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令和時代はAIと5Gから未来へ

長いゴールデンウィークが終わり、元号が平成から令和に変わった。この間大きなニュースは少なく、令和という時代に対する期待の声を取材した記事が多かった。半導体産業はIT業界がその技術をけん引するため、IT業界の動向が未来の半導体ビジネスを左右する。気になったニュースはやはりAIと5Gである。

AIは今のところ、画像認識や音声認識を始めとするパターン認識技術の認識率を上げるのに適しており、その中核技術は機械学習・ディープラーニングである。さらにその学習アルゴリズムの中核となるのがニューラルネットワークのモデルだ。神経細胞の機能をまねたパーセプトロン(多入力・1出力の演算器)を1ニューロンとして並列に多数、さらにレイヤーとして次のニューロンにたどり着くというニューラルネットワークをモデルとする。

AIは、音声認識を利用するスマートスピーカー、画像認識を利用する医療画像からのガンなど疾患の検出や、自動運転での人やクルマの検出、産業機器では外観検査装置への応用で製品の傷や汚れの検出にも使われている。5月1日の日経産業新聞では、AIスタートアップのエクサウィザーズ社の石山洸社長とのインタビュー記事が掲載されている。同社はAIを使って社会問題を解決する、というミッションを持つ。医療画像での疾患検出や医薬品開発のための特徴抽出と学習を使っていたが、この記事では、認知症患者との目線の合わせ方をはじめとするさまざまな細かいケア手法をAIに学習させ介護支援に生かす、という応用について述べている。

5月1日の日刊工業新聞は、ロボットにAIを採用した実例を3件紹介した。ファナックは、プリファードネットワークスと共同で、部品の組付け状態をマシンビジョンで良否判定するシステムを開発した。三菱電機は、ロボットが対象物に加える力を抑制しながら人手に近い繊細な作業をAIに覚え込ませ、高速に作業できるようにした。コネクタの挿入作業に適用したところ、人手による作業と比べ、タクトタイムが60%短縮したという。川崎重工業は、ロボットの遠隔作業を繰り返し覚え込ませ、塗装工程に導入するとしている。

5Gでは、連休前に報じたように(参考資料1)、AppleがiPhoneへの5G対応を急ぐため、Qualcommとの論争に終止符を打った。5月2日の日本経済新聞は、Appleの業績を報道し、1〜3月期も前四半期と同様、前年同期比で減収減益になったものの、CEOであるTim Cook氏は、ポジティブに捉えている。減収減益の要因は中国での売り上げで、今期は22%減となったが、前期2018年10〜12月期は27%減だったため回復の兆しが見えたという評価のようだ。この間、為替の実態に合わせて端末の価格を改定したり、古い端末の買い取りサービスを行ったりしてきた。

Appleの製品ポートフォリオでは、iPhoneやiPadの販売はあまり芳しくないものの、アップル・ミュージックやアプリ配信などサービス部門の成長力が強く、売上高は16%増の114億5000万ドルと、市場予想(113億ドル前後)を上回ったとしている。定額課金型サービスの加入者数は、1年前から1億2000万人増えて3億9000万人に達したという。19年秋には定額制の動画配信「アップルTV+」やゲーム配信「アップルアーケード」などの新サービスを米国内外で始めるなど、Appleへの期待が大きいといえる。

iPhoneでAppleのライバルといえるSamsungは、対照的に1〜3月期の決算では、半導体、ディスプレイ、スマートフォンの3つがマイナス成長で「総崩れ」、と5月1日の日経は表現した。ディスプレイ部門が赤字で、半導体とスマホが4割以上の減益だという。半導体部門は4〜6月期も厳しいと見ている。

参考資料
1. Apple-Qualcomm和解で見える、Appleのチップ独自開発の基準はひと (2019/04/17)

(2019/05/07)
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