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IoTビジネスに向けた提携・コンソーシアムが活発

IoTビジネスが着実に進行している。IoTに内蔵するセンサとしてビデオカメラを使う例が出てきた。三菱電機とNTTコミュニケーションズが共同で、監視カメラを使い映像解析をクラウドで行い、そのデータ解析結果を防犯や販促に活かすサービスで協力する。IoT専用のNB-IoT規格も3GPPのスケジュールに載った。IoTコンソーシアムも続々誕生した。

3月4日の日経産業新聞によると、三菱電機とNTTコムは「時系列ディープラーニング」と呼ぶ手法を用いて人の動きの特徴を割り出し、防犯や販促に活かす。防犯ではキョロキョロ見渡したり物を店に置いたりする挙動不審な行動をカメラが見つけると、それを解析し、店員や警備員に知らせることができる。急病人もわかる。販促では、来店客が手に取った商品、値札を見る動きなどから、商品を手にしながら買わなかった理由を分析する。2016年度前半に実証実験を行い、後半にサービスを開始するという。警備員が防犯カメラをずっと見ている必要がなく、負担を減らしながら防犯を推進できる。

監視カメラ自身の性能を上げる試みも行われている。7日の日経産業の報道だが、ソニーは、従来モデルよりも15倍以上照度の高いネットワークカメラを8月に発売する。交通監視や災害など夜間や暗闇の監視用途を見込む。この監視カメラの価格は85万円程度と高い。

民生用のカメラでは、リコーイメージング社の商品名「リコー・シータ」が360度撮影できるということで、仲間同士で盛り上がり、ヒット商品となっている。7日の日経産業が報じたもので、リコーは15年10月に新モデルを出し、マスプロ電工が国内販売を手掛ける米JKイメージング、中国のDJI社の製品も国内市場に入ってきた。その他、ニコンやSamsungも360度カメラを公開したとしている。

IoTは単にインターネットにつなげるだけではない。インターネットにデータを上げ、クラウドでデータを解析、所望の結果をフィードバックして、工場なら生産性を上げる、店舗なら売り上げを伸ばす、新製品の販促に活かす、などビジネス効率を上げることが最大の狙いであり目的である。このため、IoT端末だけではなく、ゲートウェイ、クラウド、データ解析、アプリケーションソフト開発など、システムとして捉える必要がある。このため、コンソーシアムを組んでIoT端末のサプライチェーンから最終ユーザーまで一連のパートナーシップを構成する必要がある。必要なら標準化も行う。

セミコンポータルですでに報道したように(参考資料1)、Microsoftと東京エレクトロンデバイスが音頭を取って立ち上げた「IoTビジネス共創ラボ」や、「コグニティブ・イノベーションセンター」などがある。さらに、「Open Connectivity Foundation」、「Allseen Alliance」などが出来ている。OCFには、Microsoft、Cisco、Electrolux、General Electric、Intel、Qualcomm、Samsung、ARRIS、CableLabsが参加しており、AllseenにはQualcommやMicrosoft、Electroluxなどが入っている。これらを見て気づくが、これらのコンソーシアムには掛け持ちしているメンバーも多い。つまり、今は主導権争いの段階ではなく、どのコンソーシアムが自社のビジネスにとって有効なのかを見極める段階で、Microsoft AzureやPTCのThingWorxなどのソフトウエアプラットフォームがなければ、アプリケーションを開発しにくい。だからこそ、データ解析やソフトウエアプラットフォームなどを手掛ける仲間作りが今は最優先で、コンソーシアムに入らなければまず、IoTビジネスは成功しないといえる。

通信規格でもIoT専用の規格が提案されている。特にセンサネットワークなどで見られるようにデータをセンサからセンサへ送り最後にゲートウェイからインターネットに上げるメッシュネットワークトポロジーを使うのではなく、低データレート(せいぜい数kbps)・低消費電力でモバイルネットワークに上げる用途が望まれている。これまではEricssonが提案していたLPWA(Low-Power Wide Area)ネットワーク規格があったが、これはモバイルネットワークを使わない、独自ネットワーク規格だった。そこで、モバイルネットワークの最大の組織である3GPP(Third Generation Partnership Project)がNB-IoT規格をバルセロナで開催されたMWC(Mobile World Congress)で正式に提案した。

NB(Narrow Band)-IoTは早ければ2017年には商用化される。この規格は、電力・水道・ガスのようなメーターのデータを送るのに最適化されており、LTE規格の一部として扱われる。特に低消費電力性がマストで、バッテリ寿命は3〜20年が求められる。1接続当たりの運用コストTCOも10%程度と言われている。

参考資料
1. IoTを速くビジネスにするコンソーシアム続出 (2016/02/19)

(2016/03/07)
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