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電子部品メーカーが実力を示したCEATEC

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先週はじめには、ノーベル物理学賞と医学・生理学賞に梶田隆章氏と、大村智氏がそれぞれ日を替えて、選ばれた。さらに週の後半にはCEATEC 2015が幕張メッセで開かれ、電子部品メーカーの実力が示された。

エレクトロニクスに関係が比較的深いノーベル物理学賞は、今年は素粒子物理学においてニュートリノに質量があることを証明した梶田氏に送られた。現代物理学は大きく分けて、素粒子物理学と物性物理学に分けられるが、昨年は物性の青色LED、一昨年の2013年は素粒子のヒッグス粒子の発見、2012年が量子コンピュータにつながる光子の制御が受賞の研究となった。この順番なら来年は物性物理学の分野がもらうようになるかもしれない。

CEATEC 2015では、民生用エレクトロニクスの話題が新聞紙上から少なくなったが、実際に会場に行ってみるとその通りであった(参考資料1)。これまで1〜8号館の展示スペースがあったが、今年は1〜6号館に留まり、昨年の自動運転車の実験スペースはなく、トヨタ自動車や日産自動車も参加しなくなった。通信オペレータはNTTドコモやKDDIは出展せず、中国の華為技術(ファーウェイ)だけが派手なブースを占めていた。民生機器では、ソニー、東芝、パイオニアなどが参加しなかった。半導体メーカーはもはや数年前からローム以外は出展しなくなった。今年は、常連のロームに加え、パナソニックと富士通セミコンダクターの合弁のソシオネクストが出展した。

ブースが大きく、好調さを伺わせると同時に展示ブースでの人だかりが多かったのは、電子部品メーカーだった。参考資料1で報じたように、太陽誘電、ミツミ電機、村田製作所、TDK、アルプス電気に続き、ロームとソシオネクストの半導体メーカーにも人だかりが多く、しかも来場者の質問も多かった。

CEATECに出展した電子部品各社は、顧客がIoT製品を開発するのにあたって周辺技術も含め支援していると、10月7日の日刊工業新聞が報じた。不思議なことに、CEATECで発表したとは書かれていないが、各社がセンサとIoTに力を入れていたことは事実である。また、同じ日に日本経済新聞が、CEATECが開催されるというニュースを掲載したが、これはブースが未完成のまま、メディアに前日公開したことに基づいている。日経は、シャープとパナソニックを採り上げたが、出展企業全てのブースが完成しておらず、発表できる体制の整った企業しか報じることができなかった。このため、見方に偏りがあることはやむを得ない。

日経産業新聞は、8日CEATECでのニュースとして、代表的な電子部品企業2社を採り上げた。村田製作所の眼鏡型端末の耳上に取り付けた操作ボタンをデモした。このボタンを右か左に動かすことで、テレビに映し出されているアイコンを指示する。この操作ボタンは1回転当たり6つの状態を変えることのできる、一種の超小型ロータリエンコーダである(参考資料1)。

8日の日経産業は、ムラタの子会社である金沢村田製作所が生産工場棟を新たに建設すると報じた。スマートフォン用通信のSAWフィルタやセンサなどを生産するとしている。投資額は120億円。来年9月に完成予定。今年度から5年間で300名を新たに雇用するとしている。

9日の日経によると、ソニーがベルギーの画像処理ベンチャーSoftKinetic を買収したと発表した。SoftKineticは、ユーザーエクスペリエンス(UX)専門のベンチャーで、3次元映像やジェスチャーコントロール、コンテキストアウェアネスを利用したUXを生み出す設計企業。楽しさにどっぷりつかったような体験(immersive experiences)を提供するとしている。製品としては、光の反射を利用して対象物との距離を測り、3次元映像や対象物の大きさや形、動きなどを認識するのにも使える「技術」である。半導体メーカーなどにライセンス供与してきた。ソニーはCMOSイメージセンサにこの技術を作り込む。

9日の日経産業は、厚さが0.6〜0.315mmと薄いDC-DCコンバータをトレックス・セミコンダクターが開発したと報じた。これはICカードにディスプレイやソフトキーボードなどを載せ、能動的にICカード側から情報を発信できるようにするための電源用ICである。従来のICカードは電波を受け、その電波で起電力を発生させ内部の回路を動かすという『受動的』な動作しかできなかった。これからのICカードにスマホのような能動的な機能を載せるようにするための電源ICとなる。


参考資料
1. CEATEC 2015、センサ+応用で実力示す部品メーカー (2015/10/13)

(2015/10/13)

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