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TSMCの業績から推定できる今年の非メモリ半導体市場

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どうやら2022年の半導体は2桁成長で、史上最高の販売額を記録するだろう。しかも半導体不足は今年いっぱい続きそうだ。こう言い切れるのは、メモリ以外の半導体の目安となる2022年第1四半期の半導体売上額がTSMC、UMC共、前四半期の2021年第4四半期を上回っているからだ。経験則ではあるが、例年第1四半期は前四半期を5〜6%下回る(参考資料1)。

最大手、Samsungの四半期の決算発表はまだ出ていないため、メモリ分野を正確に評価できないが、メモリ以外の製品に関して、先週の4月14日に発表した台湾のTSMCの決算から成長率を推し量れる。それによると、2022年第1四半期における売上額は4810.8億台湾元(174.7億ドル、あるいは2兆927億円)となった。最新レートで1台湾元は4.35円である。円は台湾元に対しても安い。1年前は1台湾元が3〜3.3円だった。

第1四半期の売上額は前四半期比11.6%増である。もちろん前年同期比はもっと大きく、36%成長である。半導体産業は年平均6〜7%でここ四半世紀の間、成長し続けている産業であるが、例年なら第1四半期の売上額は前年の第4四半期のそれよりも5〜6%下がり、それでも第2、第3四半期、そして第4四半期で大きく成長する、というパターンである。それで年成長率6〜7%を確保してきた。第4四半期(10〜12月)はクリスマス商戦で、消費が大きく伸びている時期であり、第4四半期が好調なことはごく当たり前で、翌第1四半期はどうしても伸びがマイナスになりがちである。


1Q22 Revenue by Platform / TSMC

図1 TSMCの応用別売上割合 出典:TSMC


それが第1四半期に前の第4四半期を超えると、2桁成長するのがこれまでの常であった。今回は、11.6%も前四半期よりも高いことから、スマートフォンとデータセンターが活発に動いたことを示している。というのは、TSMCの売上額の40%がスマホで41%がHPC(高性能コンピューティング)だからである(図1)。同社は自動車向け半導体も前四半期比26%増で生産しており、車載向け半導体の売上割合はこれまでの3〜4%から5%へと確実に上がっている。第1四半期は通常ボトムであるからこそ、第2、第3四半期へと売り上げは伸びていく。

もう一つの材料はUMCだ。同社はTSMCとは違い22nm以上のプロセスでビジネスを行うファウンドリであり、TSMCがフォローしきれない半導体製品をカバーしている。残念ながら第1四半期の決算発表はまだしていないが、毎月の売上額を発表しているため、1〜3月の売上額を合計してみると634.2億台湾元となり、前四半期比7.3%成長を示した。UMCも売上額を前四半期よりも落とさなかったことから、今年は2桁成長を見込めそうだ。


1Q22 Revenue by Technology / TSMC

図2 プロセスノード別のTSMCの売上割合 出典:TSMC


TSMCが微細化プロセス(5nm/7nmノード)で全売上額の半分を稼いでおり、16nmノードも含めると64%にも達する(図2)。これに対してUMCは22nm以上のノードのプロセスしか持っていないが、90nm〜22/28nmノードの製品が65%もある。つまり、両社のファウンドリの動きは全プロセスノードをカバーしていることになり、ある程度景気の指標にはなりうる。またUMCの先端ではないプロセスでも営業利益率30%程度を確保している。このことは、ファウンドリは先端プロセスノードではなくとも十分に稼げるビジネスであることを示している。

世界半導体全体では3月の販売額がまだ発表されていないため、正確なことは言えないが、これまで発表されている数字から評価してみると、12〜2月の四半期と、その前の9〜11月の四半期を比べてみても最近の四半期は4.8%プラス成長である。クリスマス商戦の半導体は実質的に11月がピークなので、今年の世界半導体市場は2桁成長ないそうだと言い切れるであろう。

参考資料
1. 「半導体ICの成長率を年初に推しあてる手法をIC Insightsが公開」、セミコンポータル (2021/12/10)

(2022/04/18)

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