パソコンの出荷台数から見えるIT産業の陰り、半導体は要注意

表1　IDCが発表した2012年第3四半期におけるパソコン出荷台数　出典：IDC

パソコンはスマートフォンや携帯電話と共に大きな半導体市場の一つだ。パソコンの出荷台数や金額は半導体産業にも大きな影響を及ぼす。IDCは、第3四半期は新学期シーズンなのでパソコンはこれまで通り伸びると見ていた(参考資料1)。OSでは、Windows 7パソコンの在庫を一掃してWindows 8に備えようとしていた。パソコン業界はWindows 8機がリリースされる第4四半期まで、需要は弱含みながら第3四半期は横ばいか、若干のプラス成長でいくと感じていた。ところが消費者はWindows 8を待っていたのではなくタブレットを待っていたのだという。パソコン業界はそれでもWindows 8搭載機を予定通り出荷するため準備を進めており、年末ごろの立ち上がりに期待している。

表2　ガートナーが発表した2012年第3四半期のパソコン出荷台数　出典：Gartner

IDCの調査(参考資料2)では、第3四半期のパソコンの出荷台数は8779万5000台であったが、ガートナーの調査では8750万4080台となっている。ガートナーもIDCと同様に流通業者の新学期需要が期待はずれだったと指摘した。ガートナーはさらに、消費者ではなくプロフェッショナルの市場はWindows 8がリリースされてすぐに動くものではないことも加味している。

両社の調査統計で興味深い違いが一つある。これまでパソコンの出荷台数はヒューレット・パッカード（HP）社が常にトップにいたが、このトップの座が微妙になっている。表1にあるようにIDCは1位のHPが1394万6000台、2位のレノボは1382万4000台を出荷している。この差はわずかだ。ところが、ガートナーの統計では1位と2位は逆転し、1位のレノボが1376万7976台、2位のHPは1355万761台を出荷しているという。IDCは、レノボのパソコンは前年同期比10.2%成長し、HPは16.4減少としている。ガートナーは同じくレノボが9.8%成長、HPは16.4%減少、とする。

残念ながら今の時点ではどちらの統計が正しいか判断できないが、重要なことはレノボのパソコンが成長し、HPが落ち込んだということだ。ガートナーによれば、レノボは米国市場では第4位ながら特にプロフェッショナル市場で価格戦略が奏功し、6.1%伸ばした。米国市場ではトップ5社はレノボ以外すべてマイナス成長だった。米国市場は、前年同期比13.8減となり、世界全体の8.3%減よりも落ち込みが大きい。

IHSアイサプライも2012年のパソコンの見通しを発表したが、やはり同様に新学期シーズンが期待はずれに終わり、厳しい時期を迎えたことを発表している(参考資料3)。年初のCES（Consumer Electronics Show）においてウルトラブックへの期待感があり、第2四半期も伸びていたため、今年の期待感が高まっていた。第3四半期はインテルとAMDの売上も横ばいかやや下降気味だという。では、すでに突入している第4四半期はどうか。Windows 8機がどの程度売れるか、世界経済の雲行きはどうか、タブレットやスマートフォンへのシフトの影響はどうか、という三つの要素がパソコンの売上に影響を及ぼす。アイサプライは2013年には回復のサインが見えるとしている。

参考資料
1. PC Market Struggles Ahead of Windows 8 Launch As Lenovo Nearly Catches HP for the Worldwide Market Leadership Position, According to IDC（プレスリリース） (2012/10/10)
2. Gartner Says Worldwide PC Shipments Declined 8 Percent in Third Quarter of 2012 as the Market Prepares for the Launch of Windows 8（プレスリリース） (2012/10/10)
3. PC Shipments Set to Decline in 2012 for First Time in 11 Years（プレスリリース） (2012/10/10)