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ルネサス、企業買収も視野に入れた攻めのギアチェンジへ

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ルネサスエレクトロニクスは、9四半期連続営業利益を挙げており、直近では4四半期連続2桁の営業利益率(売上額に対する営業利益の割合)を確保、さらに2015年3月末時点でのフリーキャッシュフローは901億円の過去最高となった。2015年度通期の純利益も824億円となり、リストラは一段落したという結果を示した。

決算会見で述べるルネサスの会長兼CEOの作田久男氏

決算会見で述べるルネサスの会長兼CEOの作田久男氏


これまで、9四半期連続営業利益を挙げてきたとはいえ、リストラ費用として特別損失を長い間計上してきたことで純損益が黒字とはならなかった。しかし、本業の業績を示す営業利益率が4四半期連続10%以上と好調さを示してきたことで、黒字化できた。リストラはほぼ完了したといえる。決算報告会では、リストラ作業を山でたとえると何合目か、という質問に対して、「何合目という喩えは、ふさわしくない。常に綱渡りの危機感を持って経営しているから一歩間違えれば、倒れてしまうことがある」と同社会長兼CEOの作田久男氏は答えた。

同氏は、慎重な姿勢を見せながらも「これからはギアチェンジが必要になる」と前向きの姿勢も見せた。4四半期連続の2桁利益率を示してきたが、これに対してさえ、「(安定して)2桁の営業利益を生みだす体力はまだない。円安という追い風を受けて運が良かっただけだ」と謙遜すると同時に、危機意識を全面に押し出している。

とはいえ、すでにギアチェンジは始まっている。例えばクルマ応用なら機能安全、セキュリティ、コネクティビティ、低消費電力という四つの分野にルネサスの強みがあるとし、ここに資金を投入している、と言う。

作田氏は6月に退任するが、「就任した2年前、生き残りと勝ち残りという工程の内、生き残りだけでも遂行したいと革新機構に答えた。自分ももう70歳を超えた。次の成長のフェーズはバトンタッチしたい」と述べた。

この2年間で同氏が半導体産業で強く感じたことは、「半導体産業の動きはとても速い」ことだとしている。「グローバルな変化がどんどん行われており、進化している。今はシリコンから、ソフトウエアも含めたシステム構築型へのビジネスに変わってきている」、と時代の変化を的確に読んでいる。次期CEOは元日本オラクル社長で、長年日本IBMで仕事してきた遠藤隆雄氏だが、これからのシステム構築型ビジネスに最適な人物として、革新機構と一緒に推挙を決めたとする。

今後の成長に対しては「コメントする立場にはないが、どういうパラダイムシフトで成長するかを捉える必要がある」と言う。「システムソリューションの時代には今後の投資は、モノ(設備)から人に移る。優秀な人の採用が非常に重要になるため、企業買収の可能性を視野に入れているのか」という筆者の質問に対して、「買収の可能性はある」と答えた。ルネサスがシステムソリューション企業へと脱皮するための準備を着実に進めているといえそうだ。


参考資料
1. 好調半導体、ルネサス7四半期連続黒字、東芝は半導体が利益を稼ぐ (2014/11/04)

(2015/05/14)

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