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ルネサス、海外企業とのソリューションビジネスを活発化

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先週は、東京ビッグサイトでワイヤレスジャパン2014が開かれたこともあり、ワイヤレスとモバイル関係の発表がルネサスエレクトロニクスから続出した。中でも特に目を惹いたニュースリリースは、スマートフォンのアクセサリ開発キットである。新聞は報じなかったが、非常に重要なニュースである。

MWC(Mobile World Congress)やInternational CESへ行けば、大きなブースで目に付くのがスマホのアクセサリコーナーだ。スマホの両面あるいは片面を覆うジャケットケースは、スマホ自身とは全く異なるデザインを施すことができる。MM総研の調べでは、スマホ/タブレットのアクセサリ/周辺機器市場は日本国内だけで、2013年に対前年比31%増の2026億円の規模だという。スマホの中でもiPhone やiPadのサイズに合ったアクセサリは極めて多い。MWC2013では、Oリングをベースにした防水機能や、ワイヤレス充電機能をジャケットケースだけで実現する企業が相次いで見られた。ワイヤレスジャパン2014でもワイヤレス充電器のついたジャケットケースを展示した企業があった。


図1 ルネサスが提供するアクセサリ市場向けUSB充電キット 出典:ルネサスエレクトロニクス

図1 ルネサスが提供するアクセサリ市場向けUSB充電キット 出典:ルネサスエレクトロニクス


ルネサスが発売したソリューション開発キットは、まさにジャケットケースをはじめとするアクセサリや、スマホと協調して使うヘルスケア機器への応用を狙ったものだ。このニュースがなぜ重要か。三つの理由がある。スマホは世界的に成長している分野であり、アクセサリも同様に成長している。また、スマホそのものを改良しなくてもアクセサリで独自機能をスマホに加えられる。さらにアクセサリは世界共通だから市場は極めて広い。

このキットは、AndroidベースのOpen Accessory 2.0に対応した接続仕様やプロトコル、ソフトウエアAPIを持つため、Androidスマホのアクセサリとして使える。このキットには、USBホスト/周辺機能を内蔵したマイコンRL78/G1Cと、充電制御IC、シリアルEEPROMを搭載している。充電機能が充実していることから、急速充電やワイヤレス充電などのアクセサリを設計製造するのに向く。急速充電のためのUSB Battery Charging Specification Revision 1.2にも準拠している。

さらに照度/温度センサからの測定データをLCDに表示させたり、EEPROMに格納させたり、電池の残量を表示させたりすることもできる。アクセサリメーカーは、このキットを使うことでアクセサリの規格から設計工程までの期間を短縮し、試作回数を削減できるようになる。

ルネサスは、このアクセサリ開発キットの発表に加え、米国Diodes社とUSBインタフェースから大電流を充電するための規格USB Power Deliveryに準拠したリファレンスボードを共同開発したり、Analog Devices社とWi-SUN認証を取得したワイヤレス通信プラットフォームを共同開発したりするなど、海外企業との積極的なコラボレーションを発表している。Wi-SUNは東京電力が今春、スマートメータの規格に採用を決めたことから日本で期待されている仕様ではあるが、ADIと共同であれば海外展開もしやすい。もちろん、USB充電は言うまでもなく海外共通仕様であるから、海外のモバイル機器にも適用できる。

残念ながら、先週のルネサス関連ニュースでは、子会社のルネサスエスピードライバ(RSP)社の売却先をAppleからSynaptics社に変えたという話しか、新聞は採りあげなかったようだ。このニュースはルネサスから発表したものではないというコメントを同社は発表していた。Synaptics社はタッチパネルコントローラを設計しているファブレスであり、そのチップはiPhoneやAndroidスマホに入っているらしい。Synapticsは最初のマイクロプロセッサ4004を設計したFederico Faggin氏と、LSI設計手法を著したCalifornia Institute of TechnologyのCarver Mead氏が1980年代にニューラルネットワークチップを開発するために設立した会社。ニューラルネットのチップ開発は断念し、スマホ用のタッチコントローラで成長している。

(2014/06/02)

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