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Teslaの2021年度利益率2桁でEVシフトが明確に

EV(電気自動車)シフトが明確になってきたのは、これまでEVに対して保守的だったGM(General Motors)がバッテリの自社生産からプラットフォーム(車台)生産まで一貫して生産すると述べたこと(参考資料1)に加え、Teslaが2ケタの営業利益率を出せるようになってきたことも大きい。日産グループが電池生産能力を2030年度までに20倍に増強すると発表した。富士電機もSiC生産に乗り出す。

Tesla Motorsは、2020年度(12月期)にようやく黒字にこぎ着けたかと思うやいなや、2021年度通期では営業利益率が12.1%とトヨタ自動車を上回る結果を得るようになった。第4四半期だけだと14.7%とさらに高い。すなわち、利益率をもっと高めている方向になる。1月26日(現地時間)の発表では、2021年度の売上額は538億ドル(約6.18兆円)と売り上げ規模の大きなトヨタ(2021年度は30兆円を目標としている)と比べるとまだ1/5程度しかないが、稼ぐ力はすでにトヨタを凌いでいる。

Teslaは2019年度まで赤字続きで、量産能力がないと言われていた。しかし、2021年度は94万台を生産、さらに生産能力を上げている。2021年第4四半期に出荷した台数を年間換算すると122万台となり、すでに120万台以上の生産能力があることを示している。

Teslaがいずれ大きく成長するだろうということは、まだ赤字だった2017年にシリコンバレーの本社をチラ見した時に予感した。シリコンバレーで好調な会社を判別する方法は、オフィスへの来訪者のクルマの台数でわかると言われている。好調な会社の駐車場は満車で、不調な企業はガラガラという訳だ。2017年のTeslaの駐車場は100%以上の満車で、駐車場にはこれまで見たことのない交通整理の人間を配置していた。限られたスペースにクルマを止めるため、縦列に止める場所まであった。シリコンバレーの企業の中では異常なほどの来訪者数であった。


図1 TeslaのモデルSのプラットフォーム 筆者撮影

図1 TeslaのモデルSのプラットフォーム 筆者撮影


EVのカギを握る部品はバッテリとモーター、半導体である。特に技術的に遅れている電池に関心が集まっている。EV車はTeslaのModel S(図1)が先鞭をつけたように、バッテリモジュールを車台(床一面)に敷き詰める方式が今後の主流になることが明確になった。GMはCES 2022の基調講演の中で、「GMは自動車メーカーからプラットフォーマーになる」とメアリ・バーラCEOが述べたように、バッテリパックのプラットフォームこそが最重要な部品となる。

実は、日産グループやトヨタ自動車も全く同様の戦略を採ることを昨年暮れに公表していた。これまでの日産リーフ(EV)やトヨタのプリウス(PHEV)などはバッテリを後部座席の下に置いていたため、トランクルームは狭く使い心地が悪かった。これに対してTesla車のトランクルームは前も後もがら空きである。何でも乗せられる構造になっている。大きなゴルフバッグでさえ7〜8個は楽に乗せられる。

1月28日の日本経済新聞は、「日産自動車と仏ルノー、三菱自動車は27日、2030年度までに電池の生産能力を現在の20倍に高めると発表した」と報じた。日本やフランスなど世界の主要拠点で電池の工場も拡充し、30年度までに現在の20倍にあたるEV240万台分の電池を生産するとしており、日産は日本だけではなく英国と中国にも工場を新増設するという。

富士電機はEV応用を目指してSiCパワー半導体の量産時期を2024年度と従来よりも1年前倒しにする、と27日の日経が報じた。23年度までの5年間でパワー半導体に1900億円を投資するが、この額は当初より6割多い。

EV以外の話題では、データセンター向けにNECやNTTが伝送容量を4倍にする光ファイバの開発を進めている、と28日の日経が報じた。光ファイバは今やKDDIのような通信オペレータだけではなく、クラウドオペレータが強く求めている。日経は「Googleや米Meta(旧Facebook)から、海底ケーブルをさらに大容量化できないかとの要望をもらっている」というNECのコメントを掲載している。クラウド業者は世界各地にデータセンターを設置し、それらを光ファイバで接続している。例えばMicrosoftは、世界140ヵ国でクラウドを利用できるようにするため世界各地54カ所にデータセンターを設けている。

NECやNTTが推進する光ファイバは、1本のファイバに光を通すコアを4本設け、その周囲を屈折率の低いクラッド材料で囲むという構造を持つ。ファイバ1本で現状の4倍の80Tbpsのデータレートになる。この光ファイバを海底ケーブルには32本通すため、ケーブルには合計128本分の容量が搭載されることになる。クラウド業者がデータセンターの数を増やせば増やすほど光ファイバの需要は増える。利用する通信トラフィック量は増加する一方なので、光ファイバビジネスも成長する。

参考資料
1. 「EVカーでにぎわったCES 2022」、セミコンポータル (2022/01/11)

(2022/01/31)
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