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EUVビジネスをチャンスと見る日本のサプライヤーたち

EUVビジネスに向かう日本のサプライヤーが活発に動いている。ムーアの法則の限界が見えながらも微細化技術は、7nmから5nm、4nm、3nm、そして2nmへと刻みながらファウンドリが挑戦している。ギガフォトン、レーザーテック、AGCなどがEUVを支える。5Gがけん引、TSMCも投資を活発化する。台湾は対中投資を実質的に制限する。

TSMCが新竹サイエンスパーク内で新たに土地取得に向け交渉していると8月26日の日本経済新聞が報じた。新竹にある本社から約2km離れた土地で、現在建設中の施設「R1」の隣りだという。R1では2nmプロセスの研究開発を行う。新たな土地に4棟を建設する予定で、投資額は2兆円になる見込みだという。

ファウンドリビジネスでは、TSMCが圧倒しており、特に微細化プロセスではSamsungも手掛けているが、5nm以降では欠かせないEUV技術ではTSMCの独壇場のようだ。TSMCはEUVリソグラフィの唯一のメーカーであるASMLとぴったりと共同チームを組みEUV技術を磨いてきた。この点、Samsungは出遅れた。ただ、Samsungも懸命についていこうとしており、5nmから1nm刻みの微細化計画を発表している。

EUV技術では、小松製作所の関連会社であるギガフォトンが巻き返しを図り、出力330Wを目指した開発を進めている。8月31日の日経産業新聞によると、ASMLが2022年にも開発する次世代EUV製品では330Wの出力が求められるという。EUV光源は出力が高いほど露光時間を短縮してスループットを上げられるため、開発当初から高出力化を目指してきた。高出力の光源を安定して動作させることが実用化のカギとなる。22年ごろからの次世代機では1時間当たりのスループットは185枚/時となる。

ASMLは、光源メーカーであったCymer社を2013年に買収して以来、高出力化を掲げてきた。この結果、当初ギガフォトンの市場シェアが2016年に60%あったが2019年には45%に落ち込んでいた。次世代機の330Wへの挑戦でギガフォトンは巻き返しを図る。

EUVリソグラフィを一手に引き受けるASMLの2020年第2四半期の決算レポートによると、第1四半期の売り上げでEUV装置は2台だったのが第2四半期には7台となっている。ASML全体の売上額は前年同期比で30%増の33億2600万ユーロとなっており、第3四半期の見込みも21〜27%増の36〜38億ユーロと好調だ。ASMLは、現在の最新鋭機NXE:3400Cでさまざまな改良を加えており、光源部分をモジュラー方式のベッセル(真空容器)にして交換時間を短縮し8時間以内とした。加えて、光源に用いるスズの充填をインライン方式にしてやはり交換時間の短縮を図った。この結果、1時間当たりに処理できるスループットは従来機NXE:3400Bの125枚/時からNXE:3400Cでは170枚/時に増えた。

EUVリソ向けのマスク検査装置のトップメーカー、レーザーテックの資金回収期間が長引いている、と28日の日経が報じた。資金回収などの資金効率を示すCCC(cash conversion cycle)が従来の2倍と長期化しており、増収ペース以上に受注が増えて、現金化前の棚卸資産が膨らんだ。2020年6月期の連結売上額は前期比48%増の425億円、純利益は82%増の108億円だが、あまりの受注急増のため財務が痛んでいる。ただし、自己資本比率は47.9%あるため、今のところは将来に向けた、うれしい悲鳴ともいえる「成長痛」のようだ。

AGC(旧旭硝子)はEUVマスクブランクスの生産能力を2倍に増強する、と25日の日経産業が報じた。子会社のAGCエレクトロニクスに数百億円を投じ、建屋を拡張、新生産設備を導入し、2022年稼働を目指す。25年に売上額400億円以上、シェア50%を見込む。AGCのマスクブランクスのシェアは3割程度だという。この分野はHOYAが強い。

台湾が中国への投資の規制を実質的に強める。半導体設計などのハイテク企業が中国大陸で投資する場合には事前審査を義務付ける、と28日の日経が報じた。従来は事後の届け出だけですませていたが、今秋から技術移転にからむ全ての投資案件を対象とするという。米国が中国の華為(ファーウェイ)に米国の設計・製造装置技術が渡ることを遮断した措置を8月17日に発表したが(参考資料1)、これに台湾の蔡英文政権が歩調を合わせたといえそうだ。

参考資料
1. 米国、中国華為を完全封鎖へ、APUの中国輸出も事実上禁止 (2020/08/24)

(2020/08/31)
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