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TELの新棟建設、製造装置向け部品工場の拡張など半導体不足に対処

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半導体不足が2022年いっぱい続きそうだという見通しが強まり、製造を強化する動きが製造装置や、それを支える部品などサプライチェーンも動き出した。東京エレクトロンが熊本工場を拡張、TELに納入する部品業者も工場を拡張する。また、TELは社員のモチベーション向上のために導入したジョブ型人事制度の評価を日経が報じた。ロシアのウクライナ侵攻による影響も現れ始めた。

図1 東京エレクトロン九州の新棟完成予想図 出典:東京エレクトロン

図1 東京エレクトロン九州の新棟完成予想図 出典:東京エレクトロン


3月30日に発表されたキオクシアの岩手県北上工場の増設のニュース(参考資料1)に続き、東京エレクトロンも熊本県に合志工場に新棟を建設する(図1)と31日発表した。合志工場(正式名称は東京エレクトロン九州合志事業所)に増設する開発棟は地上3階建てで、延べ床面積は24,200平方メートル。着工は2023年春を予定しており、24年秋竣工の予定で、建設費用は約300億円。

TELは宮城県にも工場を持っており、宮城県は半導体製造の一大拠点の一つとなっている。その東京エレクトロン宮城向けにマニングセンターなどを駆使して半導体製造装置用部品を加工するサービスを提供するサワ(山梨県上野原市)が2月、宮城県東松山市の工業団地で第4工場を稼働させた、と4月4日の日経産業新聞が報じた。総事業費は9億6000万円。2023年末までには生産能力を新設前の2倍にする計画だ。サワは、機械部品を加工するマシニングセンターや旋盤、放電加工機などに加え、機械部品を設計するための3次元CADや3次元測定器なども持っており、さらに生産能力を拡充する。

半導体製造用の部品を製造するプロスパイン(宮城県大崎市)も4億8000万円をかけて半導体向け部品専用の生産工場を増設する、と同紙が報じた。3月に着工し年内に完成、23年1月から本格稼働する予定だ。延べ床面積は1300平方メートルで、既存の工場に隣接する空き地に建設する。同社は、磁力の反発と吸引を利用して非接触で動力を伝える部品を生産しており、その製品は磁気歯車とも呼ばれる。半導体工場のように摩擦による粉塵を嫌う工場に向く。非接触で無発塵をセールスポイントとする。

TELは、組織の士気向上や若手育成に力を入れており、ジョブ型の人材評価システムを導入していることを4月4日の日経産業新聞が報じている。職務を明確にして人材を登用するこのシステムは、職責や技能に応じた教育・訓練が明確になる上に、エンジニアや営業担当者に必要なスキルを的確に身に付けられるとしている。同社は「企業の成長は人、社員は価値創出の源泉」をモットーにしている。同社の海外売上比率は85%に達しており、世界のライバル企業と競争していくためには、十分な報酬や明確な評価が欠かせない。

TELは2017年からジョブ型人事制度を導入し、等級や評価、報酬などを見直してきた。2013年にApplied Materialsとの統合で合意し、共同作業を進めていたが、米国政府の反対により2015年に統合を断念した。しかし、この共同作業の中で、TELの前CEOの東哲郎氏は「Appliedとの共同作業を通じて企業文化や考え方を共有したことはとても勉強になった」と述べており、この時の考え方がジョブ型人事制度につながったのではないだろうか。世界と伍していくためには、世界の企業の文化や考え方を知り、共通の土俵を整えておくことが、社員のモチベーションを上げる上で重要だからである。

ロシアによるウクライナ侵攻で、サプライチェーンの不安定感から最大手のEMS(電子機器の製造専門の請負サービス業者)である鴻海精密工業の業績が先行き不透明だと複数のメディアが報じていたが、同社が製造を受け持つApple製品の生産台数が減る、と3月29日の日経が報じた。具体的には22年4〜6月に廉価版iPhone SEの生産台数予測を当初より2割減らす計画で、ワイヤレスイヤホンのAirPodsも生産台数を1000万台以上減らすとしている。日経は、ロシアのウクライナ侵攻が半導体不足に拍車をかけていることが影響した、と見ている。

また、2月24日にロシアがウクライナ侵攻を始める少し前の2月中旬から、日本企業に対するサイバー攻撃が急増している、と3月30日の日経産業が報じた。これは帝国データバンクが発表したもので、2021年3月からの1年間で特に2月中旬から3月中旬までの1カ月間にサイバー攻撃を受けたとする企業が3割に上ったという。ウクライナ攻撃はサイバー攻撃と同時に起きていると言われている。うかつにメールの添付ファイルを開かない、不審なURLを開かない、など社員教育の徹底やセキュリティソフトの導入など対策強化は急務となる。

参考資料
1. 「キオクシア、用途拡大に向け、製品拡大と投資の両面で活発に」、セミコンポータル (2022/03/31)

(2022/04/04)

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