セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

鴻海精密が大阪にR&D拠点を設立、人材の受け皿になるか

|

台湾の鴻海精密工業が大阪に研究開発拠点を設立した、と6月1日付けの日本経済新聞が報じた。鴻海は液晶デバイスを開発することが狙いのようだ。スマートフォンやタブレット、テレビなどのタッチパネル液晶ディスプレイが今後も成長すると見ているのだろう。これらとリンクして半導体製造装置も回復しつつある。

鴻海のこの新子会社の社長には、シャープで液晶生産技術開発本部長だった矢野耕三氏を迎えたという。シャープが鴻海からの出資を躊躇している間に、独自に研究開発会社を日本に設立した訳だが、台湾本社の量産技術と日本の研究開発を相補うことができる。一般に、日本は研究開発が得意、台湾は量産が得意、中国は人件費の安さが売り物、という特長を持つ。このコラボを生かすことが成長につながるが、巨大な鴻海は量産技術も研究開発も垂直統合に組み込もうとしている。日本の電機大手から流出したエンジニアの受け皿になるとの見方もあるようだ。

デジカメやゲーム機からスマホへ、パソコンからタブレットへ、という流れは依然として強い。IDCジャパンが発表した2013年1〜3月の国内のパソコン出荷数量は、前年同期比4.6%減の412万台になった。法人向けはWindows XPのサポートが14年4月に切れることから9%増だったが、個人向けが20%減となった。

大手電子部品メーカーのアルプス電気のインタビュー記事が5月30日の日経産業新聞に掲載された。これによると、同社電子部品事業の2013年3月期(2012年度)の売り上げは0.3%減の2680億円だったという。スマホ向けは成長、パソコンやデジカメ、ゲーム機は落ち込んだ。スマホ向けでは、高性能だが特注ではない製品に注力していく。スマホカメラの自動焦点用アクチュエータやセンサにも力を入れるが、センサ事業はセンサ単体ではなくASICを含めたモジュールとして販売するという。

PC時代にはウィンテルと言われたほどIntelとMicrosoftは協業していたが、ポストPC時代には、Intelは通信技術、Microsoftはハードウエアにそれぞれ拡大を図っている。IntelはST-EricssonからGPS部門を買収すると5月31日の日経産業が報じている。Intelは、パソコンの次の時代に合わせた通信技術をInfineonから入手した上で、GPS通信技術も手に入れた訳だ。常時オン・常時インターネット接続が前提のスマホやタブレットでは通信技術を持つことが成長に不可欠とみているのだろう。OSを中心とするソフトウエアメーカーのMicrosoftがタブレット「サーフェス」の上位機種「サーフェスプロ」を6月に日本で投入すると5月29日の日経が伝えた。これは同社の総合ソフトOfficeを標準装備したタブレットだとしており、Windows 8 Proで動作する。

ルネサスは成長分野の一つであるIoT(Internet of Things)応用技術を開発した。5月28日の日経によると、家畜に小型チップを搭載し、健康状態をモニターして無線で知らせるシステムを想定している。この半導体チップは、センサからのデータをA-D変換してデジタル処理、無線で送信するマイコンである。畜産農家は、口蹄疫や鳥インフルエンザなどを早期発見できる。

半導体製造装置3社の4〜6月の受注額が1〜3月よりも上回る見通しであることを5月30日の日経が報じた。検査装置のアドバンテストと、ウェーハ研磨やダイシングのディスコ、前工程装置の日立国際電気の3社が上向くとしている。スマホ用のアプリケーションプロセッサを量産するTSMCが製造設備投資を2013年に最大100億ドル(1兆円)と見込んでいることが大きい。

半導体製造装置をはじめ、産業用設備のニュースも先週は多かった。オムロンが工場の電力消費を削減するシステムを開発、半導体製品の品質を落とさずクリーンルームの運転コストを下げることができると5月29日の日経産業が報じた。また、サムコはインドに半導体製造装置の販売サービス拠点を開設すると同28日の日刊工業新聞が伝えた。インドに半導体生産工場を作ろうという動きがあり(参考資料1)、これに応じたもの。産業用ロボットに強い安川電機は主力機種を世界同時に刷新することを同28日の同紙が報じた。世界各地での省人化を図る。産業機器に強い三菱電機の半導体事業が2014年3月期には2期ぶりに黒字に回復するという見通しを28日の日経が伝えている。産業機器分野はグローバル市場を相手にして成長している。


参考資料
1. インド政府、半導体ウェーハ工場を2棟計画、今年の10月までに建設着手へ (2013/02/14)

(2013/06/03)

月別アーカイブ