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パワー半導体が成長できる時代に来た

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パワー半導体市場が2020年からの飛躍に向け300mm工場設立、SiCやGaN-on-Siへの投資などが活発化している。ロームがEV(電気自動車)向け半導体を強化するためエンジニアを100名採用、東芝は安全なリチウムイオン電池SCiBが日産、三菱に採用された。また米中貿易戦争はじわじわと景況悪化へと進んでいる。

パワー半導体市場がようやく立ち上がる気配を見せている。Infineon Technologiesがドレスデンの300mmウェーハ工場に続き、オーストリアのフィラハにも300mm工場を設立すると表明し(参考資料1)、STMicroelectronicsも今年1月にイタリアのジェノバにパワー半導体向け300mm工場の建設をスタートした。さらに4月にはON SemiconductorがGlobalFoundriesの300mm工場を4億3000万ドルで買った。パワー半導体は300mm時代を迎える。

国内でもロームが次世代パワー半導体の開発を加速するため、今期中に100名採用する、と5月10日の日本経済新聞が報じた。中期計画で、車載半導体の売上比率を現状の3割強から5割に上げるという。新横浜にある車載関連のテクノロジーセンターを中心に、現在いる約100名の車載半導体エンジニアの数を倍増させる。その後も即戦力を集め、21年3月期以降も500〜100名のエンジニアを中途採用する計画だとしている。

東芝は安全なリチウムイオン電池であるSCiBがマイルドハイブリッド車に採用された、と5月7日に発表した。クルマのティア1サプライヤであるカルソニックカンセイの回生蓄電池システムに搭載され、それが日産自動車の「デイズ」、「デイズHighway STAR」と、三菱自動車工業の「eKクロス」「eKワゴン」の回生ブレーキに採用された。SCiBは出力電圧が3.1V程度と低いが、発火しにくい負極電極材料を用いたことで、より安全なリチウムイオン電池となっている。東芝もクルマ市場に積極的にこの電池を投入するため、現在の製造拠点である柏崎工場に加え、横浜事業所内にも製造工場を新設する計画だ。

米中貿易戦争の影響は、半導体ビジネスにも及ぼし始めている。中国で特殊DRAMを生産する予定だったJHICC(福建省晋華集成電路)では、東京ドーム8個分の敷地に建設した新しい巨大な工場が、もはやもぬけの殻になっていると13日の日経が報じた。JHICCはUMCからDRAM製造技術を導入したものの、MicronがDRAM技術の機密情報を中国に流したとしてUMCを訴えたため、UMCからの協力がもはや得られなくなった。UMCはJHICCに対して、距離を置くようになった。日経によると、2018年夏の量産準備に1000名いた従業員の大半が解雇された、と報じた。

米中貿易戦争は、ZTEへの米国製半導体チップの輸出禁止を行い、さらに華為科技に対してもCFOを逮捕するなど、厳しい態度を示してきた。これらの通信機器メーカーだけではなく、通信オペレータである中華移動(China Mobile)への米国への参入禁止を米連邦委員会で決議した。

特に2019年1〜3月期の欧米企業は2年半ぶりの減益となり、中国の景気減退の影響が各国企業に広がった結果だと、6日の日経は伝えている。この時点では米中貿易戦争の影響はまだ出ていないが、米国企業へはこれから影響が出てくるだろう。例えばIntelは、当初2019年の予想を1%減としていたが、1〜3月期の決算発表では、2.5%減の690億ドルとその見込み額を変えた。ただし、2019年の景気後退は一時的なもので、今後成長分野としてデータセンターに向けて注力し、AI(人工知能)、5G(第5世代の携帯通信)、自律システム(Autonomous System)を注力分野とする。全てデータセンターを絡む領域で、成長を図る。

参考資料
1. Infineon、強いパワー半導体で積極投資、2019年もプラス成長期待 (2019/03/27)

(2019/05/13)

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