EVカーでにぎわったCES 2022
2022年年明け早々、エレクトロニクス産業のニュースはCES 2022に集まった。1月5日から3日間ラスベガスで開催されたCESを1月10日に日経がまとめている。大きな動きはEVだ。GMが車台のプラットフォーマになると述べ、ソニーがEV事業に乗り出すことを発表した。
図1 CES 2022の基調講演でプラットフォーマとなると述べたGMのMary Barra CEO
日経報道を読む限り、CESはまるでモーターショーの様相を示していたようだ。実際、GM(General Motors)会長兼CEOのMary Barra氏による基調講演ビデオ(参考資料1)を見ると、「GMは自動車メーカーからプラットフォームイノベータに変わる」と述べており、そのための移動手段としてEV化を推し進める。テクノロジーソリューションを提供し、ビジネスモデルも大きく変えるという。基調講演の中でUltiumと名付けたEVのプラットフォームを今回発表した(図1)。EVのプラットフォームはスケーラビリティとフレキシビリティを重視、長い航続距離、急速充電、低コストを実現する。この基本的な車台プラットフォームで乗用車からトラックまでをカバーする。キャデラックからトラックまで、全て数種類の車台プラットフォームで賄うという戦略だ。
GMは、2040年までにカーボンニュートラルを実現、そのためのEVに350億ドルを投資する。世界中に30車種のEVを2025年までに用意し、またEVのトラックにも力を入れると述べた。2030年までに全車種の内、50%をEVにするという。また、2025年までにEVの充電施設に投資を行い、米国とカナダに充電施設を設ける。バッテリセルは自社で生産する。それも電気化学反応のバッテリセル開発から、バッテリモジュール、そして車台プラットフォームとなるUltiumへの実装まで垂直統合ビジネスとして力を入れる。
米国工場の電力は2025年までに再生可能エネルギーで賄い、世界中の工場でも2035年までにそれを実現する。今回の半導体不足からの教訓として、大手半導体メーカーと強固な関係を築き、確実なサプライチェーンを構築する。
ソニーはグループ内で22年春に事業会社「ソニーモビリティ株式会社」を設立し、EV事業に参入すると発表しており、7日の日経はその詳細を伝えている。ソニーはクルマの価値を移動からエンタメに変えるという。楽しむクルマとして、クルマ酔いを防ぐため、ノイズキャンセル技術を使いサスペンション制御を行うと報じているが、ノイズを打ち消し合うサスペンション制御は数十年前から多くのクルマに搭載されており、やや奇異な感じを持った。ただ、ソニーは半導体、ゲーム、音楽、映画だけではなく損保業界、金融業界にも手を伸ばしており、自動車ビジネスの周辺ビジネスのカバーもしっかりしている。
問題は人材である。米国のTeslaが単なるスタートアップとしてEVカーの生産を始めたのではなく、欧州や米国の自動車エンジニアだった人たちを大量に採用したことが成功した一因であったように、自動車のノウハウを熟知した人材を確保できるかどうかが成否のカギを握るだろう。
CES 2022ではGM以外にもVolvo CarやStellantis(旧仏PSAと伊Fiat Chrysler Automobilesの合弁会社)などの自動車OEMメーカーなどの新製品を発表している。もちろん、半導体メーカーの発表も多く、Samsung ElectronicsのCEO兼VPのJong-Hee Han氏や、QualcommのChristiano Amon氏の講演もあった。Amon氏はクルマの通信機能を強化することによって賢くなると述べている。VR/ARは5Gでクルマとつながり、4Gでストリーミングサービスが本格化したように、5GでAR/VRゴーグルを無線で使えるようになる。クルマが賢くクラウドと5Gでつながれば、渋滞情報をリアルタイムで得られる。クルマではデジタルシャーシーを提供するとAmon氏は述べている。
参考資料
1. General Motors Keynote,CES Keynotes