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IoTやウェアラブル端末に向けたチップとは何か

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コンピューティングの最大の展示会であるComputex Taipei 2014が6月3〜7日、台北で開かれ、先週の新聞紙上ではこの展示会で発表されたニュースが相次いだ。例えば5日の日本経済新聞はMediaTekのウェアラブル端末用開発キット、Acerの時計型端末、ITRIは眼鏡型端末などを展示したと伝えている。

6月2日の「週間ニュース分析」でルネサスがスマホのアクセサリ向けの開発キットを発表したことを伝えた(参考資料1)が、開発キットは半導体チップと同じくらい重要な製品である。MediaTekのウェアラブル端末開発キットは、同社のシステムLSIを搭載、この開発キットで標準機能とカスタマイズされた機能をユーザーが実現するためのもの。半導体ユーザーはチップを入手してもウェアラブル端末の設計製作には時間がかかる。通常、1年程度かかるところ、このキットを使えば2カ月程度ですむと日経産業は伝えている。

Computex開催中、ARM社が台湾の新竹サイエンスパークにCPU設計センターを年内に設立すると発表した。5日の日経および日経産業新聞によると、IoT(Internet of Things)やウェアラブル機器などを対象とした設計業務を担うとしている。IoTの概念からすると、ウェアラブル端末もIoTの一つと見なせる。スマートフォンをハブとしてインターネットとつながるからだ。今の所、ウェアラブル端末はスマホのコンパニオンデバイスという位置付けが一般的な見方である。ARMはまず40~50名の研究者を採用、将来は100人規模まで増やすもようだという。

CPUコア開発企業であるARMが台湾に開発センターを開く理由は、「重要なパートナーや良質な技術者がいる」からで、同社CEOのSimon Segars氏は「台湾はCPU設計の拡大には理想的な場所」としている。

IoTやウェアラブル端末は基本的に、センサと、信号処理を受け持つマイコン、データをゲートウェイやスマホとやり取りする送受信機、からなる。ゲートウェイとはZigBeeやWi-SUNなどの802.15系規格を通してインターネットと接続し、スマホとはBluetooth SmartやBluetooth Low Energyなどの低消費電力通信規格を通じてつなげる。IoTが3GやLTEなどのモバイルネットワークを通して直接インターネットとつながるためには消費電力を今よりもっと落とし、電池の容量をさらに上げなければならない。

ARMはIPベンダーであり、これまでは半導体チップを絶対作らないと言ってきた。ユーザーとバッティングするためであり、ライセンスおよびロイヤルティというこれまでのビジネスモデルを逸脱することはないとしていた。では、IoT端末向けのIPコアとは一体何か。ARMのIoT端末向けIPは、Cortex-Mシリーズと同様、マイコンへの組み込みを意識したコアであることは間違いないだろう。そして、Cortex-Mシリーズよりもさらに消費電力の小さなCPUコアを開発し、その周辺回路も集積するだろう。例えば、IoTやウェアラブルには送受信回路がマストであるため、ASKやBPSKのような簡単なデジタル変調モデムを集積するのではないだろうか。IoTに必要な機能をできるだけ多く集積し、さらに開発キットも提供すれば、IoT向けのCPUコアとしては使いやすくなる。

半導体メーカーとしては、CPUに低消費電力のマイコンを使い、同様の単純モデムを集積するIoTプラットフォームをARMに先駆けて開発すれば先手をとれるのではないか。ルネサスには幸い、センサとのインタフェースを担うスマートアナログ製品シリーズもある。ルネサスがIoT端末向けのチップセットを開発ツールと共に一刻も早く提供することで、世界のトップを行く半導体メーカーになるチャンスが来るのではないだろうか。

参考資料
1. ルネサス、海外企業とのソリューションビジネスを活発化 (2014/06/02)

(2014/06/09)

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