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クアルコムは28%増の絶好調、マイクロソフトは初の赤字、明暗分けた2Q

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世界のIT・半導体大手の第2四半期(2Q:4〜6月)の決算発表が相次ぎ、明暗が分かれた。また将来に向けて攻めのビジネス戦略を発表した所も多い。クアルコムは、前年同期比28%増の46億2600万ドル、純利益が同17%増の12億700万ドルと絶好調の様相を見せたのに対して、マイクロソフトは初の赤字を計上した。

クアルコムはファウンドリの生産能力不足によって今年の売り上げが昨年よりも落ちることを4月の第1四半期決算報告で明らかにした(参考資料1)。その後、TSMC以外のファウンドリ3社にも生産委託することで28nmのアプリケーションプロセッサ、Snapdragon S4の生産数量を上げる見通しが得られた。これによりS4の品薄を年末までに解消できる、と20日の日本経済新聞は報じている。この28nmプロセサによって、最先端のスマートフォンやタブレットの品薄も解消されるようになる。クアルコムはこの見通しにより売り上げ予想を第3四半期は下方修正するが、第4四半期は増産により業績が好調になりそうだとしている。

半導体トップのインテルも売り上げは前年同期比で4%増の135億100万ドルを確保したが、純利益は4%減の28億2700万ドルに留まったと発表した。インテルは薄型ノートPCのウルトラブック向けチップに力を入れており、すでにウルトラブックは140機種に膨れ上がったと19日の日経は伝えている。現在開発中のノートPCは、最新のMPUのコプロセッサ(いわゆるサウスブリッジと呼ばれたチップセット)であるアイビーブリッジを搭載したPCになり、マイクロソフトの新OSであるWindows 8も含む。CPUそのものは第3世代のCoreプロセッサ。アイビーブリッジはFINFET(あるいはトライゲートFETともいう)を使った22nmプロセスのLSI。開発をリードした技術戦略担当ディレクタのパウロ・ガルジーニ氏は、FINFET技術はもはや自分の手を離れ、順調に生産体制に入っている、と筆者に5月に述べている。

ファウンドリの最大手TSMCの第2四半期売り上げは前年同期比16%増の1281億台湾元(3370億円)、同利益は418億台湾元(1100億円)だった。スマートフォン向けLSIの受注が好調だったと20日の日経は報じている。

第2四半期に初めて赤字に陥ったのがマイクロソフト。最終損益は4億9200万ドルの赤字になった。21日の日経によると、2007年に買収したネット広告会社アクアンティブが期待した収益を上げられなかったためという。マイクロソフトは2008年ヤフーの買収に失敗、検索エンジンBingを自社開発したが、グーグルにはまだ追いつけない。2011年にはスカイプを買収したが、今後の成果が注目される。

将来に向けて、ASMLがインテルなどの半導体メーカーにEUVへの開発出資を呼びかけ、インテルはEUVと450mmウェーハプロジェクトをASMLと共同開発することを明らかにしている(参考資料2)。さらにTSMCもASMLのEUV開発計画への参加を検討している、と20日の日経は伝えている。

もう一つ攻めの投資として、サムスン電子が英国ファブレス半導体のCSR(旧ケンブリッジシリコンラジオ)社から携帯電話のコネクティビティ技術と携帯向けロケーション技術の開発リソースを買収すると17日に発表した。買収金額は3億1000万ドル、開発要員310名も移動する。さらに、サムスンはCSRの新株も取得する計画。既存株式の4.9%に相当する。

このニュースに関して18日の日経はモバイル部門の全てを買収するとあるが、CSRのプレスリリース(参考資料3)によると、携帯コネクティビティと携帯ロケーション技術の開発投資は(売却により)中止するが、既存の携帯向けチップの生産は残す、とある。さらにロケーション技術でも屋内ロケーション技術は携帯向けでも自社で開発し続ける。今後、CSRが力を入れる分野は次の5つ;音声&音楽、カーインフォテインメント、屋内ロケーション、イメージング、Bluetooth Smartである。

半導体後工程に使う切断装置メーカーのディスコは、2012年度(2013年3月期)の切断装置の売り上げが前年度比で40%増えるという見通しを発表した(17日の日経)。ディスコの第1四半期(4〜6月)の売り上げは前年同期比-0.8%とほぼ横ばいだが、前期比では10%の増加だと発表している。年末以降の先行きは不透明感があるものの、当面は需要が旺盛で広島の2工場に合計200人を期間従業員として採用した。

同じ後工程でも、日立電線はシンガポールの子会社ヒタチケーブル・シンガポールを清算することを決めた、と17日の日経が伝えた。同子会社はリードフレームを生産しており、シンガポールはリードフレームを使った労働集約的な後工程を行う場所としてはもはやふさわしくない。一人当たりのGDPはすでに日本を追い越しており、シンガポールはむしろハイテク部門の移転を望んでいる。

参考資料
1. 最先端技術を持つファウンドリにビジネスチャンスあり (2012/04/23)
2. ASML、EUV開発のリスク分散を狙いインテル等と共同開発プログラムを提案 (2012/07/11)
3. Transforming CSR's Growth Potential and Profitability (2012/07/17)

(2012/07/23)

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