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4人乗り軽自動車のEV化が本格的に、米大統領はSamsung訪問を最初に

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4人乗りEV(電気自動車)の軽自動車が本格的に登場した。日産自動車と三菱自動車が共同開発したもの。走行距離は180kmと短いものの、補助金の対象になっており180万円台に抑えられている。EVの急速充電の普及も進んでいる。コンピュータ(ECU)化と共にクルマのOSも普及している。半導体に強い韓国を、日本より先にバイデン大統領が訪問した。

図 1 日産自動車が発表した軽EVの「サクラ」 撮影筆者

図 1 日産自動車が発表した軽EVの「サクラ」 撮影筆者


日産自動車と三菱自動車は共同開発した軽EVを5月20日に正式に発表した。一部ディーラーの店頭にはすでにある。軽EVとは、サイズがガソリン車で規定された大きさに収まっているクルマのこと。全長3.4メートル以下、幅1.48メートル以下、高さ2メートル以下を満たす4人乗りEV車を軽EV車と定義している。日産の軽EV「サクラ」の正式な価格は233万円(消費税込み)からだが、政府の「クリーンエネルギ自動車導入促進補助金」を活用することで実質的な価格は180万程度になる。

報じた5月21日の日本経済新聞によると、「21年度の国内の新車販売台数は約420万台。そのうち軽自動車が4割」(日本自動車販売協会連合会の調査による)だという。それも日産によると自家用車の1日の走行距離は半数超が30km以下だということで、大部分の顧客が軽EVでは180km程度の走行距離で5日間程度は充電なしで乗れそうだ。

軽EVながら、「サクラ」には高速道路の単一車線での運転支援技術「プロパイロット」や、ボタン一つでハンドル操作しなくても駐車できる「プロパイロット パーキング」機能も搭載している。さらにNissanConnectサービスに加入する必要があるが、緊急時のSOSコールや、カーナビの地図を自動更新してくれるOTA(Over the air)、Apple CarPlayでのiPhoneとの接続なども可能だとしている。

EVでは欠かせなくなる急速充電ステーションの設置が拡大している。20日の日刊工業新聞は、スイスの電力機器メーカーABB社とノルウェーの急速充電メーカーEviny社が共同で、ABB社の充電器「Terra 360」をノルウェー第2の都市ベルゲンとスキーリゾート地ヤイロに設置した、と報じた。最大出力360kWのTerra 360は最大2台のEVを同時に充電できる次世代型の急速充電器である。

EVはこれまでバッテリを大量に搭載することで走行距離を伸ばしてきたが、その分、充電に時間がかかり大電力の急速充電器が次世代EVでは求められている。18日の日経は、「米Teslaや韓国・現代自動車などは出力250kW超の急速充電に対応し、現代自の新型EVは5分の充電で200km走れる。一方、トヨタ自動車や日産自動車は出力150kW以下で、充電時間が2倍以上かかる」と報じた。日本勢が充電規格「CHAdeMO」を日本独自で定めたものの拡張性に乏しく、大容量急速充電機にまだ対応できていない。Teslaは独自の充電機を整備し、大容量急速充電を可能にしている。大容量急速充電器は、ガソリン車の満タンにする時間とほぼそん色のない数分で100kmは走行できるとして、欧州を中心に開発が進んでいる。また、1000V前後の電圧から一気に充電する大容量急速充電器は、日本独自ではなく欧州勢と手を組んで開発すべき問題であり、「ガラパゴス化」を防ぐ技術であろう。

EV化は、充電スタンド情報やそこまでの距離の情報などを表示するコネティビティがより強く求められる。Googleのクルマ用OS「Android Auto」の利用が拡大している、と19日の日経産業新聞が報じた。Android Autoの搭載車は1年間で5割増加し、1億5000万台を超えた。これまではディスプレイサイズがクルマメーカーによってさまざまだったが、これからのAndroid Autoではどのようなサイズでも経路案内と音楽再生、メッセージ送受信の画面を自動的に見やすく表示するという。

米バイデン大統領は、22日夕方日本に到着したが、一足前に韓国を最初に訪問、Samsungの半導体工場を見学した。中国を念頭にした経済安全保障で連携することを呼びかけた。Samsungはテキサス州のオースチンにファウンドリ工場を持っているが、さらにオースチンから25km程度離れたテイラー市にも170億ドルを投資して、先端の新工場を設置することを表明している(参考資料1)。バイデン大統領は、TSMCだけに頼る米ファブレスにはリスクを伴うことを承知しており、Samsungの投資を歓迎し確実にするために最初に訪れたのであろう。

参考資料
1. 「Samsungのファウンドリ戦略第1弾、米国に第2工場新設」、セミコンポータル(2021/11/26)

(2022/05/23)

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