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CEATEC 2015、センサ+応用で実力示す部品メーカー

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CEATEC 2015では、電子部品産業の元気の良さが展示物にもよく表れた。IoT時代に向けセンサを手掛ける企業が多くなってきたが、単なるセンサだけの展示ではない。センサを使ったモジュール(サブシステム)も製作し、センサ部品で可能な応用を示した。

CEATEC 2015に東芝やソニーなど常連が参加せず、半導体メーカーもほとんどが姿を消した。今年はロームに加え、ソシオネクストが加わっただけに留まる。多くの半導体メーカーは今や、組み込みシステム関係の展示会に移った。こちら関係の展示会は、プロしか来ないため来場者数は少ないものの、展示する側の効果は高い。電子部品メーカーの中からいくつか目についたものを紹介する。

フェライト部品をコアコンピタンスとするTDKは、ICチップ内蔵基板技術を利用したBluetooth Smartモジュールをわずか3.5mm角の大きさ(厚さ1mm)に収めた。これに電源用IC(DC-DCコンバータ)とアンテナを接続するとそのまま使える。眼鏡のフレーム部分に実装した例を見せた(図1)。内部にもDC-DCコンバータを内蔵、低電圧動作により消費電力を抑えている。TDKはこのモジュール以外でも、小型のDC-DCコンバータや、送信アンプの消費電力を下げる技術であるエンベロープトラッカー、PAN(personal area network)モジュール、電源管理モジュールのIC内蔵基板モジュールも展示した。TDKのIC内蔵技術は世界的に定評があり、今年の5月には世界最大手のOSAT(半導体組み立て専業の請負メーカー)であるASEと提携、合弁会社を設立した。


図1 TDKが見せた3.5mm角のBluetooth Smartモジュールを含む回路基板を眼鏡のフレームに実装

図1 TDKが見せた3.5mm角のBluetooth Smartモジュールを含む回路基板を眼鏡のフレームに実装


アルプス電気は同様なBluetooth Smartモジュールで、アンテナ内蔵の新製品を展示した。これは4.7mm角で厚さが2mmとTDKの製品よりは少し大きいがアンテナも含んでいる。アンテナ部分をモジュールにスタックする形である(図2)。BluetoothやWi-Fiのように2.45GHz帯を使う通信ではアンテナも小さくできる。その波長はおよそ10cmであるから最低限の1/4波長として2.5cmすなわち25mmの長さがあればよい。


図2 アンテナもモジュールに実装したアルプスのBluetooth Smartモジュール

図2 アンテナもモジュールに実装したアルプスのBluetooth Smartモジュール


アルプスは、さらに43.9mm×27.2mm×10.8mmのIoTモジュール(図3)も製品化した。この小型IoTモジュールには、気圧、温湿度、UV/照度、6軸(加速度+地磁気)慣性センサ、を搭載している。センサネットワークモジュールとして開発キットとして販売する。タブレットに専用アプリをインストールし、このIoT端末をオンにしておけば、タブレットで測定データを見ることができる。このアプリを通じてセンサや通信条件を設定できる。


図3 アルプスのIoTセンサ開発キット

図3 アルプスのIoTセンサ開発キット


半導体メーカーのロームもいろいろなセンサモジュールと、センサノードとなるIoT端末を開発するための評価キットや、920MHzのゲートウェイモジュールを展示した。センサモジュールには、加速度、気圧、地磁気、ジャイロ、さらにこれらをすべて集積した10軸モーションセンサモジュールなどの機械系センサに加え、照度近接センサやカラー、UVなどの光センサ、ホールIC、温湿度センサなどを用意した。

ショーとして見せるための小型ロボット(図4)とそれを制御する制御棒を試作し、棒を振ると、ロボットが首を振るしぐさを見せた。棒には加速度センサを仕掛けてあり、加速度を検出したことをBluetoothでロボットに送っている。ロームの加速度センサの強みは、集積しているDSPに「ウェークアップ」、「向きに認知する」、「1回/2回のタップコマンド」、「重力による自由落下」などの機能がインタラプトするアルゴリズムを焼き込んでいることだ。つまり、MEMSセンサにアルゴリズムも付加している。


図4 ロームが試作したロボットは、加速度センサを仕掛けた棒を振ると首を振る

図4 ロームが試作したロボットは、加速度センサを仕掛けた棒を振ると首を振る


村田製作所は、二つのパルス電圧を発生させ、その差と和で360度回転のエンコーダとして左右の位置を検出するマイクロポジションセンサを開発した。1回転当たり6ステップのエンコーダとする訳だが、センサ機能を電子回路のパルスの発生・制御で受け持つ。眼鏡や時計、ヘッドフォン、カメラなどに装着して、スマートグラスなどにアイコン画像などを映し出しそれを操作するのに使うデモを見せた。

ムラタは車載事業も強化している。GPS信号が届かないトンネルや地下道に入った場合でも、加速度・ジャイロセンサと気圧センサで、クルマの位置をトラッキングするデモを行った。坂道やトンネルのある交差点などでも正常に走行できる。加えて、ADAS用のジェスチャーUIを使ってヘッドアップディスプレイに表示するデモや、5.9GHz帯のV2X(車車間・路車間)通信でバイクを検出するデモも見せた。

さらにハプティクスセンサも見せた。これは、圧電素子を動作させることでブルブル感を指に感じさせるものだが、デモではレーザー光を指が通過するとブルブル感を体感できる(図5)。iPhone 6SでAppleが提供するタプティクスの振動はコイルを使ったソレノイドであったが、CEATECでは圧電セラミックでこの振動を実現する例が多かった。これからのスマートフォンをはじめとするユーザーインタフェースにはこのハプティクスを利用する例が増えることを予感させている。


図5 指がレーザー光を横切ると白い圧電セラミックが振動してブルブル感を感じる 村田製作所のブース

図5 指がレーザー光を横切ると白い圧電セラミックが振動してブルブル感を感じる 村田製作所のブース


ムラタはさらに、ソファやベッドの下に高感度の加速度センサを取り付け、患者の心拍数を検出するというデモも行った。加速度センサ信号の意味を理解するためのアルゴリズムもソフトウエアに搭載しているVTIのMEMSセンサを用いた。ムラタは北欧のVTI社を買収しており、MEMSセンサ+アルゴリズム技術を手に入れている。寝返りなどのノイズが常に出るため、ノイズを打ち消すために苦労したという。

太陽誘電は、圧電素子を使ったセンサやアクチュエータを作り、センサはクルマのシートなどへの応用、アクチュエータは高音ツィーター(図6)への応用を見せた。クルマにシートへの応用では、センサを6個、椅子の背や腰の部分などに設置し、ドライバに合ったシートの位置を制御するのに使う。6個のセンサからの信号をBluetooth LE(Low Energy)でタブレットに送り、それらを見ることができる。


図6 圧電素子をアクチュエータに使ったツィータスピーカー特性

図6 圧電素子をアクチュエータに使ったツィータスピーカー特性


ミツミ電機は、79GHzのミリ波レーダーを使って歩行者を検出するシステム(図7)を試作した。レーダーは元々、金属など固いものが動いている場合の反射波を検出するツールであるが、90%以上水分でできている人体でさえ近くなら、その反射波を検出できる。ミツミはでも会場で5mまでの人の動きを検出し表示するデモを見せたが、実力は30m程度までは検出可能だとしている。


図7 ミツミが試作した79GHzのレーダー送信機(左の面)とその反射波を受ける受信機(右の面)

図7 ミツミが試作した79GHzのレーダー送信機(左の面)とその反射波を受ける受信機(右の面)


部品レベルでは太陽誘電が、1000µFと大容量の積層セラミックコンデンサを展示したが、その大きさはわずか4.5mm×3.2mmしかない。アルミ電解コンデンサ並みの容量なのに、これほど小さなコンデンサはこれが恐らくこれまでの最小ということになろう。実際の性能として高周波特性などはこれから測定するとしている。

パナソニックと富士通セミコンダクターのSoC部門が今年の3月に合併・誕生した半導体メーカーのソシオネクストは、クルマの駐車を助けるサラウンドビューモニター技術とそれを活かし、全周囲にいる人を認識し、その数を数える用途にも使えることをデモした。デジタルサイネージなどの前にいる人数や講演などを聴く人数の把握などにも使える。人間の特長である目と鼻と口を認識することで人間と判断する。データ処理では、人間を明暗データとして処理するため、プライバシーを守ることができる。

CEATEC全体ではやはりセンサの出品が多かったが、ソシオネクストは24GHzのサブミリ波を使ったドップラーレーダーによる人の検出をこれまで示してきたが、今回は心拍と瞬きを検出できることを示した。心臓が収縮・伸長を繰り返すことによって、レーダー波の距離がわずかながら変わるため、その変化を心拍と認識する。また、瞬きも検出できるとしている。

総じてCEATECでは、部品メーカーがモジュールを作る実力を見せ、単なる部品だけを展示していたこれまでとは大きく違う。モジュールやシステムを把握することで、部品やモジュールをシステム提案できる。ここが部品メーカーの「稼ぐ力」となっている。

(2015/10/13)

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