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国内にファウンドリ専門会社が誕生へ、UMC・富士通の新会社

7月31日に富士通は、半導体事業の再編について発表、この「週間ニュース分析」コラムで報道およびコメントしたが(参考資料1)、その時には300mmラインを持つ三重工場の再編はまだ決定していなかった。8月29日にUMCが資本参加することが決定した。

7月31日の時点では、三重工場をファウンドリ新会社にするためファウンドリメーカーとパートナーを組むという段階まで来ていた。候補として台湾UMCが有力だったらしい。その前はTSMCと組みたいというニュースリリースまで流したが、破談に終わった。台湾のUMCとパートナーシップを組むという報道はあったが、その内容をその当時のニュースリリースには盛り込まなかった。TSMCで失敗した轍(てつ)を踏まないようにした。

今回、富士通セミコンダクターは保有する三重工場を元に新会社にするわけだが、その新会社にUMCが資本出資するというもの。出資額は50億円。新会社の約9.3%の株式を保有することになる。さらにUMCは40nmテクノロジー(40LP:Low Power)を富士通セミコンダクターにライセンス供与する。新会社では、富士通セミコンが持つ低消費電力プロセス技術およびメモリ混載プロセス技術と、UMCのファウンドリビジネスのノウハウと先端プロセス技術を持って、ファウンドリサービスを提供していく。

国内にファウンドリ専門会社が誕生したことは、国内のファブレスやIPベンダー、セットメーカーさらにはIDMにとっても日本語で製造を委託できることに他ならない。日本人ユーザにとっては細部にわたって質問できるうえに、微妙なやり取りをPDKベース、カスタムベース、どちらでも対応してもらえるメリットがある。

UMCにとっても、かつて千葉県館山市にあった半導体工場を単独で購入したものの、設備の刷新、規模の拡充ができずに日本市場をうまく攻略できなかったという苦い経験があった。今回は、富士通セミコンと組むことで、新工場を作る時間やコストを最小に抑えることができた。また、グローバル市場の視点で見れば、UMCは台湾工場の他にシンガポールにも工場を持っているが、さらに日本にも工場を持つ3極体制を築くことで、顧客に対してジオグラフィカルなリスクを削減できる。

UMCは秋葉原にセールスオフィスを置き、日本のIDMをはじめとする顧客開拓に力を入れている。さらに工場が国内にあれば、日本の得意な「擦り合わせ」的な技術を発揮でき、日本のユーザにとってメリットは大きい。

先週は、Appleが9月9日にスペシャルイベントを開催すると米国プレスに発表した。さまざまなメディアがこの「発表会のお知らせ」をニュースとして採り上げている。iPhone 6を発表することは、量産工場からの部品の大量発注などから間違いないだろうが、時計端末iWatchをはじめとするウェアラブル端末が出てくるか、NFCを採用するか、などは噂にとどまる。「9.9.2014 Wish we could say more」と招待状には書かれているらしく、「できればもっと話したい」ともったいぶった言葉を載せている。

電気自動車(EV)に関して、28日の日経に欧州の提携の動きが報道されている。BMWとダイムラーがワイヤレス充電、充電インフラの相互乗り入れなどで提携した他、スウェーデンのボルボとスイスの重電大手ABBが電動バス向けの充電システムの共同開発で合意した。日本は、充電プラグをCHAdeMO(チャデモ)という規格で標準化したが、欧米と話し合いをせずに決めてしまったため、欧州は独自に標準化しそうだ。これはワイヤレス充電器でも同様で、周波数、パワーなど充電仕様を決める必要がある。日本は欧米との話し合いを最重視しなければ仕様を策定しても無駄に終わることを肝に銘じるべきだろう。


参考資料
1. 富士通の半導体事業の再編成決まる (2014/08/4)

(2014/09/01)
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