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Qualcomm、60GHzのWi-Gi企業を買収、802.11b/g/n/ac/adチップ実現へ

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先週、Qualcommが、60GHzのWi-Fi規格である、IEEE802.11ad(別名WiGig)を手に入れたというニュース発表があった。LTEの特許獲得にもアグレッシブに動く同社が今回、数Gbpsという非常に高いデータレートをサポートする60GHz帯の企業Wilocityを買収した。強い成長分野をますます強くするQualcommは攻め続けている。

米国時間(カリフォルニア)7月2日に発表されたこのニュースを採り上げた国内メディアは少なく、7月4日の日経産業新聞が短い記事で伝えただけだった。Qualcommはモバイル分野に力を入れているが、3GからLTE、そしてLTE-Advancedといったモバイルネットワークだけではない。Wi-Fiにも力を入れており、2011年にはWi-FiチップのトップメーカーであったAtheros Communicationを買収し、802.11a/b/g/n/acとWi-Fiすべてを手に入れた。今回はさらにWiGig規格も揃えた。

Qualcommは2008年以来、Wilocityの出資者で、コンピュータ市場に向けたトライバンドソリューションをWilocityと共同で開発してきた。時代は、4K、さらに8Kという高解像のテレビへと動き出した以上、「テレビ映像のダウンロード+モバイルで視聴」という消費者のスタイルを見据えた。60GHz帯で数Gbpsという高速のデータレートであれば映像のダウンロードは短時間で終わる。こういった利用シーンや4K映像のストリーミング、高速のピア-ツー-ピア通信などを想定し、QualcommはWilocityを単なる出資した企業ではなく、全面的にそれを買収することを決めたのであろう。家庭内では11acでビデオを視聴し、イベント会場などの限られたエリア内で複数のユーザーが映像を利用できるように11adを使うシーンもある。「これによってユーザー同士でコンテンツを共有できる次世代のソーシャル関係を可能にする」とQualcomm Atherosの社長、Amir Faintuch氏は述べている。

Wi-Fiチップを設計しているQualcomm Atherosは、これまでの2.4GHz帯の802.11b/g/nと5GHz帯の802.11ac仕様に加え、60GHz帯の802.11adという仕様も集積したトライバンドチップを推進する。最初のトライバンドチップのプラットフォームは、QualcommのSnapdragon 810を組み込んだリファレンスデザインになりそうだ。これはWiGigをサポートする最初のモバイルプラットフォームになる。

QualcommはWi-Fiだけではなく、本来強いモバイルネットワークの価値作りにも急ぐ。サイバー創研が調べたLTEの特許件数(参考資料1)によると、Qualcommが最多の655件(全体の11.1%)で、2位Samsungの652件(11.0%)と比肩している。3位は華為603件(10.2%)、4位ノキア505件(8.5%)、5位InterDigital 418件(7.1%)、6位Ericsson 399件(6.7%)、7位ZTE 368件(6.2%)、8位LG 317件(5.4%)と続く。この調査は、ETSI(European Telecommunications Standards)に宣言された特許(登録特許と出願特許)の内、LTEおよびLTE-Advancedに関連するものを対象に数えたもので、2013年6月に発行された。

Qualcommの関係者は、5G時代はデータレートよりもピア-ツー-ピアやコンテンツシェアリングなどのソーシャルが重要視されるのではないだろうか、と筆者に語っている。LTE=3.9世代、1Gbpsを4G、10Gbpsを5Gと定義しているのはNTTドコモだけであり、世界ではLTE=4Gという見方をしており、データレートだけで世代を区切ることが正しいのだろうか。第5世代コンピュータは実際にはパソコンであった、という事実が、未来のモバイル通信を考える上で反省材料となるかもしれない。

話題は変わって、サムスンが32層の3次元NANDフラッシュメモリを搭載した、パソコン向けのSSDを発表した、と7月2日の日刊工業新聞が報じた。製品の保証期間を10年としている。パソコン向け「850プロ」は、記録容量128GBから256GB、512GB、1TBの4種類で、価格は129ドル99セントから699ドル99セント。企業のデータセンター向け「845DCプロ」も発表している。サムスンは昨年8月に24層の3D NANDのSSDを発表していたが、この時は24層だった(参考資料2)。この1年で8層増やしたことになる。

参考資料
1. LTE関連特許のETSI必須宣言特許調査報告書 第3.0版 サイバー創研 (2013年6月)
2. サムスン、3次元NANDを64個搭載したSSDを量産開始 (2013/08/15)

(2014/07/07)

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