウェーハの供給網を強化するとしている。

米国が先端半導体の対中輸出への規制をより強化したことをやはり11月6日の日経が報じたが、ここでは日本とオランダの両国に対して早期に米国と同調するように圧力をかけた。米国は中国の半導体産業が大きくなることを懸念しており、特に半導体製造装置では米国のApplied Materials社とLam Research社、KLA社、日本の東京エレクトロン、オランダのASMLなどが強いものの、米国の製造装置抜きでも日本とオランダから製造装置を中国が手に入れれば先端半導体を製造できる。このことを嫌って、日本とオランダも米国に追従するだろうと述べて圧力をかけた。

米国は製造技術や装置だけではなく、人材に関しても中国との取引を事実上禁止したと報じられた。人材をどのように規制するのか具体的なことは明らかにされていないが、商務省長官のGina Raimondo氏が近くオランダを訪問することを米国メディアが報じている。今回、対中半導体製品輸出の規制が報じられたのは、Raimondo氏がLamやKLAと会合を持った後だったため、米国の半導体製造装置メーカーのプレシャーが背後にあるようだ。

米国の半導体メーカーonsemiが持つ新潟工場を売却する方針を発表していたが、11月1日の日経は、日本政策投資銀行や伊藤忠商事が出資する投資ファンドのマーキュリアホールディングスが産業創成アドバイザリー、福岡銀行系の福岡キャピタルパートナーズと組んで、onsemiの新潟工場を買い取ると報じた。11月3日の日経地方版では新潟県の花角英世知事は2日の記者会見で「今回の経営の変更が地域活性化にもつながると期待している」と報じた。

翌4日には、onsemiのメディアアラートで、上記3社のファンドが新潟の6インチウェーハ工場の売却で合意に達したと発表した。今回の売却はonsemiのファブライト戦略を実行するためのステップであり、製造ネットワークの最適化により、売上総利益率の向上と業績の変動幅の縮小に貢献するものだと述べている。売却は2022年第4四半期に完了する予定だという。


図1 Onsemi社Intelligent Sensing GroupのシニアVP兼General ManagerのRoss Jatou氏 筆者撮影

図1 Onsemi社Intelligent Sensing GroupのシニアVP兼General ManagerのRoss Jatou氏 筆者撮影


10月25日のonsemiのイメージセンサ戦略の会見では、新潟工場はまだ買い手がつかず通常の生産を続けている、と述べていた。ただ、外部(ファウンドリ)と内部(自社工場)で生産能力を増やしていると、同社Intelligent Sensing GroupのシニアVP兼General ManagerのRoss Jatou氏(図1)は述べている。GlobalFoundriesから買ったニューヨーク州イーストフィッシュキルの300mmラインではイメージセンサを量産しており、生産能力を倍増させていると続けた。新潟工場は6インチラインに留まり、生産能力が低いため新たに投資するよりは300mmラインを買う方が戦略に見合うと考えたのではないだろうか。

参考資料
1. 「IBM研究所が2nmプロセスで500億トランジスタのICチップを試作」、セミコンポータル (2021/05/07)

(2022/11/07)

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