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ISSCCでの日本勢の発表記事が賑わう

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2月22日から26日まで米国サンフランシスコ市ではISSCC(International Solid State Circuits)が開催され、新聞紙上を賑わした。日本の企業や大学の活躍が報じられている。また、中国やインドなどの電子産業が変わろうとしている。

2月27日の日経産業新聞は、ISSCCにおいて低消費電力技術が続出したと報じている。まず日立製作所は、量子コンピュータで使われるアルゴリズムを再現する半導体チップを開発、従来の200倍の速度で計算できると報じた。消費電力も削減しており、単位消費電力当たりの性能を電力利用効率というが、これが従来の1800倍にもなるとしている。

続けて東芝がCPUに内蔵するSRAMの代わりに不揮発性メモリの一種であるMRAMに置き換え消費電力を80%減らした、と報じた。MRAMの置き換えだけではなく、パワーゲーティングやクロックゲーティングなどの手法も使ったように記事では書かれている。

富士通と富士通研究所らは共同で、CPU間を光配線で結び消費電力を半減させたという発表をしている。サーバ全体で消費電力を1~2割減らせるという。

また、24日の日刊工業新聞は、東京大学の桜井貴康教授と染谷隆夫教授らのグループがフレキシブル基板に太陽電池や有機トランジスタIC、温度センサ、圧電素子などを集積した腕時計型体温計を開発、ISSCCで発表した、と報じた。体温を常時測定し、ある設定温度を超えるとブザーが鳴るという仕組みだ。圧電素子はブザー音を発するスピーカーに使う。室内の弱い光でも動作するとしている。

ルネサスがIMECとHolst Centreと共同で、Bluetooth LE(low energy)とZigBeeという二つのトランシーバ(送受信回路)を集積したICを開発、受信時3.7mW、送信時4.4mWと低い消費電力を得たと発表した。ISSCCでは、40nmCMOS回路でこの性能・機能を実現し、前世代の90nmチップと比べ、消費電力25%減、チップ面積35%減を達成したと発表している。このチップは、デジタル変調回路とマイコンも搭載しており、RF部分をできるだけデジタルリッチにし、アナログ回路部分を1.3mm2に減らした。

新聞発表では、日本の企業や大学の話が多いが、海外企業では例えばSamsungが128Gビットの3D-NANDフラッシュを発表している(講演番号7.2)。Samsungにとって第2世代となるこのチップは、3ビット/セル構造で、32層の積み上げ方式を使い、68.9mm2のチップ面積に収めた。

ISSCC以外では、ソニーがアンドロイドOSを搭載した4Kテレビを開発、今春米国で売り出すと26日の日経産業が伝えた。4Kの新製品10機種およびフルハイビジョンを含め全14機種にアンドロイドを搭載する。スマートフォンを使った操作や音声入力で番組情報を検索できる上、スマホの画面や動画をテレビに表示する「グーグルキャスト」機能も持つ。コンテンツ配信サービス「グーグルプレイ」からゲームソフトなどのアプリをテレビにダウンロードする。ソニーだけではなく、AmazonやNetflixなどの主要サービスにも対応するとしている。

中国からの撤退も目立つ。マイクロソフトがノキアから買収した中国の2工場を閉鎖することが決まったと、27日の日経が伝えた。生産機能の一部をベトナムのハノイに移転するという。中国での賃金上昇を嫌い中国から撤退する。グーグルがモトローラモビリティを買収したものの、2年持たずに中国のレノボに売却した話もつい最近だ。

一方で、設計に注力してきたインドが製造にも乗り出すというニュースもある。日経産業は、インドにおけるロボット開発・製造のベンチャーを26日にレポートしている。インドのモディ首相は昨年、安倍首相と会談、インドへの日本企業の誘致を要請した。これまでインドでは、設計が得意だった。Texas InstrumentsやSTMicroelectronicsなどがLSI設計(RTL)を依頼、デザインセンターとして利用してきた。最近は、インドでも半導体工場を作るというトピックスは後を絶たない。セミコンポータルでも2013年2月に半導体前工程工場の設立話を採り上げた(参考資料1)が、残念ながら進展はなさそうだ。

参考資料
1. インド政府、半導体ウェーハ工場を2棟計画、今年の10月までに建設着手へ (2013/02/14)

(2015/03/02)

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