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IoT端末の市場拡大が期待されるIVIコンソーシアムが始動

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センサを利用して製造現場の機械を常にモニタ・診断・制御し、生産性を上げるためのコンセプトIndustry 4.0と、IoT端末を利用して製造業のビジネスモデルを変えてしまう可能性を持つIndustrial Internet。国内でも二つのコンセプトを併せたコンソーシアム「IVI(Industrial Value Chain Initiative)」が6月18日に始動した。

このコンソーシアムは、「つながる工場」、「つながる現場」を実現するための協同体である。現場での提案でカイゼンを進めてきた日本は、トップダウン的なITと協調しながら、さらなる生産性向上を目指す。これまで自社で構築してきたモノづくりの共通部分を定義し、「緩やかな」標準化によってネットワークでつながるようにする。具体的には、そのためのリファレンスモデルを、企業単独ではなく複数企業が共同で構築することをサポートする(参考資料1)。

IVIの緩やかな標準化とは何を指すのか明確ではないが、IVIの考えは、米国のGeneral Electricが提案しているIndustrial Internetをコンソーシアムとして広めるIIC(Industrial Internet Consortium)と似ている。IICでは、(1) IICのゴールとして、実際の応用機器の試作と応用例を作り、イノベーションを加速する、(2) インターオペラビリティ(相互運用性)に必要なリファレンスアーキテクチャとフレームワークを定義し、開発すること、などを掲げている(参考資料2)。

日本のコンソーシアムや共同組合ではこれまでもあまり強調されていないが、インターオペラビリティは非常に重要な概念で標準化には欠かせない。インターオペラビリティとは、各社各様の標準的な部品やモジュールが100%つながるかどうかを確認する作業のこと。この作業がなければ「つながること」の実現はおぼつかない。インターオペラビリティは、規格を標準化する場合に必須で、これまでもBluetoothやWi-Fi、Ethernet、PCIe、USBなど全ての規格について行われてきた。少なくとも標準化すべき規格は、入り口と出口だけであり、中身はブラックボックスのまま、各社各様の独自性は担保される。

IVIには、スタート時点で大手27社と中小12社が正会員企業になっている。モノづくりでもガラパゴス化しないという決意が込められている。17日の日経産業新聞は、NECがモノづくりを革新するためのIoTシステムを構築する事業に本格参入すると発表した、と報じた。NECはIVIのメンバーであるが、インターネットとの接続により画像認識やビッグデータ解析などを通して、製造業にサービスデータを提供し、製造工程の改革や新サービスを創出するとしている。

これまで海外企業を取材し理解した結果、Industry 4.0では、インターネットというよりもイントラネットを活用して生産性を向上させることに重点が置かれていた。GEのIndustrial Internetは文字通りインターネットを活用して壊れない(dependable)機械を製造することによって、機械の製品販売を売り切りではなく、アフターサービスも含めた従量制のサービスビジネスに変えることが大きな変化であった。

Industrial Internetに欠かせないデバイスがIoT端末である。ルネサスエレクトロニクスは、IoT端末のための半導体チップだけではなく、開発キットとソフトウエアを含めた開発支援サービスを始める、と発表した。IoTは、無線ネットワークで端末同士をつなげるためにRF回路とモデム回路だけではなく、セキュリティ回路も欠かせない。顧客ごとにフレキシブルに対応するためのソフトウエア開発や、暗号化などのセキュリティキーのプログラムなどが必要であり、ルネサスはシリコンバレーにあるRenesas Americaを活用する。

このところ、半導体やモノづくり産業の景気は良い。半導体製造装置の受注額は高値安定している(参考資料3)。18日の日刊工業新聞によると、日本工作機械工業会が発表した5月の工作機械の受注は前年同月比15%増の1385億4500万円だった。20ヵ月連続前年越えで、5月の最高額を記録したという。工作機械は、あらゆる産業機械や機械部品を作るための機械で、「母なる機械:マザーマシン」とも言われる。このため、産業機械や製造装置などの設備の生産額が増えるか減るかという景気判断の基準の一つになっている。

参考資料
1. Industrial Value Chain Initiativeホームページ
2. Industrial Internet Consortiumホームページ
3. 日本製半導体製造装置市場は安定期 (2015/06/18)

(2015/06/22)

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