セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

シャープは再建できるか

|

シャープが危ない。5月14日に発表した2015年3月期の連結決算では、最終損益が2223億円の赤字に転落した。各社が一斉にシャープの決算を報道した。シャープは、2013年3月期に5453億円の赤字を計上したが、2014年3月期には115億円とわずかながら黒字に戻った。今回再び巨額の赤字を計上することになった。

売上額は前季に比べ5%減の2兆7862億円だったが、巨額の赤字計上により自己資本が毀損し、自己資本比率(純資産と負債を合計した総資本に対する純資産の比率)がわずか1.5%に減少した。1.5%とは、総資本100億円に対して純資産が1.5億円しかないという意味である。ルネサスが資本注入した時でさえ、10%以上はあった。

シャープ連結ではなく単独なら、債務超過に陥っているという。債務超過とは、負債の総額が資産の総額を超える状態で、資産全てを売却しても負債を返済しきれないという状態を指す。それでも財務を立て直すために資本の支援を仰ぐとして、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行などから2250億円の出資を受けるとする。

加えて、資本金を現在の1218億円から5億円に減資する。当初は1億円という発表であったが、1億円だと中小企業と同じ税率などの優遇措置を受けるため、シャープほどの企業に対して批判が続出した。このため5億円に引き上げた。減資により、資本金の振替で負債の返済に充てる。

経営陣は、高橋興三社長を除き、代表取締役4人が退任か降格させる人事も発表した。従業員3500人の人員削減や、給与カットなども行うとしている。15日の日本経済新聞は、高橋社長とのインタビュー記事を掲載、「外部環境の変化に弱い経営体質だった」ことを経営危機の要因に挙げている。このために5つのカンパニーに分け、スピード経営を進めるとしている。しかし、成長分野と非成長分野との区分けについては示していない。社外への切り出す事業に関しては「液晶だけを特別に考えている訳ではない」と答えている。

シャープの赤字転落により、サプライチェーンにも影響が出始めている。興和は、シャープ向けにOEM供給している中国での液晶パネル子会社に関連して50億円の特別損失を計上した、と15日の日経の中部地方版が伝えた。興和の三輪芳弘社長は今年に入り「シャープからの注文や代金の支払いが止まった。工場生産が全面的にストップしている」と説明したと報じた。

16日の日経によると、シャープの株価は一時、前日比23円(12%)安い177円の年初来安値を付けた。週明けの18日11時現在の株価はそれよりも安い167円となっている。

日経は16日の社説で、シャープの低迷を分析し、銀行に金融支援を仰ぐような会社が、果たして(巨額の投資を継続しないと競争に負けてしまう)液晶で成功するだろうか、と疑問を投げかけている。液晶の代わる事業の顔が見えないシャープが、今後どのような会社を目指すのか、その道筋は見えないとする。

加えて、シャープ再建の迷走の要因はリーダーシップの混乱、危機意識の欠如による時間の浪費、さらに事業の厚みだと見ている。ソニーは金融ビジネスを持っており、それが会社の屋台骨を支えた。シャープは、キャッシュを潤沢に生み出す事業を持っていなかったことを指摘している。シャープとしては、もはや会社更生法の適用を受けるという選択肢もあるが、社員、顧客、サプライチェーンなどへの影響を考えて答えを出すことになろう。

日本の液晶産業はシャープに限らず、もう1社のジャパンディスプレイ(JDI)も2014年度は赤字だった。売上額は25%増の7693億円だったが、純損益は123億円の赤字になった。ただし、営業利益はわずかながら51億円の黒字になった。埼玉県深谷市の工場の閉鎖に伴う損失の計上で、純損失になった。それでも、前半の赤字を後半の営業利益で稼いだという。

一方で、先週はルネサスが回復した決算発表もあり、「経営再建に区切り」、「合理化一巡」というような見出しが並んだ。ソリューション提案力を磨く方向に関しても日経は触れている(詳細は、参考資料1)。


参考資料
1. ルネサス、企業買収も視野に入れた攻めのギアチェンジへ (2015/05/14)


(2015/05/18)

月別アーカイブ