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Infineon、強いパワー半導体で積極投資、2019年もプラス成長期待

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Infineon Technologiesが強いパワー半導体を戦略的な投資によってさらに強くする。オーストリアのフィラハ工場に2番目の300mmラインを導入、硬いSiCのインゴットから簡単にウェーハをカットできる技術を持つSiltectra社を買収、中国で電気自動車の製造・販売会社を合弁で設立するなど、クルマや産業向けに積極的に投資し未来を盤石にする。

Infineonはドイツのドレスデン市にパワー半導体の300mm工場を持っているが、2021年には生産能力が満杯になると見ている。このためフィラハに新設予定の300mm工場は2021年にクリーンルームを完成させラインを稼働できるように今から300mmライン新設に16億ユーロを投資する。この工場はこの拡張により年間18億ユーロの売り上げを見込めるようになるという。また、300mmラインとして、社内のセカンドソースとしての役割も持つ。


図1 インフィニオンテクノロジーズジャパン代表取締役の川崎郁也氏

図1 インフィニオンテクノロジーズジャパン代表取締役の川崎郁也氏


Infineonは2014年度から2018年度(年度は10月から翌年9月まで)までの5年間、着実に増収増益を続けてきた。利益率も14.4%から18年度は17.8%まで少しずつ上げてきた。日本のインフィニオンテクノロジーズジャパンの売上額も過去8年間年率平均(CAGR)12%で成長してきており、特に2018年は15%成長を果たした。2019年度も昨年を上回る数字を期待している、とインフィニオンジャパンの代表取締役社長の川崎郁也氏(図1)は言う。Infineonはメモリを手掛けていないため、2017年、18年とメモリバブルの恩恵には与れなかったものの、その反動が来る2019年はメモリメーカーとは違い、成長を期待しており、着実に成長する道を歩んでいる。

インフィニオンジャパンは、Infineon全社売上額に対して7%しかまだない。これは外資系半導体メーカーによくみられる傾向で、日本でデザインインしても売り上げが大きい量産は海外であるため、どうしても全社売り上げに対する日本法人の売り上げはせいぜい10%未満のところが多い。しかし、この事情を本社に説得できるかどうかが日本法人社長の腕にかかっている。インフィニオンジャパンには200名の従業員がおり、トヨタ系のティア1サプライヤであるデンソーや、ホンダ系のケイヒンなど重要な顧客とパートナーを持つ(図2)。そのプレゼンスは徐々に高まっており、製造に関しても日本のサプライヤ約20社から製造装置やウェーハなどを年間400億円ほど購入している。昨年10月には技術開発拠点となる「東京テクノロジーセンター」を新設し、これまでの品質管理に加え、ADASや産業用モータ制御技術の開発も行う。

図2 Infineonの日本の顧客やパートナー

図2 Infineonの日本の顧客やパートナー


Infineonの強みは何と言ってもパワー半導体。ディスクリートだけではなく、ドライバICやIGBTモジュール、パワーICであるIPM(Integrated Power Module)でも世界の頂点に立っている(図3)。このパワーICをより強くするため、冒頭で述べた積極的に投資する。パワー半導体のこれからの市場はやはりクルマ。車載分野では、NXP Semiconductorに続き2位であるが、もちろんトップを狙う。


2017念にはパワー半導体市場のリーダーとしての位置付けをさらに強化

図3 Infineonはパワー半導体の4つの市場でいずれもトップ 出典:Infineon Technologies


パワー半導体で世界を制するほど強いのは、Cool MOSと呼ばれる熱効率の良いパワーMOSFETやIGBT(Integrated Gate Bipolar Transistor)、GaN on Si、SiCと、耐圧、電流容量でさまざまな製品を揃えているためだ。しかも面積の大きなパワー半導体を大量に使う場合にコスト的に有利な300mmラインを揃えている。これまで、パワー半導体の市場規模はそれほど大きくはなく、300mmラインを持つ半導体メーカーはInfineonだけである。

ところが、2021年ごろからSiCやGaN on Siなどの高効率なパワートランジスタが世界的に立ち上がりそうになっている。いわゆるEV化だ。EVは従来の内燃エンジン車と比べ半導体消費量が2倍にもなり、半導体のコストは内燃エンジンでは1台当たり370ドルだが、EVになると750ドルになるという予想がある。また、中国のように国を挙げてEV化を進めている国では合弁会社を作り、促進していく。欧州でも、ドイツポストDHL社は、8000台のEV商用車を使っており、Volkswagenは2020年以降に最大航続距離550kmのEV社を発売する予定である。

さらに太陽光発電機や風力発電機には直流から交流への変換装置にIGBTが使われ、さらにEVの充電ステーションでは、200kmの走行に必要な電力をわずか7分で充電できる350kWの急速充電ステーションにもパワー半導体が使われる。ロボットの手足を動かすのにもパワー半導体が必要で、AI(人工知能)搭載の協働ロボット開発も始まっている。パワー半導体の市場は、広がっているようだ。

SiC半導体の市場規模として、2016年から2021年までの5年間は、CAGR20%で成長するが、2025年までの10年間は23%で成長すると、市場調査会社のIHSは予想する(図4)。この成長加速に備えて、SiCの製造ラインを全て6インチ化に向かう。また、Siltectra社を買収したことで、極めて硬いSiCインゴットからウェーハを切り出したり、プロセス処理の済んだウェーハを薄くグラインド研磨したりする場合に威力を発揮するCold Split技術が入手可能になり、SiCの処理時間を短縮するのに有効だ。SiC結晶メーカーは持っていないが、複数の結晶メーカーと調達契約を結び、サプライチェーンを確保した。


SiCソリューションを採用するアプリケーションがますます拡大

図4 SiCパワー半導体の市場拡大予想 出典:IHS Markit


東京テクノロジーセンターでは、iMOTIONと呼ばれるマイコンを組み込んだ電力変換装置にソフトウエアでカスタム化を図るほか、レーダーの開発、不良解析と品質保証も行う。4月から本格化させ、システムレベルの顧客へのソリューション提供をはじめ、研究開発の日本の窓口となり、デザインインを獲得し、顧客との深い関係を構築する。

(2019/03/27)

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