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IoTを早くビジネスにするコンソーシアム続出

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IoTビジネスをいち早く立ち上げるためには、クラウドとの連携が欠かせない。クラウドプラットフォームを提供する業者を取り巻くコンソーシアムの発表が相次いでいる。Microsoftと東京エレクトロンが主導する「IoTビジネス共創ラボ」(図1)、IBMと国立情報学研究所が組む「コグニティブ・イノベーションセンター」、アナログデバイセズは、PTCの子会社のThingWorxと組んだ。半導体メーカーはどこかと組まなければIoT実現は遅れる。

図1 Microsoftと東京エレクトロンデバイスが共同で立ち上げたIoTコンソーシアム「IoTビジネス共創ラボ」

図1 Microsoftと東京エレクトロンデバイスが共同で立ち上げたIoTコンソーシアム「IoTビジネス共創ラボ」


2月15日に、日本IBMが大学共同利用機関法人の情報・システム研究機構である国立情報学研究所に新しい研究センター「コグニティブ・イノベーションセンター」を新設発表した(図2)のは、人工知能ともいうべきコグニティブコンピュータをサービス提供する狙いがあった。これは文部科学省からの予算はゼロだが、日本IBMが全面バックアップするという研究センターである。国家予算を使わないため、当面3年間の予定だが、途中でテーマを変えることができる上に、さらに延長することもできる。コグニティブとは認知能力のある、という意味だ。あいまいな人工知能という言葉ではなく、コグニティブコンピューティングという言葉をIBMは好んで使うのは定義が明確だからである。彼らが定義するコグニティブコンピューティングは、インターネットを通じて日々生まれてくる膨大なデータを理解し、人間の言葉を理解・推論し、学習するコンピュータシステム技術である。


図2 日本IBMが国立情報学研究所に「コグニティブ・イノベーションセンター」を設立 日本IBM取締役専務執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業本部長のキャメロン・アート氏(左)、国立情報学研究所所長の喜連川優氏(中央)、コグニティブ・イノベーションセンター長の石塚満氏(右)

図2 日本IBMが国立情報学研究所に「コグニティブ・イノベーションセンター」を設立 日本IBM取締役専務執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業本部長のキャメロン・アート氏(左)、国立情報学研究所所長の喜連川優氏(中央)、コグニティブ・イノベーションセンター長の石塚満氏(右)


一方、IoT端末や半導体チップなどのハードウエアを開発する企業にとっては、顧客の利用形態を知らなくては製品を売ることができない。IoTからインターネットを通してクラウドに上げ、そこでIoTからの膨大なビッグデータを解析し、顧客の望む形で回答することがIoTシステムの本質である。IoTシステムの顧客は、売り上げを増やしたり、生産性を高めたり、新規顧客を開拓したりすることができるようになる。だからこそ、クラウド上でデータ解析に至るまでのソフトウエア開発やツール開発をクラウド上のプラットフォームが必要なのである。

コグニティブコンピュータは、ディープラーニングや膨大なデータ解析するのに向いている。IBMのコグニティブコンピュータWatsonは、数百万、数千万という薬品の組み合わせから最適な候補を選んだり、毎日提供される膨大な医薬文献から最適な文献を必要な数件だけに絞って選んだりできる。ウェブページでは毎日、膨大な情報が掲載されているが、必要な情報を選び取ることは容易ではない。Watsonはこういった状況に威力を発揮する。

しかし、これまでWatsonは英語版しかなかった。18日、ソフトバンクと共同で発表したのは日本語版のAPIを6種類、揃えたことだ。これによって、音声認識・合成、日本語の理解・分類、対話、検索およびランク付け、文書変換などの機能を日本語ベースでプログラム、実行できるようになった。

加えて、IBMはクラウド上でアプリケーションソフトウエアを作成・管理・実行するためのプラットフォーム「IBM Bluemix」というPaaS(Platform as a Service)ビジネスも持っている。

Microsoftも同様のPaaSビジネスを行っており、「Microsoft Azure」というプラットフォーム上でアプリを作成・管理・実行できる。MicrosoftはIoT端末を扱う商社の東京エレクトロンデバイスと一緒にコンソーシアム「IoTビジネス共創ラボ」を立ち上げた。このコンソーシアムを通して、東京エレクトロンデバイスはIntelをはじめとする半導体メーカーの製品やモジュール製品を提供するが、ここに半導体メーカーが参加できる。Azure上でアプリを作り、それを管理し、そのサービスを実行できる。ソフトを作る企業やコンサルティングを行う企業など10社が参加している。

半導体メーカー1社がIoTビジネスを早く立ち上げようとしているのがAnalog Devicesだ(参考資料1)。ただ、ADIがThingWorxと組み、クラウドのプラットフォームを使えるように共創したのは2015年の10月。当時はまだ、「コグニティブ・イノベーションセンター」や「IoTビジネス共創ラボ」コンソーシアムは出来ていなかった。ようやくこういったコンソーシアムができた以上、半導体メーカーが独自にPaaS企業と組むか、コンソーシアムを利用するか、もはや待ったなしの状況だ。独自のPaaS企業と組む場合はソフト開発企業やコンサルとも組む必要性はある。さっさと決断する方がIoTビジネスを早く立ち上げることができるようになる。

参考資料
1. 絶好調アナデバの2016年戦略、やはりIoTと5G (2016/02/18)

(2016/02/19)

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