VolkswagenのEV投資、IntelのMobileyeのIPOなど車載ビジネスが急加速
日産自動車のEVへの2兆円投資に続き、Volkswagen(VW)も11兆円強(890億ユーロ)投資を打ち出した。車載エレクトロニクスではコネクテッドカーでの特許論争が起き、Intelは買収した車載向け画像処理ソフトウエアのMobileyeの上場を決めた。半導体を確保できたはずの国内自動車産業は10月の世界生産が25%減となった。半導体不足は当分解決しそうにない。
先週、日産の2026年度までの5年間で2兆円をEV開発に投資することを伝えたが(参考資料1)、ドイツのVWも同様に2022〜26年までの5年間で890億ユーロをEVなど次世代クルマ技術に投資すると12月11日の日本経済新聞が報じた。1年前の2021〜25年計画より22%積み増したことからもEV化の加速がわかる。この中でハイブリッドカーへの投資を3割減らし、EV向けを520億ユーロ(6.6兆円)と5割増やす。VWの主力工場であるウォルフブルグ工場で23年からEV車の組み立てをはじめ、24年に既存施設を改築して本格生産するという。
米特許会社Intellectual Ventures(IV)が10月19日付でトヨタ、ホンダ、米General Motors(GM)の3社を米テキサス州の連邦地方裁判所に提訴したと9日の日経が伝えた。今回、車載通信に関する10件以上の特許侵害だとして、車内でWi-Fiを使う際の通信方法や車載機器が外部通信網と接続しやすくなる技術などが対象だという。トヨタに対して少なくとも4件の特許が独Continental製部品を、ホンダに対しては4件の特許が米Qualcomm製部品をそれぞれ使っていることが権利侵害の原因だと主張している。
Intelが2017年に買収したイスラエルのMobileyeを2022年半ばに米国の株式取引市場に上場することを決めた。Mobileyeは、イメージセンサからの画像を処理したり、LiDARやレーダーからのイメージ情報をフュージョンしたりする技術に長けており、Intelが買収して以来、年間のチップ出荷数や従業員数は3倍近くになったという。画像センサからの画像を処理する技術は自動運転やADASには欠かせないため、今後伸びる分野として期待されている。
車載半導体は3〜4ヵ月分が確保されたという情報があり、半導体流通業界からも不足は続くが一段落したという声がある。しかし、10月における国内自動車メーカー8社の世界生産は前年同月比25%減の181万8000台だったと7日の日経産業新聞が報じた。ただ、9月は同35%減だったため、回復方向には向かっているとしている。半導体不足、東南アジアでの部品組み立て供給遅れによる減産だという。国内生産は40%減の48万1000台で、3カ月連続の前年同月割れになっている。
TSMCの日本工場は自動車向けとソニーのCMOSイメージセンサを念頭に入れたものだが、政府は6日、先端半導体の工場の新設や増設を支援する関連法改正案2本を閣議決定し、臨時国会に提出したと7日の日経が報じた。2021年度内の施行をめざしており、支援の対象はTSMCの新工場を含め「数件程度」を想定するとしている。
図1 横浜テクノロジーキャンパス技術開発新棟の完成予想図 出典:キオクシア
キオクシアは、NANDフラッシュメモリを生産する北上工場の第2製造棟(K2)の建設を2022年春に始める、と日刊工業新聞が報じた。23年稼働に向けて土地取得なども順調で、建屋の大きさは主力の四日市工場(三重県四日市市)を含めて同社最大規模になる見通しという。四日市工場でも新製造棟を建設中で、2期に分けた第1期分の完成は22年春を予定している。キオクシアは横浜テクノロジーキャンパスの技術開発新棟(図1)の起工式を行った。フラッシュメモリやSSDの研究・技術開発を強化する。竣工は23年夏を予定している。
半導体設計にAIをGoogleが使っていることを10日の日経が報じた。機械学習の一種で、教師なし学習である「強化学習」を利用して、レイアウト工程に導入しておりTPU(Tensor Processing Unit)を設計したという。強化学習は、試行錯誤的に行う学習の一種で、行動がうまく行く時に報酬を与え、その報酬を最大化することで学習させる手法。EDA最大手のSynopsysは、設計のタイミング検証やDRCホットスポットの予測などにAI(機械学習)を用いた設計ツールを2018年から発表しており、LSI設計にAIを使う動きは増えている。
参考資料
1. 「日産、EVへの2兆円投資、EVスタートアップとの競争の時代に」、セミコンポータル (2021/12/06)