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伸びた企業、伸び悩んだ企業、経営戦略が問われる時代に

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半導体関連企業の決算報告や発表などから、現状と今後の見通しが見えてきた。シリコンウェーハの数量は少なくとも増加しており、半導体IC産業は上向いている。これに向け積極的に投資する企業が出てきている。しかし、企業によって伸びなかった所もあり、ビジネス機会を捉えたかどうか、個々の企業の経営戦略が問われる時代になっている。

シリコンウェーハ最大手の信越化学工業が2016年1月28日に発表した2015年4〜12月期の連結決算(累計)は、営業利益が前年同期比16%増の1624億円、売上額が同5%増の9759億1400万円となった。特に半導体シリコン事業は、売上額が同11.7%増の1886億6500万円、営業利益が同42.8%増の373億6400万円と好調だった。4〜9月期の伸びは売り上げが同13.2%、営業利益が66.1%と比べると、やや減速気味ではあったが、第3四半期は売上額625億6500万円、営業利益が103億3200万円だったことになる。10〜12月期は上向いてきていると考えてよい。

半導体の業績を大きく左右した製品はDRAM。これが値下がりしたことはパソコンやスマホ市場が期待よりも下回り、7〜9月期は半導体全体が下降していった。1月26日の日本経済新聞によると、2015年12月のDRAM価格は対前月比5%下がり4GビットDDR3 DRAMの単価は1.9〜2.1ドルになった。この1年でDRAM単価は約半値になった。29日の日経はサムスンの半導体部門の営業利益が10〜12月期に約2800億円となり7〜9月期に比べ23%減り、前年同期比でも4%増の小幅にとどまったと伝えた。

しかし28日の日経ではパソコン向け同製品のスポット価格は1.95ドル前後と2015年末に比べ0.02ドル程度高まったと伝えている。同紙は値下がり傾向が続くと報じているが、下げ幅はようやく底に来たと考えるべきではないだろうか。半導体デバイスの景況指標となっているテスター事業のトップメーカー、アドバンテストの業績は、売上額こそ10〜12月期に7〜9月期の464億円から299億円へと急速に落ちたものの、受注額は7〜9月期の271億円から10〜12月期には398億円と大きく伸ばしている。アドバンテストは非メモリの売り上げ(10〜12月期222億円)の方がメモリの売り上げ(同41億円)よりもはるかに大きいため、DRAMだけの景況ではないといえるだろう。

日立国際電気が27日発表した4〜12月期の連結決算では純利益が前年同期比29%増の87億円であり、顧客である半導体メーカーの投資拡大により伸びた。

これからの回復期に向けて攻めの姿勢が目立つ。ソニーは2015年度に画像センサなどの半導体事業全体で2900億円を投資する計画で、2016年9月には現在の月産6万8000枚の生産能力から8万7000枚に増強する、と26日の日経地方版が報じた。ここには東芝の大分工場買収分は含んでいない。ソニーはさらにLTEモデム専門のイスラエルのファブレスメーカーAltairを買収すると発表した。Altairのモデムチップは、ソフトウエア無線とハードワイヤードロジックをうまく使い分け、消費電力を下げているのが特長だ。セミコンポータルでも2013年にAltairと電話インタビューを行い、その実情を報じた(参考資料1)。

半導体洗浄のトップメーカーSCREENは製造装置の保守管理サービスを強化する。中国で納入した装置の回収や消耗部品の交換などは日本からエンジニアを派遣していたが、このサービス収入を上げるため中国で人材を育成する、と28日の日経産業新聞が報じた。2016年3月期の販売後収入を連結売上額の2割になる50億円を見込むが、2017年3月期には3割まで高める方針だ。

ON Semiconductorが生産の主力工場と位置付けている旧新潟三洋電機の工場の生産能力を2015年に10%引き上げたが、さらに富士通セミコンダクターとの合弁の会津富士通セミコンダクターマニュファクチュアリングの生産能力も2倍の1万5000枚/月に引き上げる、と28日の日刊工業が報じた。15年に車載用画像センサを核に周辺の半導体製品の売り込みに成功したとしている。今後は工場の生産性を上げる工業用IoTで需要を採り込んでいくと狙う。

マイコン周辺機器のミナトホールディングスは、8000万円を投じてクリーンルームを新設、ROM書き込みセンターを開設した。これにより月産40万個のプログラムサービスを100万個/月に引き上げる。ガス・水道メーターの電子化などでマイコンやNANDフラッシュのプログラム受注が増えており、これに対応したものという。

一方で、韓国のSKハイニクスはメモリ価格の下落で10〜12月期の純利益が前年同期の46%も減少した、と27日の日経産業が報じた。日立ハイテクノロジーズは4〜12月期は純利益が前年同期比13%伸びたが、半導体製造装置は不振だったとしている。また、2月1日の日刊工業によると、富士通もネットワーク関連と、半導体・電子部品が不調により、2016年3月期の連結見通しを、2015年10月時点よりも800億円減の4兆8000億円、営業利益は同200億円減の1300億円になるとした。半導体が伸び始めた時期に不振の企業は、経営戦略の見直しを迫られている。

参考資料
1. イスラエルAltair、ソフトウエア無線とハードのコンビでクアルコムと競争 (2013/04/17)

(2016/01/21)

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