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日韓通商問題で、SamsungはTSMCに対して焦り

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先週、Samsungの2019年第2四半期の決算が発表されると共に、TSMCの業績も発表され、好対照だった。折しも日韓関係の悪化が政治から半導体通商問題へと焦点が移されるなか、Samsung対TSMCのライバル争いが激化しそうな勢いだ。

Samsungの業績は、連結売上額は56兆1300億ウォン(1ウォン=0.092円)、営業利益が6兆6000億ウォンとなった。このうち半導体部門は売上額が前年同期比27%減の16兆900億ウォンで、営業利益は71%減の3兆4000億ウォンとなった。Samsungはメモリ部門が圧倒的に強く、売り上げの9割がメモリだと見られている。8月1日の日本経済新聞は、システムLSIが半導体事業の営業利益に占める比率は5%弱のもようだ、と述べている。

この業績を見る限り、Samsungが世界一のシェアを握るDRAMやNANDフラッシュなどのメモリ単価の値下がりが止まらないまま来ていることがマイナス成長の最大の要因である。2017年、2018年のメモリバブルでは生産量をあまり増やさず単価の値上がり利益を増やしてきたツケが回ったと言える。ユーザーはメモリバブルの間、二重三重の発注によりメモリを確保し続けてきたため、在庫がたまりすぎた。今度は逆に単価が下がり始めたものの、歯止めがかからない状況だ。メモリユーザーからすれば、供給不足の時に生産量を増やさず値上げによって利益を貪っただけに、この値下がりは、「それ見たことか」と言わんばかりの状況が続いている。この第3四半期もDRAMは10〜15%値下がりするようだ(参考資料1)。

メモリ偏重を心配していたSamsung経営陣は、非メモリ部門の強化を叫んできたものの、「笛吹けど踊らず」状態が続いていた。メモリバブルがはじけたことでようやく非メモリ部門を強化し始めた(参考資料2)。同社は昨年、ファウンドリ事業を強化しており、事業本部として昇格させた。

Samsungと同様、メモリメーカー第2位のSK Hynixは、メモリ不況を乗り切るため、韓国仁川工場のDRAMラインM10 FABでのDRAM生産を中止し、CMOSセンサの生産へ19年後半から切り替えるという。DRAMの生産能力を減らし、CMOSイメージセンサ事業を強化し、ファウンドリには乗り出さない。

ところが、日韓通商問題で日本政府は、韓国をホワイト国から外し、輸出手続きが最長90日かかるように先週、議会決定した。半導体と有機ELに向けた3種類の化学薬品の一つEUVレジストは、これからSamsungが力を入れようとしているファウンドリビジネスで必要になる材料である。Samsungから見れば、フッ化水素は韓国国内でもすでに生産しているため、それほど深刻な問題ではないが、EUVレジストはファウンドリビジネスにとっては極めて重要な化学薬品となる。もちろんSamsung全体からすれば、まだ微々たる金額だが、これから力を入れていく戦略物質であり、しかもライバルTSMCにはその制限がないだけに深刻な問題となる。

片や、TSMCの6月の業績は上向いており、8月2日の日経産業新聞によれば、6月の売上額は前年同月比22%増の858億台湾元(1台湾元=3.4円)となった。TSMCは、「高価格帯のスマホや次世代高速通信規格『5G』向けの需要が旺盛だ」、「19年7〜9月期は直近の4〜6月期よりも良くなる」とのコメントを残したと報じている。2017年、18年とメモリバブルの恩恵を全く受けなかったTSMCだけに、ようやく本業での成長に戻ってきたことに強気になっている。

8月1日の日経は、「TSMCは2019年末までに、台湾で3000人以上の技術者を新規採用する。人工知能(AI)や次世代高速通信規格「5G」関連の半導体需要の開拓に向け積極投資を打ち出しており、併せて人員も増やす。韓国サムスン電子との激しい競争を勝ち抜く狙いだ」と報じている。TSMCはこれからのAIや5Gで半導体需要が旺盛になると見ている。ファウンドリビジネスでの勝算をつかんでいるようだ。


参考資料
1. DRAMの値下がりはQ3でも10〜15%マイナスが続く (2019/07/31)
2. 韓国でなかなか育たない非メモリビジネス事情(3)−巨額投資計画明らかに (2019/05/15)

(2019/08/05)

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