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ON SemiがFairchildを買収、パワー半導体2位を狙う

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半導体産業の再編は止まらない。先週は、シリコン半導体の創始企業ともいうべきFairchild Semicondutorを、ON semiconductorが買収するというニュースが入った。世界の半導体産業のM&Aに関しては、11月4日に報道したばかり。先週はET/IoT総合技術展があったためIoT関連のニュースも多かった。

元Motorolaの半導体部門から独立したFreescale SemiconductorとON Semiconductorだが、FreescaleはNXPに買収される予定であり、ON SemiはFairchildを買う側に回った。ON Semiが発表した資料によると、Fairchildを1株当たり20米ドル、総額24億ドルの現金で買収することで両社合意に達した。合併終了後の18カ月以内には年間1億5000万ドルのコスト削減になるとしている。

Fairchildは、トランジスタを発明した研究者の一人Shockleyが設立した半導体研究所を飛び出したRobert NoyceやGordon Moore(ムーアの法則で知られる)などが設立した半導体の老舗企業である。ムーアの法則は、Intel入社前にGordon Moore氏が1965年のFairchild時代に打ち出した概念だ。Fairchildは最近では高・中電力のパワー半導体やパワーマネジメントICなどを中心とする製品ポートフォリオを持っている。その売り上げ規模は2014年度14億ドル、従業員は6600人という小規模な半導体メーカーになっていた。今月初めにはSTMicroelectronicsがFairchild買収を準備しているという噂もあった(参考資料1)。

このほど買収するON Semiconductorは、Motorolaからディスクリートを中心にスピンオフした後、成長のエンジンとなる製品を強化するため買収を繰り返し、2014年度32億ドルまで成長してきた。2010年には三洋半導体も買収し、三洋のIPM(インテリジェントパワーモジュール)などのパワー半導体ICパッケージ技術も手に入れた。さらに旧三洋半導体工場を全社のファウンドリとして使っており、ファウンドリサービスを一般市場にも開放している。ON Semiは、小電力のパワー半導体を扱っているが、Fairchildを手に入れることで、高・中・小電力のパワー半導体の製品ポートフォリオを拡大できる。これにより、パワー半導体でInfineonに次ぐ地位を築けると見ている。

国内でも電子部品商社の加賀電子と、ソニー系の半導体商社であるUKCが経営統合で合意した、と11月19日の日本経済新聞が報じた。半導体商社業界でも経営統合が進んでおり、4月にはマクニカと富士ホールディングスが合併したばかり。半導体商社は、インターネットを利用するDigi-keyやチップワンストップ、RS Componentsに加え、今年Mouser Electronicsも国内市場に参入した。企業系半導体商社の生き残りへの再編が加速している。

2015年から「ET/IoT総合技術展」と名称を変えた展示会が11月18〜20日に渡って開催された。これまでは組み込み技術(ET)展と呼ばれていたが、組み込み技術に通信機能を設けたデバイスがIoT端末であるから、この名称変更は自然な流れといえよう。

日経産業新聞が19日にこの展示会からIoT関係の製品やサービスなどをレポートした。NEC通信システムは橋梁での応用として、橋の上を走る列車からセンサ信号を受け取るという利用を想定し消費電力を1/100に削減する技術を示し、ロームが農業や防災分野での応用を狙い土壌のpHや水分量、温度を測定するセンサを出展した。ロームは5mm角のICに3種類のセンサを集積しており、これまで高価だったpHセンサの価格を劇的に下げられることを狙っている。

日刊工業新聞は19日に、IoTで生産革新や事業拡大、と題した記事を掲載、Industry 4.0を国内でも始めたという動きを紹介している。IoTを使って生産性の向上、予防保全などの応用を想定しているが、なぜか、Industry 4.0ともIndustrial Internetとも言っていない。オムロンが生産ラインにCPUを導入、生産機械からの各種のデータを集めるIoTゲートウェイとしての制御コントローラを発表した、と20日の日経産業は報じている。

IntelもIoT関係で他社と連携したエコシステムの重要性を強調したと18日の日経産業が報じた。Intelは、IoTシステムの中でゲートウェイから上位のレイヤーを狙うとIoT事業部を開設したばかりの頃は言っていたが、最近の動きはエッジコンピューティングからIoT端末までも狙っているように見える。IoTビジネスの競争は激しさを見せている。


参考資料
1. 今度はTIがMaximに、STがFairchildに買収提案? (2015/11/04)
2. 旧三洋半導体部門、ON Semiに買収され海外売り上げを急増 (2014/12/11)

(2015/11/24)

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