セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

インテル、オッテリーニCEOの退任発表からIT産業の変化の激しさを見る

|

インテルのCEOであるポール・オッテリーニ氏が2013年5月に退任すると発表した。同氏は現在62歳。11月19日の日経産業新聞によると、シスコシステムズのジョン・チェンバーズCEOも2〜4年後には退任すると伝えている。チェンバーズ氏の在任は18年、マイクロソフトのスティーブ・バルマー氏も13年、と長い、と報じている。

パソコンを主力製品としてきたインテルとマイクロソフト、ネットワーク製品を主力としてきたシスコの3社は、ICTビジネスが世代交替していることにうまく対応できなかったようだ。パソコンビジネスは低成長時代に入った。ノートPCやデスクトップPCとは競合しないように見えたタブレットが実は競合していることが明らかになりつつある。市場調査会社のIDCやガートナーなどが分類している現在のパソコン製品にはタブレットも含まれるため、2012年の第3四半期におけるパソコンの出荷台数が前年同期比8〜9%減となっていることは(参考資料1)、タブレットを除く純粋なパソコンの出荷台数はさらに下がっていることになる。台数ベースで下がっていれば1台当たりのパソコン価格は下がり続けているので、金額ベースでは2桁減といえる。

シスコはスイッチやルータなどのネットワーク機器メーカーから、データセンタ向けサーバや仮想化技術、ユニファイドコミュニケーションなどサービスも含めたICT総合メーカーへと変身してきた。しかし、ネットワーク機器の市場は企業から通信オペレータへと広がり、さらに今後はスモールセルなどビルや街単位でネットワーク機器が求められる時代に入る。ここに中国のファーウェイ(華為技術)といった新興勢力が急成長してきた。加えて、携帯機器のインフラ市場でエリクソン、ノキアシーメンス、アルカテルなど通信機器の欧州勢もネットワーク製品やサービスを提供してきており、競争が激化している。

インテルやマイクロソフト、シスコなどが本拠地とするシリコンバレーでは、グーグルやヤフー、フェイスブックなど、より若い企業が成長している。経営トップのCEOとして、グーグルのラリー・ペイジが39歳、ヤフーのマリッサ・メイヤーが37歳、フェイスブックのザッカーバーグはまだ20代、と若い。技術の移り変わりの激しいIT業界では、柔軟な発想と機動力に重きを置く、と日経産業は指摘する。

ただし、退任が決定しているのはインテルだけである。インテルは今年のCESにおいてスマートフォンやタブレットの試作品を見せ、新しい機器にも対応していることをアピールしたが、同社の携帯用プロセッサコアAtomは残念ながら成功したとは言えない。元々、性能向上を優先してコンピュータ向けプロセッサに力を入れてきた同社は、ARMコアと比べると消費電力という点でまだ劣る。低消費電力技術への取り組みを阻む何かがインテルにはあるように思える。

一方で、気になるニュースとして、シャープが開発した酸化物半導体(IGZO)のTFT液晶パネルを他社のスマホにも搭載するというニュースを22日の日本経済新聞が報じた。26日には日刊工業新聞が2013年1〜3月期に同社亀山第2工場の稼働率を現在の5割弱から6~7割に引き上げると述べた。日刊工業によると、この工場ではIGZOや従来のアモーファスTFT液晶などを生産しており、IGZOの生産台数はタブレット向けに月産100万台という。シャープは、IGZOディスプレイに関するテレビコマーシャルを流しており、IGZO技術がようやく量産できるレベルに来たといえる。ただし、アップルが要求するのは月産1000万台のレベル。量産規模はアップルよりも1桁小さいため、稼働率と歩留まりを上げることは必須である。

ただし、このニュースを読んで違和感を覚えた。これではシャープは何も変わらないのではないか、と懸念されるからだ。シャープはIGZO技術を開発し、量産の得意な鴻海精密工業と相補うという関係を構築すれば、世界的に強力なコラボレーションとなるが、IGZO液晶で鴻海とは別の動きをしている限り、これまでと何にも変わらない。鴻海が資本を注入したため当分は賄えるとしても、改革が止まってしまうようでは危ない。シャープの足元に火が付くようになれば本当に変われるかもしれない。

参考資料
1. パソコンの出荷台数から見えるIT産業の陰り、半導体は要注意 (2012/10/15)

(2012/11/26)

月別アーカイブ