セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

米国の対中貿易制限、華為からSMICへ拡大

|

米中貿易関係が一層厳しい状況になった。これまでZTEや華為科技(ファーウェイ)を攻撃してきていたが、中国トップのファウンドリ企業SMICに対しても米国製半導体製造装置の輸出制限に踏み切った。米国製半導体製品をSMICに輸出する場合に政府の許可が必要という形だが、事実上の禁輸である。

9月28日の日本経済新聞は「米商務省が中国のSMICに米国企業などが特定製品を輸出する場合に、事前に同省の許可を得るように求めている」と報じた。許可制にしたのは、SMICへの輸出は中国の軍事活動に使われるリスクがあるからだとしている。すでに米国からの措置で、米国製半導体製造装置で作られたIC製品は華為へ輸出できないとしていたため、TSMCは2020年5月に華為の子会社であるHiSiliconからの新規受注を取りやめていた。さらに、米国製半導体製造装置で作った他の半導体メーカーのICも9月16日から華為へ輸出できなくなっていた。このため、中国内で半導体製造を強化する目的で、SMICに政府系のファンドが2400億円を出資することが決まっていた。SMICはこの資金を含め、米国や日本の半導体製造装置を購入していた。日本および北米製の半導体製造装置がこれまでプラス成長で推移してきた要因の一つが中国市場だった。

SMICは台湾UMCとイスラエルのタワーセミコンダクターとの間にくる世界第5位の売り上げを誇るファウンドリ専門メーカーである(参考資料1)。華為は、最大手のファウンドリであるTSMCに代わり、SMICの育成に力を入れるつもりだった。SMICとしても7月に上海のハイテク株式市場に上場したばかりで、資金調達を推進していた。政府からの資金調達も含め、「今年に入って調達した資金は1兆円規模に達する」と28日の日経は報じている。

中国では半導体製造装置も自主開発で進める計画を持っている。この計画は今後さらに加速していくことになる。

しかし、半導体製造装置をゼロから製造することは容易ではない。半導体プロセスの知識(プラズマ物理や化学、マイクロ波電磁気学など)だけではなく、搬送系などのロボティクスや高度な機械技術、電子制御技術、コンピュータ技術、ソフトウエア技術など総合技術が必要だからである。中国ではこれまで簡単にお金が入るビジネスを最優先してきた。半導体分野に来る学生は少なく、テンセントやアリババなどインターネットサービスビジネスに就職する学生が多かった(SEMI China関係者談)。じっくり勉強して半導体技術を習得するというビジネスを嫌ってきたのである。そう簡単に学生たちは振り向かない。ここが中国半導体関係者の悩みだ。これに対して、台湾は全く違う。電子系学生の就職先として真っ先にTSMCを競い合うため、リクルーティングには苦労しないという(SEMI Taiwanの関係者談)。

SMICへの半導体製造装置の輸出規制は、日本の装置メーカーにとっても影響が出てくる恐れがある。SMICは14nmプロセスがようやく量産できるレベルになっており、28/32nmが先端的である。このため、東京エレクトロンやSCREENだけではなく、ニコンやキヤノンも露光装置の受注獲得に力を入れていた。特にここ数カ月間は中国特需が生まれており、日本製・北米製ともプラスに推移してきた。

米国政府は中国とは直接、戦争をするわけにはいかないため、企業を対象に「貿易戦争」を拡大しているが、やがてワッセナール協定のように包括的な対中政策を打ち出してくる可能性は高い。そうなると日本製の製造装置や半導体チップを中国へ出荷することができなくなる。

その備えとして、NANDフラッシュのキオクシアホールディングスは、10月6日に予定していた東京証券取引所への上場を延期し、株式の売り出しを中止することを本日28日に発表した。本日開催された取締役会で決議したという。表向きの理由は、「最近の株式市場の動向や新型コロナウイルス感染の再拡大への懸念など諸般の事情を総合的に勘案した」となっている。しかし、28日の日経は、キオクシアの発表に先んじてこのニュースを掲載し、「ファーウェイに対する米政府の取引規制で先行きへの不透明感が高まっているため」、と述べている。ファーウェイに対する半導体輸出規制が16日以降に行われ、ファーウェイ向けNANDフラッシュの売り上げが見込めなくなる。日経によると、キオクシアの連結売上額に占めるファーウェイ向けは数%で、スマートフォン向けフラッシュメモリの売上額は全体の約4割を占めるという。大部分はApple向けとみられる。

25日の別の日経報道によると、ファーウェイは自社のスマホと連携するスマートウォッチを発表した。しかし、同社のスマホはGoogleのアプリが使えず、日本市場での事業は困難を伴うだろう。

参考資料
1. ファウンドリメーカーの最新世界トップテン、TSMCは30%成長 (2020/06/12)

(2020/09/28)

月別アーカイブ

セミコンポータルはこんなサービスを提供します