東芝、IoT体制を組織化、半導体部門はどうなる?
2015年はIoT事業を構築する年になりそうだ。IoTは今すぐに立ち上がる事業ではないが、IoT市場に向け、東芝はIoT体制を組織化する。IntelはIoT端末の開発を発表し、これまでの上位レイヤー事業とは異なる事業になり、ビジネス戦略の転換を図る。
東芝は1月22日、あらゆるモノがインターネットにつながるというIoT(Internet of Things)からの膨大なビッグデータを解析し、サービスに活かす体制作りのため、コーポレート部門の情報システム部、ソフトウエア技術センターと、システムインテグレーション事業を行う東芝ソリューション蠅琉貮瑤鬟ラウド&ソリューション社に統合する、と発表した。情報システムサービスを提供している東芝インフォメーションシステムズ蠅鬟ラウド&ソリューションズ社傘下にする。
東芝の動きは、IoT端末からのビッグデータ解析技術やリアルタイム処理技術を開発するため。IoT端末のユーザーは、社内の公共事業、通信事業、医療・ヘルスケア事業、ライフスタイル事業部門であり、IoT端末のメーカーは電子デバイス事業のはず。このため、東芝の持つ各事業グループの持つ様々な知見やノウハウを融合し、「IoT共通基盤」を開発する。この共通基盤をクラウド&ソリューションズ社が活用することで、IoT端末を総合的に監視、分析、制御する新たなサービスやソリューションを創出するとしている。東芝の半導体部門である東芝S&S社は、IoT端末に向けたチップ、IoTクラウドやビッグデータ解析に使うハード向けのチップなどの開発を行うのか、それともチップやセンサは外部から調達するのか、IoT時代に向け、半導体戦略の再構築を迫られることになる。
21日の日経産業新聞は、IntelのIoT端末参入のニュースを採り上げた。IntelはInternational CESにおいて、ボタン型のIoT端末を開発したことを、展示会報告として1月6日にプレスリリースで発表している。これは、ボタンサイズのCurrie(キュリー)モジュールであり、ウェアラブル製品に応用できるとしている。Intelはスポーツゴーグルメーカーやファッション時計メーカーなどとも提携し、ウェアラブル端末事業を強化するようだ。
2013年の秋に、IntelがIoT事業部を創設した時、同事業部長に就任したJim Robinson氏は、IoTセンサネットワークの端末ではなく、ゲートウェイから上位のレイヤーをビジネスターゲットとする、と述べていた(参考資料1)。このため、M2M(machine to machine)端末を利用するデジタルサイネージに向けたCMS(コンテントマネージメントシステム)を独自に発表していた。端末に要求される仕様は、高性能よりも低消費電力であるため、ここはARMプロセッサの独壇場だ。Intelに勝ち目はないだろうと業界は見ていた。ところが、今回CEOのBrian Krzanich氏はIoT端末を発表した。これまでIntelはIXサーバでサーバ市場の快進撃を進めてきた。消費電力よりも性能を優先するパソコンやサーバ分野を得意としてきたIntel。性能はまずまずだが、消費電力が低いことを特長としてきたARM。今回のIntelはARMの分野にも参入してきた訳だが、これが吉と出るか凶と出るか、今後の結果を待つことになる。
IoTは基本的に、センサ、アナログ、マイコン、送受信機、電源ICで構成されている。市場が急速に伸びる重要な要素は、センサとアナログだ。ロームは子会社のピスセミコンダクタ宮崎工場にMEMSセンサ向けの8インチラインを導入する、と22日の日刊工業新聞が伝えた。ロームは2009年に米国Kionix社(参考資料2)を買収しており、MEMS加速度センサ事業を手に入れている。いくつかのスマートフォンにはKionixのセンサが搭載されている。
セイコーインスツル(SII)は、IoTウェアラブル端末に向けた電源用IC、バッテリマネージメントICの拡販を狙っていると、20日の日刊工業が報じた。IoT向けと同時にファウンドリ事業とOSAT事業にも力を入れ、前工程から後工程までICの製造を請け負う。
IoTからのデータをまず蓄積するストレージ機器のデータ処理速度を従来品の2倍に高めた製品「オラクルZFSストレージZS4-4」を日本オラクルが発表した。3次キャッシュの役割を果たすDRAMの容量を従来の2TBから3TBに増やし、CPUのマルチコアの数を従来の80コアから120コアに増やすことで高性能を実現した。このストレージはDRAMと、フラッシュメモリを使ったSSDをファイルストレージの一時記憶領域として使う。読み取りフラッシュキャッシュが最大12.8TB、ストレージの最大容量は3.5PB(3500TB)、と巨大なストレージの価格は約1300万円。
参考資料
1. IntelがIoT分野に参入、セキュリティ重視のハイエンド市場を開拓 (2013/11/18)
2. MEMSモーションセンサーを利用、12個のコマンドをプログラムできるASIC (2009/05/07)